転生したら伝説の勇者だった件
――目が覚めたとき、俺は見知らぬ草原に立っていた。
青すぎる空。どこまでも広がる草原。鳥の鳴き声、心地よい風。
その瞬間に理解した。ここは、俺が知っている日本ではない。
「……マジかよ、これ、異世界転生ってやつか?」
スマホもない、電線もない、けど腰には見慣れない剣がぶら下がっている。
試しに抜いてみれば、刀身は淡く輝き、空気が震えた。
そう、ただの剣じゃない――俺が転生特典として授かった、伝説の勇者の聖剣だった。
頭の中に声が響く。
『勇者よ、目覚めの時は来た。この世界は魔王に支配されつつある。そなたが救世の鍵となるであろう』
……来た! これぞ異世界転生の王道イベント!
しかも俺、最初から「勇者」って確定してるじゃん!
すると、草原の向こうから人影が走ってきた。
金色の髪をなびかせた美少女――エルフの少女だった。
大きな翡翠色の瞳、尖った耳、清らかな雰囲気。それでいて背中には弓を背負い、戦士の気配を放っている。
「あなたが……新たなる勇者様ですか?」
「え、ええと……たぶん、そうです!」
少女はぱっと花が咲くような笑顔を浮かべた。
「よかった! 勇者様を探していたんです! どうか、私たちの国を救ってください!」
……ああ、これだ。こういう展開だ。
俺が夢にまで見た異世界転生ファンタジーの王道。
勇者として呼ばれ、可愛い仲間ができ、やがて魔王を倒して世界を救う。
胸が高鳴る。冒険が始まる――!
超王道で王道の極みを目指して書いたけど、やっぱ王道ってつまんねえよなぁ(王道で書いている方の作品を貶したわけではありません。)