表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅と蒼  作者: 詩旅真詩
1/44

序章

 ふたつの赤が(おど)っている。(あおい)はうつろに、それを見た。


 駅が爆発した。


 それも、こぢんまりとした駅ではない。駅名の看板が消えかかったローカルな駅でもなく、見る度に閑散(かんさん)とした()びた駅でもない。その真逆も真逆、深夜でさえ人の尽きない大都会のど真ん中、数百万もの人が一日に利用する巨大なプラットホームだった。その楼閣(ろうかく)のようなビルディングが、丸ごと闇夜に炎上した。


 一瞬の出来事だった。


 改札の前、構内の柱にもたれてうずくまる葵の前で、ふと、耳が真っ白になるくらいの爆音がしたと思ったら、すべてが終わっていた。


 火遊びどころか、そこらの火事と比べるべくもない。正真正銘の大爆発。


 絶えることのなかった人混みが、瞬時に蒸発した。


 (ろう)()けるように改札が入口から消えていく……膨大な熱が空間を呑み込んで、鉄筋をねじ曲げていく……爆炎がコンクリートを吹き飛ばしていく。階段は瓦礫(がれき)に、看板は灰に、ガラスは粉に変わった。床を、天井を、壁という壁を、這い回る炎がうねりうねって、すべてを真っ赤にした。


 残ったのは、立ちこめる黒い煙と、その根元でくすぶる真っ赤な業火……そして、赤い液体だけ。千切れた手足から油みたいに垂れる、赤い液……葵の焦げたジーパンの脇をちらちら流れていく、赤い三角州だけ。


 なんでこんなことになっちゃったんだろう。


 葵は口の中で(つぶや)いた。


 巨大な繁華街を(ふもと)にする人流のターミナルは、爆炎と煙幕の中、廃虚になった。


 そして、それを起こしたのは他でもない、自分……。葵自身なのだ。


 いや、自分と言っていいかは、わからない。


 自分であって、自分でない、と言うべきなんだろうか。


 別に、二重人格だったと言いたいわけではない。


 そうじゃない。ただ、()()()()()()()()()()()()()()……そう、まさしく、()()()()()()()そうしていたのだ。


 確かに、「こうなってしまえ」と思ったことはある。


 なにもかもが嫌で、すべて吹き飛んでしまえと、そう思ったことはこれまでも度々あったし、ちょうどその時も思っていた。


 でも、まさかそれが現実にこんなことになるなんて、当然ながら、思ってみたことがなかった。


 今、煙の音に紛れて遠くのサイレンが聞こえている。


 なんでこんなことになっちゃったんだろう。


 いや、それより、私はこれからどうなるんだろう。


 葵の頭には再びの疑問が……それ以上に深刻な問題が首をもたげ、しかし、葵自身、特にどうするつもりもなく、足を投げ出したまま、ぼんやりとした頭で、赤い炎がちらちら天井で笑う姿を見上げていた。


執筆は2021年。構想は20年近く前。小学生、中学生の空想を、なんとか「読める」ようにしたものです......なっていると良いのですが。小学生、中学生の空想による、異能力バトルエンタメ、のはずです。はずです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ