幕間:レイルの主義主張
レイルとリアーナが婚約して間もない頃のお話です
「ねぇ、リアーナ..吸っていい?」
「一応身体検査があるはずだけど、どうやってくぐり抜けて来たの?」
「婚約者の権威を使った。」
「最低ね。」
鼻で笑われた。
だがそれもまた良い。
あ、ドMではないよ?
「で、吸っていい?」
「一応ここ..宮殿なのよ?」
「ちょっとだけ、ね?」
先っちょだけだよ。
「うっ…………。」
リアーナは、婚約者の上目遣いに負けた。
男のはずの婚約者に、可愛さを感じてしまったのだ。
将来の何かを暗示していたのかもしれない。
「わ、私は責任を負いたくないから許可はしない………けども、止めることもしないわ。」
「ありがとね。もし何か言われたら、『リアーナが良いって言ってた』って言っとくよ。」
「....え、ちょっと..え!?」
アワアワしている婚約者様を放っておいて、僕はライターを取り出した。
カチッ!
「........ふぅー。
美しい街並みを見下ろしながら吸う1本は格別だね。」
「一旦殴っていい?」
「リアーナ、暴力はいけないよ?」
「コイツマジでどうしてしまおうか。」
リアーナさんの本性が出かけているが、まぁ気にしないでおこう。
眠れる獅子は刺激しないに限る。
ここは、王宮の最上階のテラスという、見晴らしが最高な場所だ。
ファーレンハイトの美しい夜の街並みに目を奪われつつ、至福の1本をしみじみと吸う。
不満げにしている婚約者様と目を合わせないようにしながら。
「はぁ...タバコは程々にしてね?
健康が心配よ..。」
「えぇー!?それは..善処するよ。」
吸っている皆なら分かると思うけど、あれ無しだと本当に生きていけないよ??
「はぁ……ダメね。」
やれやれ、と婚約者様はため息をついている。
「始めてしまったことは最期までやりきらないとね?」
諦めたらそこで人生終了ですよ??
「タバコはやりきらなくていいです。」
「なんでぇ」
「そもそも何で吸い始めたのよ…………始めさえしなければ……。」
「それには深い訳があるんだよ。」
嬢ちゃん、聞くかい?
ウチのタバコに関する記憶はちょぉっとシリアスだぜぇ?
「昔ね、友達にバカなやつがいたんだよ。
何か辛いことがあっても、死という逃げ道があるから大丈夫だとか言ってるやつがね。
そいつはね、結局死んじゃったんだよ。
大学に落ちて、人生に絶望して、それでビルの屋上から飛び降りた。」
「そ、そう…………。」
ほんと、バカなやつ。
「死ぬ前に会った時にそいつが言ってたんだよ。逃げ道は間違えない方がいい………ってね。」
死は逃げ道じゃない。
命にしがみついているから、心の中で微かな希望を追い求めているから、人間は逃げる。
死んでしまったらそこで何もかも終わりだ。
「死は全てを終わらせる手段であって、逃げるための手段ではない…………ふぅーっ……。」
「……………………。」
リアーナさんが無言になってしまわれた。
ちょっとしんみりトークすぎたかな?
「それで、タバコに逃げ道を見出すのは間違いではない…………と?」
「ゑ?…………そ、それは…………」
噓だろ、このしんみりトークの後に普通にタバコについて追及できるのかっ!?
「そのお友達が言いたかったのは、タバコに逃げろということではないでしょう?」
「ごもっともです…………。」
流石は婚約者様、完敗だ。
「三日くらいは我慢するよ。」
「まぁ……まずは一歩前進、と言ったところね。」
話数が進むごとに少なくなる文字数と投稿頻度…………何かがおかしい…………………………………………。




