皇家のお家騒動
今週の課題:エンターテインメントとは何か
あれからなんやかんやあったが、結局はお互い仲直りした。
リアーナを酔いつぶして逃げたことは、お漏らしでチャラになったらしい。
あれがチャラになるなら、お漏らしの一つや二つ、いや、いくらでもくれてやるよ!!
「ではサーナちゃん、こちらへ。」
「お、お邪魔します…………。」
未だに僕の家の大きさにビビっているサーナちゃんも、一応は関係者ということで招いておいた。
人質に取られたら面倒だしね。
「で、さっきのお粗末な刺客さんたちは、何なの?」
リビングに戻って来ると、『女狐め……』とサーナちゃんを睨み付けていた狂犬リアーナさんは。急に真面目モードで話し始めた。
その顔の変わり様、スンって効果音が聞こえてくるレベルだよ!?
「多分、ウチの手の者じゃないかなぁ?
リアーナパパがあんなお粗末な刺客を雇うわけないしねぇ。」
ウチの手の者。つまりは、皇家が放った刺客である、ということだ。
仮にも同じ一族に所属する身としては、雇う刺客くらいはちゃんとしてほしい。
なんだよアイツら。そこら辺にいる『俺の前にヤンキー共はひれ伏す!』とか言ってる中学二年生と大して変わらない強さなんですが??
「えっと、皇家って今どうなってるの?」
「ウチも色々と面倒くさいからねぇ。
一応はこの僕、皇 玲明が当主っていうことになってるんだけど、それを認めない輩がいるんだよ。
それが、僕の弟の皇 無暗だね。」
「弟さん……なんというか、すごい名前ね。」
真面目状態のリアーナでも触れざるを得ない弟の名前、流石はウチの両親だ。
名づけ方のレベルが違う。
『無』なのに『暗』だし。
何もないのに暗いってどういうことよ………もう矛盾してる。
ちなみに、サーナちゃんは話についてこれておらず、ボーっとしている。
後で解説してあげよう。
「そうだよね。僕も両親のネーミングセンスを疑ったよ。
一文字変えたらムー〇ンだもん。」
「おい、笑える。
で、そのムー〇ンさんが刺客を送ってきた……と?」
急なネット民の片鱗は無視するとして、すごーい真面目な顔でムー〇ンっていうのやめて?
王女様が言っているという事実を含めて、だいぶ面白いから。
「そうだよ。後、ムー〇ンはやめてね?モザイク入れるの面倒くさいんだよね。」
リアーナは、モザイクの意味はイマイチ分かっていなさそうだったが、了承してくれた。
「分かった。
で、弟くんは当主の座を狙っているの?」
「そうなんだよねぇ。皇家の資産を独り占めしたいみたいなんだ。」
実は皇家、だいぶお金持ちの家である。
僕が住んでいるこの家は数ある別荘の内の一つであり、本家は都内某所にあるクソデカイ豪邸である。
何故かあそこは禁煙だし、堅苦しい雰囲気が嫌いなのであまり好きではない。
「ちょっとくらい分けてあげたらどうなの?
玲明はファーレンハイトにも資産あるでしょ?」
「いや、分けてあげようとしたんだよ!?
でも、メガネをクイッとさせて『貴様からの施しは受けないッ!!』とか言ってきたからさぁ……………………。」
何であんなキモイ奴に資産をあげないといけないの。
「あー、イキリカスは調子に乗らせちゃいけないもんね。」
そしてここぞとばかりに同意してくるサーナちゃん。
そんなに嫌いなの?イキリカス………見てて面白くない?
だからといって資産をあげるってわけにはいかないけれども。
「というわけで、万が一にもオットーと無暗が手を組んだら面倒くさいので、まずは無暗に兄の威厳を見せつけていきたいと思いまーす!!」
そう言って僕は、むくっと立ち上がり、拳を天に突き上げた。
「今は、”姉”だけど?」
はいそこの婚約者さん静かに!!
今イイ感じなの!!
「どうやってその威厳を見せつけるの?
レイルの今の身体じゃ、可愛いっていう印象しか残らないと思うけど…………。」
「この女っ、人の婚約者を可愛いなどと言って色目を………!!」
サーナちゃんが喋った瞬間に、リアーナがすかさず嚙みついた。
「はいはいはい!!静かに!!!」
リアーナの頭を撫でて落ち着かせる。
僕の手に頭を摺り寄せてくる様子は、まるで子犬のようだ。
狂犬なんだけども。
「まったくもう…………。わんちゃんの飼い主の気持ちが分かってきたかもしれない。」
「は?」
え、り、リアーナさん?
急にキレられても………
「え、あ、あの、なんでもないっす。まじすんません、リアーナさん。」
僕の内なる下っ端要素が出てきちゃったじゃない。
「いや、気にしてないわよ?」
絶対気にしてるよね!?
え、なに、そんなに犬に例えられるのが嫌だった!?
ファーレンハイトで犬が嫌われているとかは無かったはずなんだけど…………。
リアーナ、犬アンチかもしれない。
「で、無暗をわからせる方法なんだけども…………」
「「けども?」」
「配信で募集したいと思いまーす!!」
最近配信出来ていなかったし、名案じゃない?どう?
「あの、そこをエンターテインメントにするのは違うと思う。」
「流石は玲明ね、エンターテインメントというものが分かっているわ。」
「「……あぁ??」」
なんかこの2人、また勝手に喧嘩し始めたんですが…………。
『エンターテインメントとは何か』で意見が食い違っているらしい。
喧嘩の元凶は、2人が争奪戦を繰り広げている対象の僕であるというのは置いといて、早く仲良くしてくれないかなぁ?
「まぁ、そのうち収まるかな。」
物事は楽観的にとらえよう。
これ、人生のススメです。
なんて考えながら僕は、キャットファイトを繰り広げる2人を置いて、配信部屋に向かった。
「喧嘩している彼女を止めないのかって?
最後には必ずリアーナが勝つと確信しているから、止めないよ。
これが、真実の愛ってものさ。」
―――――――― By Reia Sumeragi
迷走し続けて数十話…………やっと配信の話が書ける!!




