AP〇Xで鍛えたエイム、舐めんなよ?
「くっ……やられた……。」
頭が割れそうなくらい痛い。
これが、二日酔い…っ!!
「これを玲明はいつも味わっているの?」
よく生きていられるわね。
玲明の場合は自業自得なので、同情には値しないが。
「それにしても、愛しい婚約者様を酔い潰して逃げるとは……一度、どちらが上かをハッキリさせないといけないわね。」
夫婦喧嘩上等!やってやろうじゃない。
ピンポーン♪
なんて考えているうちにも、玲明が帰ってきたようで、インターホンがなった。
「さぁて、どうやって…………?」
玄関に向かおうとした私の足が止まった。
なぜかというと、この家の違和感に気づいたからだ。
「人の気配が、少ない……?」
これでも私は一国の王女なので、ボディーガードが常に、隠れて家を警備している。
でも今は、いつも感じられる彼らの僅かな気配がない。
代わりにするのは、いつもとは違う人の気配。
「これは、まずいかもしれませんね。」
ドンドンドンドン!!!!
玄関のドアが強く叩かれている。
先ほどインターホンを鳴らしたのが玲明ではないのは、明白だ。
『プルルルル…プルルルル………』
電話が繋がらない。妨害電波が出されているのだろうか。
「あまり殺生はしたくないのに……」
私がやるしかないようだ。
「はぁ……。」
ドンドンドンドン!!!
「おい!いるんだろ!!出てこい!!!」
ついに、大声を出し始めた。
近所迷惑にもなるし、とっとと片付けてしまおう。
私は玄関の扉を開けた。
開けた先には、予想通り、どこかからの刺客であろう男たちがいた。
きちんと防弾チョッキをフル装備していて、手には物騒なマシンガンを持っている。
「侵入する時は静かにって、習わなかった?」
暗殺の基本なんだけど。
「あぁん?」
―――――――― パァン!!!
とりあえず、おバカな暗殺者の頭に、銃弾でお灸をすえておいた。
「こ、こいつっ!?」
「はいはい静かに。」
パァン!!
ざっと見て、後3人か……。
「おいっ!!血なんて見たことねぇ王女様なんじゃねぇのか!?」
「うるせぇ知るか!とりあえず殺せ!!」
男たちは、なりふり構わず銃を向けてくる。
刺客にしては動きがお粗末なんだけど……うちのボディーガード、これに負けたの?
「再教育が必要ね。」
ダダダダダダダダ!!!
マシンガンのようなものを撃ちってくるが、随分と的外れな方向に飛んでいる。
私は扉を閉めて弾幕から身を守った。
―――――― パァン!!
「なぁっ!?」
ついでに1人、窓を割って部屋に入ってきていたのを殺しておいた。
もちろんヘッドショットである。
「クソがぁっ!!」
「おっと。」
流石に力では叶わなかったようで、扉を開けられてしまった。
「そんなに腕っぷしが強いのなら、大盾でも持てばいいのに。」
パァン!!
これで、あと一人。
「どこに行って……っ!?」
「おっと、動くなよ?」
私の後頭部に、冷たい金属が突き付けられている。
ちょっと油断しすぎたか……。
「あと一人だったが、残念だったなぁ?王女サマ。」
「はぁ……バカね。」
本当にバカ。視野が狭いどころの問題ではない。
敵が私のみだと思っている時点で、失格だ。
刺客だけに。
「それはどういう ――――――― 」
―――――――― パァン!!
私に銃を突き付けていた男が倒れた。
もちろん、殺ったのは私ではない。
「ワン・メン・ダウン♪」
適当な英語でイキっている、我らが婚約者様だ。
「遅くなってごめんね?」
「全くもう……」
そして私と玲明は、熱い再会の抱擁を交わした……。
となれば、ハッピーエンドなのだろう。
だが、現実はそんなに甘くない。
「あ、あの……リアーナさん?」
「なに?」
「これは、ど、どどどういうことで……?」
私が右手で銃を突き付けているのは、もちろん、我らが婚約者様の可愛い可愛い頭だ。
「私を酔い潰して逃げるとは、それこそどういうことなの?」
「いやあのっ、それには訳があって……」
言い訳の声までイケボだ。あぁムカつく。
「すごく心配したわよ。
もしかしたら、もう帰って来ないんじゃないかって……。
私を捨てちゃったんじゃないかって……。」
「僕がリアーナを捨てる?そんなことするわけないでしょ?」
きょとんとしている。
こやつは、自分がしでかした事の重大さに気づいていないのだろうか。
「本当にそうなの?捨てようとしたんじゃないの?
こんな重い女は要らないって……そう思ったんじゃないの?ねぇ。」
「リアーナは僕の生きる意味なんだから、リアーナを捨てるなんて死ぬのと同義だよ。
僕がリアーナを捨てるなんて、絶対に有り得ない。」
そうね、そうだと思う。
「分かってくれた?」
「まぁ……でも、酔い潰させて逃げたのはまだ許してないわよ?」
「え”?……うっ!?」
銃口を頭に突き付けながら、逃げられないように玲明の腕を拘束した。
「あ、あの……いや、えーっと……」
慌ててジタバタしている玲明は可愛いが、だからといって許されるわけではない。
可愛いが正義なのは、物語の中だけなのだ。
「一旦、罪を償いましょうね?」
「ど、どうやって……?」
「こうやって。」
「う、うそっ……待ってそれだけは、やめっ ―――――――― 」
『神の指使い』と言われたこの私のテクニックを、舐めてもらっては困る。
銃を放り捨てて、まずは脇腹から、そして全身を攻略していく。
「ふふっ!!あははははっ!!やだっ、ちょっ、ひひひひひっ!!!」
無駄な抵抗を試みる玲明を地面に押し倒して、片手で押さえつけ、もう一方の片手でそこら中を蹂躙していく。
「ちょっ、死ぬっ、今トイレ行きたいのぉっ!?あはははっ!!」
「偶には便所以外で出してもいいんじゃない?」
「マジでやばいぃっ!!ふふふっ!?あの、ほんとにっ!!!ダメ!!!!」
「知らないわ、せいぜい後悔して。」
「噓っ!?ほんとに、あはっふふふっ!?」
その後、床を掃除する羽目になったが、久々に玲明に復讐できたので良しとしよう。
こいつら刺客を殺した後に、玄関で………
なんということを……




