ぼっち飯
「う”っ、、、」
いつも通り、二日酔いで頭が割れそうだ。
そんな僕がフラフラとやってきたのは、我が母校、、というか絶賛在籍中の、東京康聖大学である。
面倒くさいからしばらく来ていないんだけど、珍しくここを訪れた理由は、皆さんご察しの通り、リアーナのラブラブ攻撃から逃げるためである。
昨日の夜に酔いつぶれるまで一緒に飲んだので、リアーナは今頃、家でスヤスヤしているはずだ。
結局、主導権を取り戻すことが出来なかったので、辛うじて勝てる飲みくらべに持ち込んで、リアーナを打倒してから逃げてきたというわけだ。
これは敗北ではなく、戦略的撤退というやつである。
敗北では無い、断じて。
「よーしっ、、あ、、、、」
そういえば、この前来た時に知ったのだが、大学の敷地内では、喫煙所以外でタバコを吸えないらしい。
仕方ないので、取り出しかけていたライターをしまって、喫煙所まで歩くことにする。
いつも通り、偶にすれ違うファンの子たちにサインをしてあげながら、這う這うの体で喫煙所にたどり着いた。
「この学校、、広すぎるって、、、」
歩くたびに頭に衝撃が走ってズキズキと痛む。
余りにも地獄のような状態なので、早く座りたい。そして、吸いたい。
喫煙所にいた人全員からの視線をひしひしと浴びているが、そんなことはもうどうでもいい。
どうせ『中学生くらいの美少女がタバコ吸ってるのなんで!?』とか思ってるんでしょ?
もうその展開は飽きたんだぜ、ベイビー。
「ふぅー、、、、。」
体力が満タンになった!!
そんな気がするぜ、メイビー、、なんつって。
ははっ、韻踏んでみた。
はぁ、、つまんね。
「もう一本いっちゃおう、、、う?」
あと一本だけで終わろう(n回目)とした時、後ろから肩をトントンと叩かれた。
僕の至福の時間を邪魔するとは、全く、、失礼なやつめ。
「誰だ、、、っ!?」
振り向いた先には、美少女が居た。
最近美少女が多いな、、偶にはブスも出てこないと、、
え?アニメ化した時に『ブスっていう設定なのにイケメンなの許さん!』って言われるって?
しないというか、できないだろ。アニメ化。
謎の美少女は、僕の顔をじーっと覗き込んで、花が咲いたという表現がピッタリ当てはまる見事な笑顔を披露してくれた。
目と目があったら何たらバトルが始まってしまうので、目をそらす。
「やっと会えたね!!皇 玲明チャン♡」
こ、、コイツはっ、、、
「いや、誰?」
初対面ですねぇ、、まずは名を名乗れ!名を!!
「失礼、まずは名乗るべきだったネ。
ワテクシはニーナ・グレーヴィア・ハーン、以後お見知りおきヲ。」
日ノ本人ではないと思ってたけど、なんとまぁファンタジーな名前ですこと。
でもニーナって日ノ本っぽくない?
ニーナ・グレーヴィア・ハーンねぇ、、、グレーヴィアぁ!?
「グレーヴィアって、あのグレーヴィア?」
「多分そのグレーヴィアで間違ってないヨ。」
「ふーん。」
「いや、、その、、もうちょっと驚いて欲しかったかナ!?」
大グレーヴィア汗国。
それは、大陸中央部に存在する、巨大な遊牧民族の国家だ。
12世紀末にテムン・グレーヴィアがバラバラになっていた遊牧民族を統一し、君主を意味する【ハーン】を名乗り、建国した。
そこから、千年にも渡り大陸中央部で膨張を続けてきたのが、歴史史上最大にして最強の国家、大グレーヴィア汗国である。
ニーナ・ハーンは数年前に選出された今代のハーンだが、その姿は謎に包まれていた。
実は死んでいて宰相が裏で権力を握っているとか、病弱でまともに政治ができないとか、ロクな噂が流れていない人物である。
だが、実態は、噂とはかけ離れていたようだ。
「どうしたんダ?」
僕の正面に来て仁王立ちしているこの少女こそが、ニーナ・ハーンであるらしい。
超大国の国家元首とは思えないくらい、、可愛い。
美しいオレンジ色の髪は、肩にかかるくらいのところで綺麗に切りそろえられている。
少女漫画みたいに目がパッチリとしていて、日焼けをしており、いかにもスポーツ万能といった雰囲気の美少女だ。
確かに、超大国の国家元首の見た目がこれだと、少し舐められるかもしれない。
だから姿を公表していないのだろう。
国家元首系アイドルとかで売りに出したらイケそうなのにな、、。
「いやぁ、可愛いなぁと思って。」
「そ、、そうか、、、。」
褒められ慣れていないようで、照れている。
うん、可愛い。
「で、僕に何か用ですか?一緒に吸います?」
「遠慮しておくヨ。ワテクシの愛読書は、保健の教科書なんダ。」
ちっ、、教育省の回し者め。
受動喫煙してるからもう手遅れだと思うけどまぁそこは触れないでおこう。
何故僕の名前を知っていたかは分からないが、僕が『日ノ本の叡智』であると知って接触してきた可能性が高い。
最悪の場合、誘拐されるかもしれないので、気を引き締めておこう。
「で、僕に何か用ですか?」
「あ、そうだっタ!!食堂ってどこにあるのか知らないカ?」
え?
「食堂ならあっちにありますよ?」
「えっと、そうだよナ。そう、そうじゃくて、、そのだナ、、えーと、、」
え、なに、、誘拐する前にそんなにモジモジすることある!?
「一緒に、飯、食わないカ?」
「え、嫌です。」
相手は超大国の国家元首、何が盛られているか分からないでしょ?
睡眠薬とか入ってたら最悪だし。
「な、なゼ!?ワテクシの何がダメなんダ!?」
「いや、ダメとかじゃなくて、普通に怖いです。誘拐されそうで。」
一応、ファーレンハイト王国から護衛を付けてもらっているが、慢心は命取りだ。
「ゆ、誘拐!?ワテクシがそんな卑怯な手を使うわけがないだろウ!?
というか、そんな面倒くさいことをするなら、さっさと首を切り落とした方が早くないカ?」
おーう、脳筋だね。
最近話題の『殺戮者芸人ヘルタカシ』みたいなこと言うじゃん。
【模試で全国11位だったから1人殺して順位を上げてみた】っていうあのネタ、面白いよね。
確か指名手配されてるんだっけ?物騒な世の中だねぇ。
「まぁそうですけど、、」
殺人って実は、問題の効率のいい解決方法だったりするんだけど、、、我々の前には法律という壁が立ちはだかっているんだわ。
「頼ム!!一生のお願いダ!!もうぼっち飯はしたくなイ!!!!」
そう言って国家元首様は、涙目になりながら僕を揺さぶってくる。
「あの、二日酔いで頭痛いんですよ僕、、てめぇの顔面にゲロ吐くぞコルァ!!」
「あっ、すまン。」
というか、ぼっちだったのね、、、見た目は陽キャなのに?
「はっ!ぼっち乙」
「コルァてめぇ何だト?」
「え、何でもないですよ?」
でも、ぼっち飯ってそんなに辛いかな?
静かにご飯を味わうのも貴族の嗜みってやつじゃない?
「ちょっと用事を思い出したので、、、」
あと、やっぱり怖い。
何されるか分からない。
「おい、いいのカ?一緒にご飯を食べてくれないと、ファーレンハイトに侵攻するゾ?」
「ぜひご一緒させてください。」
いやぁ、国家元首様と昼食をご一緒出来るなんて、楽しみだ!!
あの、、その、、下の方の☆を5つほど押して頂いても、、?
一週間くらいブックマーク以外での評価が無くて、不安でトイレに行きたくなるんです、、お願いしますぅ(´;ω;`)ウッ、、




