風になる男
「とりあえず、機密の漏洩問題は後においておこう。今更後悔しても何も起こらないし。]
人間という生き物は、何か取り返しのつかないことをしてしまうと、現実逃避したくなるんだよ。
「よし、行こうか。」
僕が家を出ようとすると、サーナちゃんが驚いた様子で服を引っ張ってきた。
お気に入りだったのに、、伸びちゃったじゃん。
「えっ、、ちょ、ど、どこに!?」
「どこにって、、現地にだよ。」
「げんち?」
「通信が乱れてるみたいで、電話が繋がらないんだよね。だからもう現地に行って直接確かめちゃおうかなって、、どうする?一緒に来る?」
「えーと、だから現地って ーー」
「早く決めて。早く行きたい。」
もしリアーナに危険が迫っているのだとしたら、一刻も早く行かないといけない。
あぁ、、心配だ。
「あぁぁもうわかったよ!そんな悲しそうな顔すんな!!
よくわからないけど、巻き込まれたし、行くよ!!」
「それでこそ良い女だ。」
「ジェンダー平等に気をつけた発言をしようね。あと、男だけどね。」
そうだった。
「とりあえず、近くの空港まで行こう。車は運転できる?」
「ご、ごめん、、できない。」
「クソっ、、無能が、、、、じゃあ一旦、僕の家に車を取りに行こう。」
「ねぇ待って?今すごい暴言吐かなかった?ねぇって」
サーナちゃんが何か言っているが無視して、仕返しに彼女の服を引っ張って歩く。
「というか、私行く意味ある!?レイルが車取ってこっちに戻ってきてくれたら良くない!?」
チッ、、バレたか
1人で行くの寂しいんだよね、、、
でも大丈夫、サーナちゃんはちょろい。
僕は咳払いをした後、サーナちゃんの耳元に口を近づけた。
そして、ありったけのイケボを出す。
「寂しいから、一緒に来て。」
「〜〜〜っ!?」
サーナちゃんがいきなり硬直した。
顔がりんごのように真っ赤になっていて、よく見たらプルプルと震えている。
仕方ない、追撃しよう。
「ほら、行くよ?」
「ひゃ、、、ひゃいっ、、、。」
うん、可愛い。
◆◇――――――――◆◇◆――――――――◇◆
「ねぇ、、私、帰ってもいい?」
「ん?無理。」
「なんでぇっ!?」
マジで聞いてない!!今から戦地に行くとか聞いてない!!
現地ってどこだってずっと気になってたけど、まさか戦場になってるファーレンハイト王国に行くとか、、普通考えないだろ!?
というか、何この高級住宅街。レイルこんなとこに住んでるの!?
でもそっか、王女の婚約者だもんね、、、。
婚約者かぁ、、、、
そうだよね。レイルには、もう心に決めた人がいるんだよね、、。
私なんかが後から横入りしても、、邪魔なだけだよね、、、
「着いたよ。」
「っ!?、、う、うん。」
思考の渦に吸い込まれていた私は、レイルの一言によって現実に引き上げられた。
というか、何で心の中でも一人称が「私」になってるんだ!?
本格的に俺、、もう男じゃないかもしれない。
男じゃなかったら、レイルと結婚できないじゃん、、って何考えてるの私!!!
そんなバカなことを考えながら顔をあげた私の目に飛び込んできたのは、豪邸だった。
「は?、、でっか、、、、、」
有り得んくらいデカいぞこれ、、、
高級住宅街の大きな家々の中でも、一際大きい純白の豪邸。
外壁は隅々まで美しく磨かれ、庭には多種多様な植物が生えていて、ウッドデッキもある。
ぼーっと見惚れていると、レイルが車庫から車を出してきた。
「助手席にどうぞ?」
車のメーカーは分からないが、明らかにスポーツカーである。
車高は低く、赤い車体は美しく磨かれ、光を反射している。
絶対高いやつだ、、飲み物をこぼさないようにしないと、、
「お邪魔します、、。」
そーっとドアを開けて、助手席に座る。
今まで乗らせてもらってきたどの車よりも、座席が快適だ。
「車に乗ったからには、もう逃げられないからね?」
「あ“っ、、、」
ヤバい!どうにかして帰ろうとしてたのに、、、なんやかんや流されてここまで来てしまった、、、
詰んだ。
ブォォオオーン!!!
暴走族のバイクのようなエンジン音とともに、スポーツカーが猛スピードで発進した。
「これが、出荷前の家畜のマインドってやつなんだね、、、」
逃げられないと悟ったので、思いきり寛ぐことにする。
時には諦めというものも必要だ。
多分だけど、激戦地帯には行かないだろうし、、死ぬことはないだろう。
そうだよね?
まぁいいや、モン○ナ飲んじゃお!!
「あっ、、溢した、、、、」
「はぁっ!?」
ごめんって、、
◆◇――――――――◆◇◆――――――――◇◆
僕たちは、お気に入りのスポーツカーちゃんに乗って、高速道路を爆走していた。
完全に制限速度をオーバーしているが、オービスの前では減速しているので大丈夫だ。
これでも、今まで3回しか免停になったことがないんだぜ?
任しときな。
ブオォォォオオーーン!!
「ねぇ“ぇ“っ!!ちょっと、、と、飛ばしすぎじゃない!?」
隣でサーナちゃんが何か文句を言っているが、無視して運転に集中する。
「私の見間違いじゃなかったら、、速度150くらい出てるよね!?
ここ制限速度100だよね!?」
クソっ、、あの緑の野郎、、、僕たちを抜くとは生意気なっ、、、
ブゥゥゥォォン!!
「なんで、なんで加速したのっ!?」
「この、、右車線の覇権は、、、譲らないっ!!」
「ねぇ“ぇ“ぇ“、、」
制限速度なんてしらねぇ、、僕は、、、風になるッ!!
あまりの加速力についていけなかったようで、緑の野郎は脱落した。
僕たちは勝利した。右車線の覇権は守られたのだ。
ここからは、優雅な旅の始まりだ。
「ふぅ、、。」
「何ニヒルにタバコ吸ってるの!?普通に羨ましいんだけど!?
私にもちょっと頂戴!!」
「いいよ。」
美少女と2人で喫煙ドライブ、、最高のデートじゃねぇか、、、
「あ、待って、、あそこで降りなきゃいけなかったんだ!!」
「え、通り過ぎてるじゃん!?」
しばらく忙しいので1週間くらい更新できません。
何卒お許しを..