死闘
「なぁレイル、、やっぱり誤解だって。俺、そのサーナヴェルなんとかって奴じゃないって。」
そもそもそのサーナなんとかって、外人だろ?
俺、ハーフとかですらなく、純粋な日ノ本人なんだけど。
サーナって本名じゃないし。本名、荒木 佐名だし。
「噓をつくなァっ!!君のっ、、この家の一階に、記章があるだろう!?
あれはエフタリア帝国の皇族しか持っていない緋色の記章だ!
しかも、君の美しい金髪や緋色の瞳、美女と間違えるほどの美貌、、全部が、サーナヴェルと共通している!!
もうわかっているかもしれないが、僕が『日ノ本の叡智』レーア・スラグだ。
僕に恨みを持つのは勝手だが、やっていいことといけないことっていうものがある。
証拠は完璧に揃ってるんだ。
これ以上言い逃れしようというのなら、こっちだって、、それ相応の対応をさせてもらう。」
「えっちょっ、、記章!?記章ってなんだ!?」
後、俺、そんなにそのサーなんちゃらって人に似てるの!?
そっくりさん!?
『日ノ本の叡智』ってアレか!?ファーレンハイトの英雄っていう!?
「もういい、、ごめんだけど、時間が無いんだ。
リアーナの身に何かあったら、もう、、自分を抑えられる自身がない。」
え、、あの、、、ちょちょちょっちょ
これ以上殴られたら出るから!!さっき食べたものが!!
「待て待てぇ!!」
「今度は何だ!」
あ、一応話は聞いてくれるのね。
「あの、俺のこの緋色の瞳、、カラコンなんだけど。
後、金髪は普通に美容室で染めてもらってるだけだし。」
そう言って俺は、カラコンを外してみせる。
ほーら、正真正銘の黒い瞳だぞ!?よく分からないけど潔白の証だぞ!?
「う、、噓をつくな、、、」
「いや、何だよ噓って。正真正銘の黒い瞳だろ?というか記章って、、あ、アレか!
アレはな、リスナーさんからのプレゼントだ。
俺がサーナなんちゃらって奴に似てるってことでバズった時に、【よりサーナヴェルらしさを出して欲しい】とかいう意味わからん文章と共に送られてきたんだよ。」
「そ、そんなっ、、そうか、そこまで言うなら、あの記章を持ってこい。
僕が確かめてやる。」
「分かった。」
「えっ、、そ、そんなに簡単に、、、、お、おい!早く行け!!!」
「スマンスマン。」
いやー、死ぬかと思ったけど、何とか助かりそうだ。
それにしても、レイルのやつ、、焦ってたなぁー。
普段澄ましてるやつの焦り顔ほど、見応えのあるものはないだろ。
これで、俺の潔白が証明されたら、どうしてやろうかなぁ、、、
とりあえず、イジりまくるのは決定だな。
待てよ、何か忘れてる気が、、、、、、気のせいか?
◆◇――――――――◆◇◆――――――――◇◆
「ほれ、持ってきたぞ。」
そう言って、記章とやらをポイっと投げて渡す。
「ついに諦めたか。に、逃げなかったのは、正しい判断だな。」
レイルは危な気なくキャッチし、どこからか虫眼鏡とライトを取り出して、記章を調べ始めた。
最初は落ち着いてゆっくり調べていたようだが、段々焦ってきたのか、動きが雑になってきた。
「あれっ、、、何で、、、、紋様が出ないっ、、、?」
「紋様だかなんだか知らないけど、そりゃあ出ないだろ、、偽物だし。」
「うるさい黙れっ!!」
何か理不尽じゃね?
どれだけ罪を重ねる気なんだ?
俺の潔白が証明された時には、、、マジで覚えとけよ。
一人で恨みを募らせている間にも、どんどんレイルの動きが雑になってくる。
汗も垂れてきたようだ、、冷や汗ってか?
「何で、、だってサーナちゃんはサーナヴェルで、、、この記章が、、、そうか、分かったぞ!!」
「お、何だ?」
ついに潔白が証明されたか!
「全く、偽物を持ってくるとは、、小賢しいな。
僕が直接言って調べてやる。」
「ん?」
え?もしかして、レイルが見た記章と違う記章を持ってきたと思われてる?
「俺、そんな偽物作れるほど器用じゃないぞ?」
「うるさい黙れっ!!ついてこい!!」
なぁ、やっぱり理不尽だよな?
◆◇――――――――◆◇◆――――――――◇◆
「本物の記章が見つかれば、もう言い逃れは出来ないぞ!!」
「はいはい、言い逃れ出来ないね。」
場所は変わって一階。
例の記章があった、本が積んである辺りを、レイルは端から端までくまなく探している。
「クソッ、、どこに隠した、、、、」
捜査の手は、本の山からキッチン、リビングにまで伸びていき、遂にはゴミ箱を開け始めた。
レイルの背じゃ届かないような高い所は、俺が探すのを手伝ってやる。
というか、容疑者に証拠探しを手伝ってもらうのってどうなんだ?
捕まえる側として失格じゃない?
「はぁ、、、はぁ、、、、、、。」
結局二時間くらいかけて捜索したが、レイルの思うような結果にはならなかったらしい。
レイルは、体力がないくせに重労働をしたせいで、ソファの上で死んでいる。
ひと段落したし、コーヒーでも入れてやるか。
「コーヒー飲むか?」
「あ、ありがとう、、、。」
息も絶え絶えなレイルは、のそのそと起き上がってコーヒーを受け取った。
そして、それを飲み終えると、地面に手をついた。
顔を少し上げて、気まずそうに喋り出す。
「あの、、、、」
「何だ?」
「ほんっとうに、すみませんでしたっ!!!」
「おう、絶対許さん。」
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