全ては愛しき貴女の為に
???
「というわけで、今日はここら辺で終わりまーす!、、さよなら♡」
「いぃぃイケボッ!?!?」
上位チャット:ヴッ
上位チャット:イケボぉぉ
上位チャット:【Fural】ちゃんwww
上位チャット:好き♡
【この配信は終了しました。】
数マッチほどやって、そろそろいい時間になってきたので、配信を終了させた。
【Ruler】の方も配信を終わらせたようだ。
「改めて、皆、二年間も居なくなってたのに、また一緒にやってくれてありがとね。」
「いえいえ、むしろ【Phantom】様と一緒に出来て光栄です。」
「いつでも誘ってくれ。」
「ヒヒッ!久しぶりに満足させてもらったぞ。」
急に居なくなって二年も経つのに、皆優しいなぁ。
僕だったら机をひっくり返して、シャーペンの芯でボウリング始めちゃうくらいには怒るのに。
やっぱり、このチームは暖かい。
ちょっとイエスマンしかいないのが怖いけど。
「じゃあ、また一緒にやろうね。」
そう言って僕がログアウトしようとした時、【Ruler】に真剣そうな声色で呼び止められた。
「なぁ、、【Phantom】、、、」
「どうしたの?」
ひょっとして急にいなくなったことをキレられるだろうか、と内心で戦々恐々としていたが、返ってきたのは、全く予想していなかった提案だった。
「また、このチームで、大会に出ないか?
俺は今、二か月後にある日本一決定戦に出るためのチームのメンバーを探してるんだが、どうしてもこのチームで出たいんだ。
このチームが、今まで俺が入ってきたチームの中で最強だし、何より、やってて楽しい最高のチームだからな。」
【Ruler】の提案に、【Fural】と【Rira】も追随する。
「アタシも、またこのチームで大会に出たい。というより、【Phantom】、お前のプレイが見たい。
お前が前の世界大会で無双していたのは、今でも時折思い出してゾクゾクするし、最高の瞬間だった。
アタシからもお願いだ、どうか一緒に出てくれないか?」
「わっ、、私もっ!【Phantom】様と一緒に大会に出たいですっ!
せ、あ、ええと、、思い出にもなりますし、優勝した時には、その、私の気持ちを、、、、」
あぁ、嬉しいな。
こんなに人に慕われて、望まれるなんて、昔の僕には有り得ないことだった。
【Fural】、【Rira】、【Ruler】。
個性豊かで面白い、最高のチームメンバーたちが、僕を必要としてくれている。
それだけで、僕の胸が暖かいもので満たされて、何だか涙すら出てきそうだ。
「誘ってくれて、ありがとう!」
「よしっ!!!なら、まず練習の日程を決めて ―――――――― 」
「でも、ごめん。大会に出ることは、出来ない。」
「っ!?なんで、、」
「どうしてですかっ!?」
「おいおい、、」
「君たちを、その、、巻き込むわけにはいかないんだ。」
日本一決定戦は、FinalWorldの公式大会だ。
出場するには、不正行為などが行われないように、本名と住所を入力を入力しなければならない。
そう、本名だ。
万が一でも、僕の本名が流出すれば、大変なことになる。
【Order of Phantoms】の皆にも、危険が及ぶかもしれない。
それだけは、絶対にダメだ。
僕が守るべき人々である彼らが、僕のせいで危険にさらされるなど、あってはならないことだから。
「どうして、、私たちじゃ、、、ダメなんですかっ、、?」
「違う!!そうじゃないっ!!!
皆が僕を必要としてくれていることは分かってるし、僕もそれに応えたいと思ってる!
でも、ダメなんだ、、、。
万が一でも、皆が危険にさらされる可能性があるから、僕はもう、大会には出れない、、。」
今の僕は、二年前のあの時の僕とは、もう違う。
何も背負わず、無気力に行き当たりばったりで生きていたあの頃とは、違うんだ。
さっき、『皆が危険にさらされる可能性があるから、僕はもう、大会には出れない』と言った。
確かにあの3人のことは、人として好ましく思っている。
少なからず僕に好意を向けてくれているのも知っているし、妄信的に信頼してくれているのも知っている。
でも、僕があの3人を守りたいと思うのには、好ましく思っていること以外にも理由がある。
僕は、この国自身と、ここに住む全ての人々を、守りたい。
この国が危害を加えられるのは許せないし、この国の人々が一人たりとも傷つくことがあってはならない。
僕の愛する人のために。
ある日、リアーナ・ラ・ファーレンハイトは言った。
「私、日ノ本が好きよ。」と。
リアーナが好きと言ったならば、この国は、リアーナが好きと言ったそのままの状態であるべきだ。
言い換えるならば、全てにおいて現状を維持するべきだ。
周辺諸国と平和的に接し続け、美しい景観を維持し、人々の笑顔が溢れる社会を保つ。
リアーナが好きと言った『日ノ本』を、何としてでも保たなければならない。
全ては、リアーナの幸せのため。
僕を暗闇から救い出してくれた女神、リアーナ・ラ・ファーレンハイト。
彼女こそが僕の全てであり、彼女の幸せこそが全てにおいて優先される。
例えそれがどんなに悲しいことであっても、僕の心や身体が壊れてしまうとしても、リアーナのためになるなら、なんでもなってみせる。
今回の大会の件についても、そうだ。
【Fural】も【Rira】も【Ruler】も、日ノ本の国民だ。
この3人が危害を受けるとなると、それは、リアーナが好きな『日ノ本』を乱すことになる。
それだけは、絶対に許されない。
もう二度と、リアーナを傷つけないと、誓ったのだから。
だから僕は、絶対に、大会に出ない。
「ごめんね?普段は一緒に出来るから、それで許して?」
ということで僕は、皆に平謝りすることしか出来ない。
何なら一週間禁酒してもいい、、だから、許してくれないかな?
配信は好き、ゲームも好き、ダラダラするのも好き、酒もタバコもだいすき、でも、最優先はリアーナ。
レイルちゃんは、そういう人です。
高評価もお願いします!




