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TS美少女ロリイケボ系配信者  作者: 仏滅
【Order Of Phantoms】編
12/45

【Rira】

「うーん、、なんか、違うんだよなぁ。」


最後の敵が倒れ、【You are the winner!!】という表示と共に壮大なBGMが鳴るが、特に私の心には響かない。


「刺激が足りないんだよォっ!!」


どんな高難易度のゲームでも、どんなに敵が上手くても、満足できない。



それもすべて、二年前に最高の刺激を知ってしまったせいだ。



アタシは小さい頃から、ゲームが好きだった。特に、強い相手の動きを見て、刺激を貰うことが大好きだった。

だからアタシは、FPS廃人しかやっていないというBBBトリプルビーというゲームを元々やっていた。


だが、二年と少し前くらいに、あるプレイヤーの動画を見た。


それが、当時のFinalWorldの最強プレイヤーだった【Phantom】のプレイについての考察動画だ。

それを見てアタシは、こいつと一緒にやりたい!と思った。


アタシがこうも強く物事を望むのは、珍しいことだ。


その日からFinalWorldをやり始め、ついには【Phantom】と同じチームになることに成功した。


アイツと一緒にプレイをして過ごす日々は、控えめに言って最高だった。


例え、アタシが全力を尽くしたとしても勝てない程の圧倒的な強さを、アイツは持っていた。


意表を突いた遮蔽物の使い方、常人では考えつかない立ち回り、そして、全く銃弾が当たらないほどの変態的なキャラクターコントロール。

アイツのプレイからは常に新しい発見があり、その度に『こんなことができるのか』と感心して、ゾクゾクした。


だが、そんな日々は、あっけなく終わってしまった。


【Phantom】は、アタシの前から、忽然と姿を消したのだ。


アイツがいないFinalWorldなんて、やっている意味が無い。

だから私は、FinalWorldをやめて、BBBに戻った。


やはりBBBは、FPS廃人しかやっていないと言われているだけあって、上手いプレイヤーが多い。

当然貰える刺激もFinalWorldより多いのだが、何故か違和感を感じていた。



しばらくして、私は気づいた。


無意識に、上手いプレイヤーと【Phantom】を重ねてしまっているということに。


そして、どんな上手いプレイヤーでも【Phantom】には及ばないということに。



アイツこそが頂点であり、最強なのだ。



アタシが感じていた違和感の正体は、物足りなさだった。

どんな刺激でも、【Phantom】から得られるモノには及ばない。



【Phantom】はアタシにとって、最高の刺激という生きる糧であり、深く深く依存してしまう、劇物なのだ。



「アタシを、お前じゃなきゃ満足出来ない身体にしたのはお前だろ?」


人の身体を改造しておいて、勝手に居なくなるのはダメだろう?


もう、禁断症状のようなものが出始めてから一年以上は経っている。

そろそろイカレちまってもおかしくないぞ?


「、、ちっ、、責任取れよ、、、。」


嚙んでいたガムをペッと吐いた後、最近お気に入りのタバコを一本吸う。


「ふーっ、、、あん?」


タバコで気を紛らわせていたら、何やらメッセージが来たようだ。

だが、アタシにメッセージを送ってくる奴なんて、いるはずがない。


アタシの連絡先を知っているのは、死んだ両親と居なくなった【Phantom】だけだからだ。


もしくは、ちょっと前まで頻繫に送られてきた迷惑メールだろうか?

添付されていた電話番号に電話をかけて怒鳴ってやったので、最近は来なくなっていたんだが、、


何が『普段はどんなクスリをお使いですか?』だよ!!大体、何でアタシが麻薬を使ってる前提なんだ?


『世界大会の時には使っていたでしょう?』とか言われたけど、使ってねぇよ。

インタビューの時に『ヒャッハー!』って言ったからか?あれは【Phantom】のせいでハイになってただけだわ。



アタシが接種する劇物は、【Phantom】だけで充分だ。



「全く、、どうせあの迷惑メールだろ?」


今度はどんな暴言を吐いてやろうか?と考えながら、メッセージを開いてみる。



そして、そこに表示された画面を見て、アタシの思考がしばらく停止した。








「、、、はっ?」



これは、、、どういうことだ?




【Phantom】からメッセージが来ていて、、、








「そうか、、そうかそうかぁ!」



やっと帰って来たのか!!



口元がしぜんと弧を描く。



「あぁ、、二年ぶりだなぁっ、、、どれだけアタシが、あの刺激が恋しかったと思ってるんだ!!

アイツは分かってないだろうけど、、。」



まぁいい。【Phantom】がいるなら、FinalWorldはやる価値がある。

というか、絶対にやらなければならない。



もう一度、あの刺激で、アタシを満たしてもらうために、、




「腕がなまってたら、ただじゃおかねぇぞー?、、ヒヒッ!アハハハッ!!」



嬉しさのあまり笑ってしまったが、仕方のないことだろう。



【Phantom】の刺激、、もう【Phantom】でいいや。【Phantom】をキメた時は、最高にハイな気分になるのだ。



何と言えばいいのだろうか。

【Phantom】は、その有り得ないプレイを通して、アタシの中の常識をぶち壊し、アタシという存在自体を拡張してくれる。

そして、身体の中心にある芯を伝って、段々と刺激が上ってきて、最終的には脳に到達する。


あの時の快感は、もうそれは言葉で言い表せないほど素晴らしい。


もうアタシは、あの快感からは逃れられない。



二年間もアレ無しで生き延びたアタシを、神様とやらがいれば、多分ほめてくれるだろう。



「待ってろよ【Phantom】、、骨の髄まで、味わい尽くしてやる、、、クヒヒッ、、」


明かりの点いていない暗い部屋でマウスを連打し、FinalWorldを起動させた。


そして、送られてきていた【Phantom】からのパーティ招待を、すぐさま受諾する。

ロビー画面が切り替わり、【Phantom】と、、確かこいつは【Fural】だったか、、【Fural】のキャラクターが表示された。


アタシは、二年前と同じようにボイスチャットをオンにする。


「よぉ、、久しぶりだなぁ。」


前と変わらず、まずは挨拶をする。だが、【Phantom】が一向にテキストチャットで挨拶を返して来ない。


もしかして、離席してんのか?


「おい、【Phantom】、、、」


「あー、、あー、、、聞こえる?」


「っ!?」


急に知らない男の声が聞こえてきたので、思わず飛び跳ねてしまった。

危ねぇ、天井にぶつかるところだった。


このアパート、家賃は安いけど、、天井の高さ1.2mってもはやこれ違法建築だろ。


「だ、、誰だ!?」


「僕だよ僕、【Phantom】だよ。」


それは詐欺の常套句、、じゃないな


「えっ、、、、」


【Phantom】の声って、、こんな感じだったのか。


アタシはイケボ系とかには興味がないが、【Phantom】の声はいい声だと思う。

聞いてて落ち着くし、不思議な魅力が感じられる。


なんともアイツらしい声だ。


「お前、、ボイスチャット出来たんだな。」


「最近マイクが付いたヘッドホンを買ったんだよね。」


「そ、、そうか。」


いつもテキストチャットで話していた【Phantom】とこうして話すのは初めてなので、少し戸惑うのは仕方のないことだろう。


「えっと、、【Fural】はどうしたんだ?」


「それが、僕も分かんないんだよね。

『【Phantom】様の声がぁっ!』とか言って、どこかに行っちゃったんだよ。」


「あー、なるほどな、、」


【Fural】は【Phantom】に恋をしているようだったので、そうなってしまっても仕方がない。


【Phantom】の声は、アタシでもいい声だと思っているぐらいだし、【Fural】からしたらもう、、それはそれは凄いものに聞こえているだろう。


今頃、冷静になるためにスマホを割っているかもしれない。


「ところで、今からどうするんだ?」


「えっと、【Fural】が戻ってきたら、【Ruler】を待ちながら通常マッチでもやっておこうかなーって思ってる。」


「わ、分かった」


あーダメだ。会話ってどうやって繋げたらいいんだ?

今は酒も飲んでねぇから勢い任せには話せねぇし、、



おい【Fural】、、早く戻ってこい!


アタシは、【Phantom】をキメたくてうずうずしてるんだ!!





それに、【Phantom】と2人っきりは、、、その、だいぶ気まずい!


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