10/45

【Ruler】

めっちゃ新キャラ出します(´◉ᾥ◉｀)

「いよっし、、やってくかー！！」

上位チャット：いよっし！

「そろそろ大会も近いし、チームメンバー探さねぇとな。」

FPSゲームFinalWorldのプロである俺、【Ruler（ルーラー）】は、まぁ自分で言うのもなんだが、そこそこ人気の配信者でもある。

近々行われるFinalWorldの大会に出場するのだが、基本4人1チームなので、あと3人ほど一緒にやってくれる人を探さないといけない。

まぁどうにかなるだろう、今までもどうにかなってたし。

FinalWorldの大会に出場するのも、これで7回目だ。

もちろん毎回個性豊かな良いメンバーが集まっていたが、やはり一度たりとも、二年前のあ(・)の(・)最(・)高(・)の(・)チ(・)ー(・)ム(・)を超えることは無かった。

それが、二年前に突如として姿を消した伝説の最恐プレイヤー【Phantom（ファントム）】が結成したチーム、【Order of Phantoms】だ。

最近は見かけないが、当時は世界大会の常連だった”スナイパーの怪物”【Fural（フューラル）】、Phantomの後を追うように姿を消した”ショットガンの怪物”【Rira（リーラ）】、そして、”ライフルの怪物”と呼ばれていた俺。

この3人のトッププレイヤーが”キャラコンの怪物”【Phantom（ファントム）】のもとに集って結成された【Order of Phantoms】は、初出場の世界大会で圧倒的な力を見せつけて優勝し、人気絶頂のままその短い歴史に幕を下した。

解散理由はもちろん、リーダーである【Phantom】の失踪だ。

あれから二年経つが、今でもたまにあの時のことを夢に見る。

あの時以来、朝起きたらフレンドリストをチェックして【Phantom】がログインしているかどうかを確認し、していないと分かってため息をつくのが日課になっている。

ため息つきすぎて俺のPCが最近臭ってきたくらいだ。

「うじうじ考えていても、あいつが帰ってくるわけでもねぇしな、、。」

そういつも自分に言い聞かせるが、中々切り替えがつかない。

上位チャット：どうした？

上位チャット：？？

上位チャット：チームメンバーどーすんだ？

上位チャット：今回はどんなやべぇメンバーになるかなw

上位チャット：毎回波乱だもんなw

「よし、切り替えてくぞー！」

いや、ついた。

上位チャット：おー！

上位チャット：おー？

「チームメンバーはそろそろ決まるかもしれん、いろんな人誘ったから誰が来るかはわからないけどな。」

上位チャット：マジか

上位チャット：ユキたん来ねーかな

上位チャット：誰が来るかな～？

「とりあえず今日は、普通にFinalWorldやってくか。」

そうして俺は、FinalWorldを起動した。

ロビー画面で手始めに今日のアイテムショップをチェックしていると、ふと、右端にあるフレンドリストが目に入った。

そして、そこにあった表示を見て、俺は自分の目を疑うことになった。

「、、は？」

大丈夫、俺はミームに侵されてないから、『Huh？』って言わない。

上位チャット：どした？

上位チャット：何かあったの？

上位チャット：は？

上位チャット：おいおいマジか！！

上位チャット：え、、えっ！！

「おい噓だろ、、、。」

フレンドリストの一番上。その場所にはいつも、俺が唯一お気に入りに設定しているフレンド、【Phantom】がいる。

今日も相変わらずオフラインだろうと思って見ていなかったが、【Phantom】のユーザー名がいつもと違って濃い色になっていた。

濃い色になっているということは、ロ(・)グ(・)イ(・)ン(・)し(・)て(・)い(・)る(・)ということだ。

「まさかまさか、、そんなことがあるわけねぇ、、、よな？」

上位チャット：おいこれは神回だぞ

上位チャット：まさかまさかの？w

上位チャット：そんなことってある？

上位チャット：二年ぶりの再開か？www

上位チャット：これは熱くなってきたなぁ！

コメント欄がかつてないほど盛り上がっているが、困惑している俺にとって、それどころではなかった。

「試しに招待でも送ってみるか、、。」

スポンッ！という音と共に、【Phantom】をパーティに招待しました！というメッセージが出てくる。

この招待を【Phantom】が受諾すれば、約二年ぶりの再会ということになるが、、、

「流石にねぇよなぁ、、、。」

１５分間も定期的に招待を送って待ってみたが、【Phantom】が来る気配はない。

「はぁ、、、バグかなんかだろうな、、多分。」

上位チャット：くそっ

上位チャット：何ていうバグだ、、

上位チャット：まだ、、まだだっ

上位チャット：諦めるにはまだ早い、、、

上位チャット：涙出てきた

上位チャット：玉ねぎ斬りすぎか？

その後も何度も招待を送ったが、【Phantom】からの音沙汰は無かった。

「ふぅ、、やっぱりダメか、、、無駄な期待だったな、、。」

クソっ、、せっかく切り替えれたのに、、

「すまんな皆、なんか辛気（しんき）臭い雰囲気になっちゃって。

よし、気を取り直してやってくかー！」

諦めてマッチを開始しようとした時、唐突にスポンッ！という音がした。

そして、【Phantom】からパーティに招待されました！というメッセージが表示される。

「おいおいおい、、マジかよ、、、。」

上位チャット：え

上位チャット：あっ

上位チャット：これはあるぞ！

上位チャット：ファントムきたか！！

「受諾して、、みるかっ、、、。」

うるさく鼓動する心臓を恨めしく思いながら、一回深呼吸をする。

そして、恐る恐るマウスをクリックすると、招待を受諾しました！というメッセージが表示された。

ロビーに、見覚えのあるユーザー名の、３人のキャラクターたちが現れる。

「【Fural（フューラル）】【Rira（リーラ）】【Phantom（ファントム）】、、、、。」

幾度と見た、あの時の光景が、再び蘇ったのだ。

上位チャット：ガチかwww

上位チャット：えぐすぎえぐぐ

上位チャット：まってまじで泣きそう

上位チャット：二年ぶりだよな

上位チャット：またこの最高のチームが見れるってのか！？

上位チャット：伝説の復活だぁぁぁぁぁ！！

【Phantom】が”やぁみんなこんにちは！！”とテキストチャットを送って来た。

ありふれた挨拶に見えるが、これが【Phantom】がいつも挨拶に使っていた定型文であり、【Phantom】が帰ってきたことを意味している。

その日、FinalWorld界隈に激震が走った。

伝説の最強プレイヤー【Phantom】が突如としてゲームに復帰。

さらに、二年前に解散した【Order of Phantoms】が、一時的に復活したのだ。

だが、2ヶ月後に行われる大会の出場者リストに、【Phantom】の名前が加わることは無かった。