第9話 愉快な先生たち
皆さん、お久しぶりのテラでございます!実は私の居たとこ大図書館、イロハたちが通う学園の一部だったんです!
それはそうと、イロハの試し開きには驚かされました。まさか、“ジュラシックアイランド”で呼び出した恐竜たちをあっさり倒してしまうなんて、あそこにいた三人にはこれからも期待大って感じですね。ですが、これはちょっとしたジンクスなんですが……神書の呑み込みが早い生徒たちって、この先問題を起こしちゃう人たちばっかりなんですよね。……この話は、いつかできたらしましょうか。
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学園生活の二日目が始まった。女子会というか、おしゃべりの最中に途中で寝てしまい、コウコツと絵巻にとなりまで運ばれての二日目である。めっちゃ眠い。
それはそうと、今日から授業が始まるようで、この日は学年団の先生たちの授業が自己紹介を含めて行われるらしい。早速の一時間目なんだけど……目の前にいるのは二日酔いの老人である。
~一限目:歴史~
「あいぃ……いっひっ、それじゃあ、ひっく、授業を始めましょうかにょう。」
いやあんたそれ絶対無理だろ!うちのクラス全員が思ったに違いない。
「んん?なんだにぇ君たち?お前誰?みたいな顔しちゃってえ……あれ?まだ名前言ってなかったっけ?」
確かに、確かにまだ自己紹介も何もされてないんだけれど、されてないんだけれども!他にも気になることっていうか言いたいことがあるんだよ!そんな思いで机の下で握りこぶしを作りながら、チャイナ服に身を包んだ髭の長い老人が黒板に名前を書く様子を眺めた。
「ども、三組担任のヒョウロンしぇんしぇえでございます。以後、お見知りおきよお。」
ヒョウロン先生はそう言い終えると、地面にぶっ倒れ寝てしまった。
「おい、このクソじじい捻りつぶしていいか?」
「やめとけリンガル!」
リンガルは眉間にしわを寄せ今にも神書を開こうとする素振りを見せる。となりの男子が抑えているけど、気持ちは分からなくもない。絵巻もなんかぶちぎれる寸前だし……。
「うひょ!おう、おはよう諸君。」
数分後、ふらふらとこのじじいは立ち上がる。そしてクラスの顔色を窺って一言。
「おぬしら……なんか嫌なことでもあったのか?顔色が良くないぞい。まあ、ひっく、ストレスとか溜めすぎるのもよくないからのう。ひっく、ほどほどにのう……それじゃあ歴史の教科書五ページ……」
じじいが全てを言い切る前に、私を含めた数人の生徒が神書を開き文章を唱え、じじいに襲撃を始めた。やってられるかこんな授業!ストレスの原因お前じゃい!
「おお……最近の若者は血の気が多いのう……。」
三十分後……。
「とまあ、こんなところでこの世界のざっくりとした歴史じゃ。次からは最初のほう詳しくやるからよろしくのう。」
「「「ぜえ……ぜえ……はあ……はあ……。」」」
なんだこの髭じじい!くそ強い!私たちは複数がかりで四方八方から攻撃したのに、じじいの方は腰にぶら下げた神書を全く使わず全ての攻撃をいなしやがった。しかも何がムカつくって、私たちの猛攻に一切の疲れを見せずに、授業をすすめるどころか酒を飲みながら攻撃を躱していたことだ。いったいどうなってやがる……!
コウコツ(攻撃の仕方がおじいちゃんにやることじゃないし、いろはすごい口悪くなってるよ……。)
「まあなんじゃ、いい酔い覚ましになったわい。あと、おぬしらごときの攻撃じゃわしは汗一つかかんからのう……成績さえ落とさなければいつでもかかってきていいぞい!」
そう言うと、じじいはわははと笑いながら教室を後にした。
(((あのじじい……いつか殺す!)))
コウコツ(……ただの酔っぱらいだよね?)
~二限目:化学~
次の授業にやってきたのは、眼帯を付けたワイシャツ姿のおっさんだった。
「どうも、四組担任の平厳吾だ。よろしく。」
良かった、次は真面目そうな先生が来たー
「お前たち、さっきヒョウロン先生とやり合ったんだってな?どうせ化学の授業なんて本腰入れるの次からなんだから、俺とも戦わねえか?」
やばい、この学園、まともな先生が居ないのかもしれない。
四十分後
「おう!やるじゃねえか!戦えない子たちも、みんなおもしれえ能力してんなあ!」
気付けばこの教室は大いに盛り上がっていた。厳吾先生の人柄の良さというのだろうか、すぐにクラスのみんなも打ち解け、入学祝いのパーティー状態とかしていた。
「ありがとよ!神書に関してなんかあったら相談乗るから、クラス気にせず相談に来いよー。」
そう言うと、厳吾先生は教室をあとにした。なんだ、おかしな先生ばかりでもないようだ。なんだか授業という単語が霞み始めている気がしなくもないけど、あんな酔っぱらいに比べれば素晴らしいものがあった。さて、次の数学はどんな先生がくるのだろうか……
~三限目:数学~
「お前ら、入学二日目に何事だ?」
怒りのこもった重苦しい声が教室中に響き渡る。姿勢を正して座る私たちの目の前にいるのは、神書を片手に怒り心頭の数学の先生だ。教室に重苦しい空気が流れる。なにこの温度差。
「私は君たちの学年主任のミメーシスだ。さっきみたいに子どもだと思ってからかうものなら、次からは容赦しないぞ?」
そうは言っているものの、見た目は完全に私たちよりも幼い小学六年生くらいの幼女である。授業が始まるちょっと前に教室に入って来たもんだから、うちの男子が他のクラスの女子と勘違いしてふざけて声を掛けてしまったみたい。気が付けば全員強制的に席に座らせられていた。ほんとに一瞬で何が起こったのか本当に分からない。
「ヒョウロン先生から聞いたぞ。お前ら、年寄りに向かって神書を開放して容赦なく攻撃を仕掛けたみたいだな。ヒョウロン先生もそれが恐怖でどうすればいいか分からなかったと悲しんでらしたぞ。」
(((あのじじい……。)))
「ったく、まあいい。そこはヒョウロン先生とお前らで解決することだ。よっぽどなことがあれば私も動くがな。教科書10ページ。」
ミメーシス先生がそう言うと、生徒全員の机の前にそのページが開かれた教科書が一瞬にして現れた。なにこれちょう怖いんですけど。
「先に言っておくが、私がお前らをいなすことなど、コンマ一秒もかからない。だから逃げようとか反抗しようなどと無駄な思考はやめるんだな。」
五十分後、この超怖い先生の授業がようやく終わった。
~四限目:言語~
「き、君たち、何があった?座学でこんな疲れるものなのか?」
三時間分の授業の疲れでぐったりしている私たちを、神柴さんは困惑した様子で眺めていた。
「先生、わたしたち、神柴先生が担任でほんとに良かったです!」
カナメが私たちの声を代弁するかのように神柴先生を称える。ただ入学二日目でそのセリフはあまりに早い気もする。普通卒業の二日前とかに出るセリフだ。
「さっき三組に行って授業したらみんな泣きながら真面目に授業を受けてくれてたが、まあ、君たちには君たちの事情があるのだろう。分かった、まだ慣れなくて疲れているようだから、次の言語の授業はゆっくりやることにしよう。」
ほんとに神!神柴さんだけがあんなよくわかんない怪物ばかりの学園のオアシス!
「まあ、昼休み明けの神書演習が一番疲れるだろうからな。それに
不思議な来客
能力:常時“うろんな客”が付きまとい、客は五感や相手の思考などの自信が感じた情報を所有者に伝える。また、一時的に客を増やすことも可能。
モデル:うろんな客
大人のための絵本と称され、冷酷な世界観と繊細なイラストで有名なエドワード・ゴーリーの代表作。作中では黒い鍵鼻の不思議な生物が登場し、自由気ままに振る舞うことで家の人々を困らせていくのだが、この生物については生まれてくる子供の隠喩だと言われている。
~ある日訪れた来客は、一向に居なくなる気配が無いのです。~