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第8話 女子会

「そっか、これで全員なんだ。」


 思ったよりも少ないクラスの女子メンバーに、思わず声が出た。もっと多い気がしていたけど気のせいだったのかもしれない。


「思ったより少ないんだね。」


「そうか?俺学園ってやつが初めてだから分かんねえや。」


 私の素朴な感想に、絵巻は首をかしげ反応した。そんなとき、オトギノが私に問いかけてきた。


「あなた、学校を知っているのですか?」


「ま、まあ……ちょっといろいろ(記憶喪失が)あってあれ(思い出せないん)だけど、学校には通ってたよ(たぶん)。」


 記憶喪失について、何も分からない状態で人に話を広げたくはない。そう思ってなあなあな感じで返したら、私を見つめていたオトギノの視線は少し下を向いた。


「そう……ですか……。」


 そう呟くと、オトギノは踵を返し近くのソファに腰を掛けた。


「それだけ?」


「ええ、人には人の事情がありますわ。あまり暗い雰囲気にしたくないので、もういいですわ。」


 なんか意味深なこと言う子だ。やっぱりオトギノの感情は読み取りづらい。


「せっかく皆さん集まったんですから、貰った神書含めて自己紹介しましょうよ!」


 カナメがそう切り出した。場を仕切ってくれるというか、こういう子は結構ありがたい。ってか、カナメってちょっと不憫なだけでもしかしたら普通にいい子なのかもしれない。


「“疾風の又三郎”、いろいろあって試せませんでしたけど、これが私の神書です。カナメっていいます。」


「縦紙絵巻!神書は“源平戦記”だ。相手の能力を封じることができる。」


 能力を封じる?そんな能力もあるんだ。あれ、もしかして私の神書って他の子に比べて結構弱い?


「レ、レータって言います。神書は“パンドラボックス”で……その、つ、使ったら最悪な無差別攻撃が始まりますので、ごめんなさい!私はただの役立たずです!」


「そんなことねえって!いつか使い道はあるはずだ。」


 レータと名乗った少女の気弱な発言に、絵巻はフォローを入れる。でも確かに、無差別攻撃も時と場合によっては使い道はある。ってか、神書ってこんな攻撃的なものしかないのだろうか。


「私の名前はコウコツ。神書は“不思議な来客”で、今はどっかいったけど、私と情報共有できるお客さんを呼ぶことができるよ。」


 そういえば、コウコツの神書はそんなんだった。お客さん?説明されてもよく分からないけど、たぶんコウコツとは一緒にいることも多いだろうしこの先分かってくるだろう。


「わたくしはオトギノ・ノスキューレと言いますわ。“かぐや様を帰らせたい”というふざけた名前の神書ですが、魅了した相手を服従させる使い道はある能力ですわ。」


「名前は語部いろは。神書は“桃子の鬼退治”。家来を召喚したり、刀を具現したり、あと、身体能力もちょっとだけ上がる能力です。」


 これで全員の自己紹介が終わった。隣の芝は青いというべきなのか、他の子の神書がかなり強力に見えてくる。物騒なのが多いけど、今回の試し開きの感じ、これからも戦闘を行うことはあるのだろう。自己紹介が終わるとガールズトークというかそんな感じの他愛のない会話が始まった。会話が続き夜も深夜に近づいていったところで、いつのまにかコウコツの近くに謎の生物がうろつき始めた。


「ところでコウコツ、そいつはなんなの?」


 私がコウコツに尋ねると、コウコツはその真っ黒いペンギンみたいな生き物を拾い上げて自身の膝の上に乗せた。50センチメートルくらいの鉤鼻が特徴的な生物だ。黄色いマフラーと白いスニーカーを履いているその生物は、ペンギンのような手を自身の短い膝に乗せた。


「これがお客さん。なんかね、私の神書は一度発動したらこの子がずっと付いてくるみたいなの。可愛いでしょ!」


「可愛い……?」


 コウコツの笑顔に鈍い反応で返してしまった。だって、部分部分を切り取れば可愛いかもしれないけど、こんな生き物見たことないしちょっと不気味さも混ざってるんだもん。


「あ!イロハ、この子のこと不気味って思ってるでしょ!?」


 コウコツは頬を膨らませる。なんで分かったのこの子?


「実はね、この子人の心も読めるみたいで、私と対象がこの子の近くにいれば読み取った相手の感情を共有できてしまうのです!」


 コウコツは自慢げにそう言う。


「へえ、すごい。」


「だからイロハ!これからは私の前で嘘つけないよ!」


「ええ……それはめんどくさ。」


「嘘ついてないけど、嘘ついてないけど直球すぎない!?」


「だって心読まれるんでしょ?だったら適当なこと言っても意味ないじゃない。」


 アホみたいな会話をコウコツと繰り広げていたら、向こうは向こうでこのクラスの男性陣の話をしているようだった。


「ねえねえ、誰かカッコイイ!って感じの人居なかったんですか?」


 カナメの問いに、三人は薄い反応をする。


「リンガルって方、顔だけならよろしかったですわよね?」


 そう言うオトギノにカナメは嫌そうな顔をした。


「ええ、でも、なんか怖かったじゃないですか。」


 うなだれる白玉(カナメ)にレータも答える。


「私たちのグループですが、ゴシチゴさんがかっこよかったですよ。」


「いや、あいつはどう見たって軽い男だぞ。ただ、神書の能力的に仲良くなって損はないかもな。」


「コウコツは私たちとも絵巻たちとも違うグループでしたよね?誰か良さそうな人いました?」


「うーん、なんかすごく可愛い子はいたよ?」


「顔だけを見るのであれば、わたくし達の先生も良いのでは?」


 オトギノはカナメに投げかける。すると、慌ててコウコツが口を開いた。


「神柴先生はさ!ほら、先生じゃん?(イロハと先生がいい感じなら邪魔しちゃいけない!)」


 青春みたいな会話が繰り広げられ、私はそれを呆然と眺めていた。達観しているとかそいういう話ではなく、純粋に眠いからだ。でも、クラスの女子は今のとこ問題児みたいな子も(たぶん)居ないし、これからの学園生活に多少の安心感は生まれたかもしれない。いくら向こうに帰るまでの仮拠点はいえ、居心地がいいことに越したことはない。そんなことを思っていると、疲れが襲ってきて……もう……。


~時は遡って、一年四組の試し開きにて~


「おいてめえら、てめえらには選択肢をやろう。」


 そう言うと、男子生徒は空中に浮かぶ無数の剣から、一本を自身の右手へと呼び寄せた。


「なんだいいきなり、入学初日から物騒じゃない」


 ズバッ!!


「!?」


 眼鏡の男子生徒が剣を持った生徒に反論しようとした瞬間、剣の一本が眼鏡の生徒のほほをかすめた。


「内容は仮想空間(ここ)を出てからどうするかだ。死ぬか、俺に服従するか……選べ。」


ジュラシックアイランド

能力:仮想世界に反映できるよう改良させた神書の一種。仮想世界に様々な古代生物を具現することができる。

モデル:ジュラシックパーク

シリーズ化まで果たした映画が有名であるが、原作はマイケル・クライトンによって書かれた小説である。蘇った恐竜たちによるパニックサスペンスであり、作中の背景には生命倫理やテクノロジーの進歩に対する哲学的テーマが存在する。


~古代の遺伝子の研究の末、辿り着いた島の果て~

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