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第6話 三人の能力

 私とオトギノとリンガルの三人は、カナメの悲鳴を察知しカナメを助けるため森の中を走っていた。このリンガルという子はほんとに耳がいいようで、カナメの悲鳴からその方向を確信したらしい。


オトギノ「確か、テラ先生がゲームを用意したと言ってましたわよね?」


リンガル「ああ、だが、新入生向けのゲームであんな悲鳴なんて聞こえるか?」


いろは「とりあえず行ってみよう。あ、そうだ、雉くん!私を掴んで飛べる?」


 さっき召喚した雉は普通の雉の何倍もの大きさがある。私の体と同じくらいだ。頼めば飛んで周りの状況が分かるかもしれない!


コクッコクッ


 雉は嬉しそうに頷いてくれた。よし!これでひとっ飛びだ!


……


「おい、あいつは何をやっているんだ?」


「なんでしょうか。すごーくゆっくり上昇してますわ。」


 遅おい!!めっちゃ遅い!上昇速度が亀並みなんですけど!?雉くん、いや、雉くんが悪い訳じゃないんだけど、それを頼んだ私が悪いんだけど……。


「雉遅いわ!!!」


 私はそう怒鳴り再び地面に足をつけた。雉は物凄く申し訳なさそうに私の真上をぐるぐる飛んでいる。


「酷いパワハラを見ましたわ。」


 オトギノにそう呟かれたけど気にしない。それよりもカナメどこ?


「おい、この先になんかデカいのがいるぞ!」


 リンガルの声で、その先の岩のような影が何かの生命体であることに気が付く。森の木の高さにに見合わない、普通なら恐怖で慄くであろうその大きさに、私たちは……


リ「神書の使い方は分かった!とっととぶっ殺す!」


オ「わたくし戦闘系の能力ではありませんが、できる限り討伐に協力しますわ。」


い「カナメ!あいつを殺して助けるからね!」


 だいぶ肝が据わっている様子だった。


 森が開け、恐らく怪物が踏み倒して作ったであろう広い空間に出る。するとそこにいたのは、木々を遥かに凌ぐ大きな恐竜だった。


「アグアアア!!!」


「なにこいつ!?」


 あまりの大きさに心の声が漏れる。大きな牙の間から大粒のよだれをたらした二足歩行の肉食竜。あんまり恐竜に詳しくはないけど、こいつが危険なことは間違いない。恐竜は対面したそばからこちらに睨みを利かせ、今にも襲おうと言わんばかりの威嚇態勢をとっていた。


「おう、初討伐には持ってこいの獲物じゃねえか!」


「白頭がいませんが……あのとかげの腹の中でしょうか。」


「とかげのじゃねえ!恐竜だ!」


 リンガルはオトギノの発言を訂正する。正直とかげか恐竜かなんてどうでもいいんだけど、男子にとっては大事なことなのかもしれない。リンガルは全身を隠していた茶色いマントをなびかせる。すると、足元がなにやらギラギラと光っていて、リンガルはそんな足で空中を思いきり蹴飛ばした。


「銀の靴は俺を運ぶ!」


 するとリンガルは恐竜の頭上まで舞い上がり、すかさず杖を振りかざした。


「ブリキの木こり、武器だけ借りるぜ。」


 リンガルの杖がみるみる形を変え、巨大な斧へと変化する。するとリンガルはそれを恐竜に振り下ろす。


ドカンッ!!


「あがああああ!!!!」


 見事命中!痛そう……けど、恐竜は頭をふらつかせてはいるものの、その頭からは血が出ていない。恐竜の頭は固いとみた。だったら、足元を奪ってあとからじっくり嬲るべきだ。


「御三家召喚!犬!」


「わんわん!!」


「わんちゃん!私と一緒に恐竜の右足狙うよ!」


「わん!」


 犬とはいえ鬼を退治したうちの一匹!その牙は刀にも匹敵するはず!


ズバッ!!


「あぐっあがっ!」


 わんちゃんと私の連携で恐竜の足から血を吹き出させることに成功!やっぱり、使い方次第では御三家は頼りになるんだ。雉ちゃんのことは反省しなければ。

 そんなことを思っているうちに、恐竜は頭への打撃と足への斬撃により倒れ込む。ぴよぴよ状態の恐竜の頭に、こんどはオトギノがやってきた。オトギノ、いったい何をするつもりなの?


「人間以外に効くのか試したかったところですので。」


ひらっ、ぎゅう……


 オトギノは十二単をはだけさせ胸を露出し、恐竜の頭に押し付けた。何してんのオトギノ!?さすがにB地点が見える程大胆にはやってないけど、だけど何してんのあんた!?


「口を閉じなさい。」


「がう……。」


 恐竜に胸を押し付けるっていう、なんかちょっとニッチな色気を催す絵面だけど、ちゃんと恐竜には効いてるっぽい。でも……


「なんでわざわざ肌出してんだ?」


 それリンガルが聞いちゃうんだ。オトギノは静かに答えた。


「わたくしの美幌(びほう)に惚れれば、頼み事を聞いてくれます。わたくしの体に惚れれば、わたくしに服従いたします。」


 そう言うと、オトギノは恐竜の肌をペロペロと舐め始めた。恐竜にたいしてのオトギノの妖艶な様子は、女の私でも惚れそうになる……。


「わたくしに触れればどんな無理難題でも遂行しようとし、体液に触れれば生命の本能に背く命題にも従いだす……もし仮に、わたくしと交われば、細胞の全てがわたくしの思うがまま……。恐竜、呼吸をやめなさい。」


 オトギノは恐竜を艶めかしく見つめる。すると、恐竜は鼻息一つ聞こえないほど静かになる。


「まさか、これで恐竜を殺せるのか?」


 リンガルの問いにオトギノはうっすらと笑みを浮かべてこくりと頷いた。


「ですが、窒息死までは時間がかかりますわ。ですのでその間、いろはが腹か頭を切ってしまった方が早いと思いますわ。」


 オトギノはそんなことを言うけど、恐竜はもう微動だにしていない。とどめを刺す理由すら無いかもしれない。すごい能力とびっくりするけど、それと同時にオトギノへの恐怖心も芽生えた。大型の爬虫類に効くのであれば、人間なんてオトギノのキス一つで完全に殺せてしまう。彼女は、一番的に回しちゃいけない相手かもしれない。お人形みたいな可愛い顔をして、恐ろしい子……。


オズの旅

能力:カカシや木こり、ライオンなどの召喚・武器化を行える。また、風に乗り移動することができる銀の靴が具現する。

モデル:オズの魔法使い

ライマン・フランク・ボームが子供たちに語って聞かせた物語を元に書いたファンタジー作品。本は子供たちの心を捉え、空前の人気作品となり、“アメリカで最も優れ、最も愛されたおとぎ話”とまで言われるようになった。


~知恵、勇気、心、帰る場所を求めて異世界を巡るそれは、魔法使いを探す旅。~

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