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第5話 私が手にした神書

「はあ、まだお腹痛い……。なにあの子怖い……。」


 私の名前はカナメ、今年衆役(エキストラ)の学園に入学したピッチピチの16歳です!え?だれ?いやいや、ほら、語部さんや金髪ちゃんと一緒にいた元気が取り柄の女の子ですよ!今、私は完全にあの金髪ちゃんから下に見られています。だから、こっそり神書の練習をして、神書を使いこなしている様を金髪ちゃんの前で見せて、尊敬の念を抱かせようという作戦なのです!


「ここらへんでいいかな……。」


 さあ、神書を開きますよ!題名(タイトル)は確か……。


 ドスンッ!!


「ひっ!?なに!?」


 ドスンッドスンッ!!


 なに!?なになになになに!?!?!?


「アグアアア!!!」


「ぎゃああああ!!!」


------------------------


「能力を解きましたわ。」


「ありがとうございますオトギノ様。」


「ちょっと乱暴が過ぎましたわ。次はあなたの神書に付き合いますわ。痛いのは嫌ですが、少しくらいなら実験台になってあげてもよろしくてよ?」


 可愛い女の子にそんなこと言われると、こちらもおっさんの部分が見え隠れしてしまう。なんか、異世界(こっち)に来てから男の人より女の子の可愛さに目覚めている節がある。もしかして、私は記憶が飛んでJKに乗り移ったおっさんなのだろうか。

 そんなことはいいとして、まずは神書だ。


「そういえば、あなた大図書館ではなく神柴先生から神書を貰っていましたよね。」


「うんまあ、いろいろ事情があったらしくてね。」


「事情……ですか。」


 オトギノはなんだか不思議そうな顔で私を見る。そんなオトギノをよそに私は本を開いた。


「桃から生まれた少女が、家来を引き連れ鬼退治に行く物語。」


題名(タイトル):桃子の鬼退治】


 すると、オトギノと同じように光が全身を覆い始めた。


「私も変身系!?」


 光が消えた後、服装の変化にはいち早く気付いた。水色に白のラインが入った羽織を身に着け、額には鉢巻き、もともとボブだった髪は腰まで伸びている。そこは一本結になっていたためあまり気になるところでは無かったのだが……


「うっ、ブラが……なにこれ、なんか締め付けられる感じがする……。」


「もともと無い胸をどうやって締め付けているのかは分かりませんが、あなたの服装から見ておそらくさらしになったのだと思いますわ。」


「なんだとこの野郎。」


「それよりも装備を見なさい。その腰巾着に何が入っているのかは分かりませんが、その長いのは明らかに刀ですわよね?」


 そう言われ、確かに腰のあたりから重心が左に寄っていることに気付く。左腰を見てみると、立派な刀が帯刀されていた。


「これ……。」


「刀、それがあなたの能力ということのようですね。」


 まてよ、桃子の鬼退治の能力ってことは……


「ねえ、オトギノ。」


「なんですの?」


「桃子の鬼退治って知ってる?」


「その本の題名(タイトル)ですか?内容は存じ上げませんが……。」


 よし!じゃあオトギノにちょっと見せつけてやる!


「たぶんね、こういうことができるんだよ!いでよ!雉!」


…………おや?


「なにができるのですか?」


「あ、あれ?いでよ!猿!犬!」


…………


「なんでええ。」


「神書に能力の詳細も書いているようですわ。大人しくそれを読みましょう。」


 おかしい、誰もが知る日本の童話“桃子の鬼退治”。猿、犬、雉を家来にして鬼退治に行く話のはずだ。神柴さんの“日本初紀”、オトギノの“かぐや様を帰らせたい”を鑑みるに、その神書の題名(タイトル)にちなんだ能力が使えるはずだ。なにか、なにかがおかしい……!


結局、呼び出し方が違うだけだった。


「御三家召喚!雉!」


 神書を読んだ私に死角はない!見事、雉を召喚することに成功した!


「ねね!オトギノ見て!雉だよ雉!」


「鳥一匹にあなたは何をそんなにはしゃいでいるんですの?」


 コウコツがはしゃいでいたときはあんまり分からなかったけど、今の私は完全にあのときのコウコツだ。確かに、神書で能力を使うのは楽しいしワクワクするかもしれない。でも、心なしかオトギノは少し浮かない顔をしている。いや、もともとあんな顔だったか。


「オトギノは能力の発動もういいの?」


「私はもう十分ですわ。」


「おい!てめえら大丈夫か!?」


 突然、フード付きの茶色いマントを羽織り、大きな杖を持ったリンガルが森の中から飛び出してきた。


「なによ?あんたはあんたでやるって言ってたのに!」


「聞こえなかったのか?あの白髪(しろかみ)の悲鳴がよ!」


「え!?」


 私は顔色を変えオトギノの方を向く。オトギノの表情は分かりづらいけど、突然のことに焦っているようだった。オトギノは咳ばらいをし口を開く。


「ですが、ここは仮想空間。仮に何かに襲われたとしても現実は無事なはずでしてよ。」


「そうは言うが、ここまでリアルに再現されたとなると、死にたくなるような痛みを感じたりとかあるんじゃねえのか?」


 そんなオトギノにリンガルはすぐに返答する。


「やだあああ!!助けて!!」


「ほら!また聞こえた!」


 今度は私もオトギノもはっきり聞こえた。リンガル、態度は気に食わないやつだけど、こいつの今の言動は至極真っ当だ。


「苦しんでるなら、カナメを助けに行かなきゃ!」


------------------------


 こんにちは、毎度おなじみテラでございます。仮想空間“フェアリーウッズ”にて、三人は何かの脅威を察知し、カナメを助けようと動き出したようです。これは後日談となるのですが……申し訳ございません。私の手違いで、ゲームの難易度が初心者向けにはなっていなかったみたいで……


フェアリーウッズ

環境:広大な森。話す動物や妖精などの不思議な生物が生息し、時折彼らが織りなす物語は多くの人々に語り継がれる。

モデル:フェアリーテイル

ドイツで発生した空想物語の総称を、英語圏ではフェアリーテイルと呼ぶ。フェアリーテイルでは動物が話をしたり、魔女や魔法使いなどによる魔法が活躍するなど、現在のファンタジーでも見られる要素が数多く語り継がれている。


~この鬱蒼と茂る森の中で、数々の物語が生まれたのでした。~

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