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第4話 仮想の森

~大図書館の第四浮島にて~


 私たちは神書を持ったまま、テラさんの案内のもと階段を上って第四浮島までやってきた。本来なら一瞬でここまでこれる装置もあるらしいんだけど、今回は浮島がどういうものなのかというのを実感してもらうために階段なんだとか。

 地上から見ると小さく見えていたけど、いざ中に入ってみると教室一つ分くらいの大きさはある。すごく広い。柵が付いていて落下対策も完璧だ。そして気になるのは、この浮島に何冊かの巨大な本があることだ。私よりも大きい本が横たわっている。コウコツと私で何だあれと驚いていると、テラさんが話し始めた。


「ここにある巨大な本は、開いた人たちを仮想空間へと連れて行ってくれます。今回は四人一組でこの本を使用するので、指示どおりに本の前に立って下さい!まずはコウコツさん、……。」


「あ、呼ばれた。じゃあ行ってくるね!」


 コウコツはそう言うと、神書を大事そうに抱きかかえテラさんの方に向かっていった。


「語部さん、リンガルさん、オトギノさん、カナメさん。こっちの本にお願いします!」


 とうとう私の名前も呼ばれ、指定された巨大な本の前まで足を運ぶ。


「フェアリーウッズ?」


 私たち四人は、それぞれ訝し気な表情でまだ開いていない本の前に立った。ただ一人を除いては……


「なんですかこれ!?すっごく面白そうですね!」


 制服の上からも分かる大きな胸を揺らしながら、本の表紙を興味津々に見つめる少女。小麦色の肌とは対照的な透き通るような白い髪の毛の少女はとなりにいたオトギノに元気に話しかけていた。


「これから楽しみですね!仮想空間って言ってましたよね!」


「たぶん、楽しみなのはこのグループであなただけですわ。」


 オトギノはそんな少女を軽くあしらう。実際、緊張からなのかそういう性格だからなのか、オトギノもリンガルと呼ばれていた男の子も落ち着いた様子で本の表紙を見ていた。


「それでは行きますよ!オープン!」


 テラさんがそう言い表紙の端を叩くと、本がひとりでに話し始めた。


「~この鬱蒼と茂る森林の中で、数々の物語が生まれたのでした。~」


 そして、本のページがパラパラとめくれ、私たちの意識はそれに吸い込まれるようにフェードアウトしていった。


「ここは……」


 気が付くと、私たちは森林の中に居た。


「なるほど、仮想空間とは言っていましたが、現実を忠実に再現しているようですわ。どうやら痛みも感じるようですし。」


 オトギノは冷静に話をする。


「自分の頬でもつねったの?」


「いえ、そこに寝転んでいた白頭を蹴飛ばしたら苦しんでらしたので。」


 オトギノが指さした方向を見ると、腹を抱えてうなだれる少女の姿があった。


「うう、酷いよ金髪ちゃん……。」


 オトギノ、やることがえげつない。


[みなさん!聞こえますか?テラでございます!]


 すると、どこからともなくテラさんの声が聞こえた。


[今、皆さんの脳内に直接語り掛けています!これから、皆さんには神書を実際に使ってもらいます!仮想空間なので多少はめを外しても構いませんが、戦闘が苦手な方もいるのでそこは十分に注意下くださいね!それぞれの本ごとにちょっとしたゲームを用意しましたので、能力を使ってご自由に遊んでください!]


 テラさんの声が消え、辺りは静寂に支配される。


「とのことですが、皆さんこれからどうされますの?」


 オトギノがそう声を掛けた。すると、今まで無言を貫いていた男子生徒が口を開いた。


「くだらねえ、とにかく、この時間は自分の能力を確認すりゃいいだけの話だろ。俺は適当にやるぞ。」


「その前に、ご挨拶くらいするのが礼儀では?」


「……俺の名はリンガル。」


 そう言うと、リンガルと名乗った男子生徒は森の中へと姿を消した。リンガルの態度は草原のように広い心を持った私でも流石にムカつくものがあり、思わず口に出てしまった。


「なんなのあの子、もっと仲良くすればいいのに!」


「そうですわね。ですが、個々人で能力の確認と練習をすることには賛成ですわ。それに、いつのまにやらあの白頭も消えてますし。」


 確かに、あのボインちゃんも見当たらない。森のどこかにいってしまったのだろうか。


「とりあえず、このふざけた名前の本を使ってみることにしますわ。」


 ふざけた名前?神書のこと?


「この大罪級の美しさを持つ私に似合う能力であることを祈りますわ。」


 やばい、この子ももしかしたらちょっとおかしい子なのかもしれない。そんな心配をする私をよそに、オトギノは本のページを開く。


「地球に送られた罪人かぐやは、そのわがままぶりを発揮し、人々に苦労をかけるのでした。」


題名(タイトル):かぐや様を帰らせたい】


 すると、オトギノの全身が光に包まれ、その服装や髪型が変化し始めた。その変身した姿は、十二単と豪勢な装飾品に身を包み、綺麗な黒髪を持った美少女だった。いや、もとから美少女だったし顔が変わったわけではないんだけど、さっきまでフランス人形だったものが日本人形に変わったかのような、そんな感じ。


「き、きれい……」


「当たり前ですわ。わたくしの美しさの前に、あなたもひれ伏すがいいですわ。」


 やっぱり、この子可愛いけどやっぱりそういう感じの子だ。ひれ伏せとか言っちゃう感じの子だ。でも、それより何に驚いてしまうかというと……



実際に私はオトギノにひれ伏しているのだ。


「え……なんで?」


「うるさいですわ。口を慎みなさい。」


「んぐっ!んんん!んぐっ!」


 口が言うことを利かない。唇がくっついて離れなくなってしまった。


「なるほど、これがこの神書の能力ということですわね。わたくしの美しさに魅了されたものを操る力、そんなところですわね。」


 っていうか私、能力使われるたびに動けなくされてるんですけど!!


かぐや様を帰らせたい

能力:相手を魅了させることにより服従させることが可能。相手との関係・性交渉の度合いにより、服従の幅が変化する。

モデル:竹取物語

平安時代に成立した作者不明の物語。今日でも多くの小説や漫画、ゲームなどでその題材が取り上げられ、様々な形で親しまれている。日本最古の物語とされ、かな文字で書かれた最初期の物語の一つである。


~地球に送られた罪人かぐやは、そのわがままぶりを発揮し、人々に苦労をかけるのでした。~

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