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第3話 真書の選定

「という訳なんだが、実際に見てもらった方がいろいろわかる部分はあるだろう。」


 神柴さんは神書の説明を一通り終えると。私たちの視線を窓際に移した。空にはなんかよく分からない生き物が飛んでいる。翼の生えたトカゲみたいなおかしな生き物だ。


「おっと、ドラゴンがいる。ここら辺では野生のドラゴンは危険な害獣だから、見かけたら職員に知らせるように。そうだ、あれに向かって今から俺が神書の能力を使う。」


 そっか、異世界だもんね。ちょうどいいところにドラゴンくらいいるよね。そう感心していると、神柴さんは腰から下げていた本を取り出しおもむろにページを開いた。


「その矛で混沌をかき混ぜた時、陸ができ島が生まれ、國が成り始めた。」


 初見さんからしたら、突然ちょっとイタイことを言い始めた人に見えるけど、私はこのルーティンを知っている。ハガキ先生が私に能力を使ったとき、あの時みたいな不思議なことが起こる合図だ。すると、神柴さんの近くの何もない空間が渦巻きだし、そこから金色の矛が現れた。


「これが俺の神書だ。」


題名(タイトル):日本初紀・國造り編】


 神柴さんはそう言うと窓から飛び出す。1年生の教室棟は三階にある。普通に飛び降りたらただでは済まないはずだが、神柴さんが落下することはなかった。金色の矛で空間をかき回すと、その空間が渦巻き、渦の中から赤茶色のドロドロとした物体が流れだしてきた。神柴さんはそれを操り、足場としてドラゴンに近づく。


「すげえ!」


「かっこいい!!」


「何あれ気持ち悪い!」


 教室の生徒からそれぞれの驚嘆の声が漏れる。それもつかの間、神柴さんはあっというまにドラゴンの傍までたどり着き、今までよりも大降りに矛を振り回した。すると、ドラゴンの上空が渦巻き真っ黒い穴が現れる。


「すまない。これも神書の危険性を教えるためだ。」


 すると、その大穴から赤茶色の巨大な物体が出現した。神柴さんの何倍の大きさもあるドラゴン、それのさらに何十倍も大きな物体だ。それは心なしか、人の握り拳のような形をしていた。神柴さんはその巨腕をドラゴン目掛けて振り下ろす。


「あがあああ!!」


 ドラゴンは赤茶色の巨腕に押しつぶされ、そのまま気絶し地面に落ちていった。神柴さんは気絶したドラゴンを確認し、どこかに連絡を取ると、教室に帰って来た。


「このように、たった一冊でも使い方次第ではどこまでも凶悪になるのが神書だ。そのため、選定直後の使用は禁止するし、試し開きも今日のうちにするがその後の乱用も禁止する。細心の注意を払って扱うように。それじゃあ、大図書館へ向かおう。」


~移動中~


「とんでもない威力だったね。神柴先生の神書。」


「うん、拘束されたのがハガキ先生のでほんとによかった。あんな気持ち悪い茶色の流体に押さえつけられてたらと思うと寒気がする。なんかうn」


「いろは、それ以上はだめ、まじでだめ。」


 またしてもコウコツと話しながらクラスの列にならって大図書を目指していた。すると、大きな廊下の大きな扉の前で止まった。


「よしみんな、到着だ。」


 高級感溢れるドアをくぐる。すると、突然現れた壮大な光景に目を疑った。広大な円柱状の空間、そしてその壁には、本がびっしりと敷き詰められている。上を見上げると、浮島のように小さな地面が点在しているようだ。しかし天井は見えない。あまりにも高すぎて、まるで無限に続いてるかのように錯覚してしまうほどの高さだ。


「新入生のみなさん!こんにちは!」


 そんな光景に見とれていると、白くて長い髪が綺麗なお姉さんがやってきた。まるで小動物の尻尾のようにふわふわの髪の毛だ。神柴さんがこの女性の説明を始めた。


「この大図書館の司書を務めるテラさんだ。神書の選定は彼女にも手伝ってもらう。」


「よろしくです。それでは早速、オトギノさんから行ってみましょうか!」


 そう言うと、テラさんは女子生徒の手を引っ張って大図書館の中央に立たせた。オトギノと呼ばれてた女の子、長い金髪に縦巻きと如何にもお嬢様って感じの風貌だけど、顔立ちもお人形みたいな可憐な顔をしている。ただ、ずっと真顔って言うかジト目っていうか、せっかく可愛いのにあんまりいい表情はしていない。

 その子が大図書館の中央、魔法陣のようなものが描かれているその丁度真ん中に立った瞬間、彼女を取り囲む魔法陣が光り始めた。


オトギノ「これは……」


テラ「もう少しそのままでお願いします。ほら、神書が選ばれましたよ。」


 テラさんが指さした方角から、青白く発光する本がひとりでにオトギノのもとまでやってきた。眼前で静止した本を、オトギノは両手で受け取る。


「……なんですの、この題名(タイトル)。」


「それがあなたに選ばれた運命の本ですよ。」


「なるほど……そういうものなら、それでいいですわ。」


 そう言いオトギノのターンは終わった。すごい、喋り方まで高飛車お嬢様のそれだ。顔立ちといい風格といい、一人だけ制服の似合い方ももはやずるい。

 そこからは次々と神書の選定が始まった。


「……なるほど。」


「ええ、なんだこれ!?」


「なんかかっこいいこれ!」


 各々が各々のリアクションをとる。何人かは突っ込みたくなるような風貌・態度の生徒もいて、ちょっとだけこのクラスに興味が湧いたかもしれない。


「いろは!私も選定終わったよ!」


「あれ、いつの間に……で、どんな本なの?」


「それが……題名(タイトル)見ただけじゃよく分からなくて。」


「なにこれ、“不思議な来客”?」


 よく分からない題名(タイトル)に二人して首を傾げる。“桃子の鬼退治”くらい誰でも知っている題名ならまだしも、あんまりピンとこない。


「ま、まあ、次の試し開きで分かるよ。楽しみだね!」


 けど、このときコウコツは知らなかった。まさかこの神書が、彼女の学園生活を前途多難な道へと導くことになるなんて。


「よし、みんな終わったな?そしたら、次は試し開きの時間だからこのまま大図書館の第四浮島に行くぞ。」


 この作品では様々な民話、神話、文学作品や学術書などをテーマにした真書を登場させる予定です。その関係上著作権が怖いのと、テーマを柔軟に解釈できるようあえてもと作品をもじっています(例:桃太郎→桃子の鬼退治)。

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