13.修道女捜索
夜の迷宮は恐ろしい。夜にしかない素材やモンスターを目当てにでもしない限り、滅多なことでは、足を踏み入れない。
・暗闇そのもの。視界の悪さ。
・凶暴な夜行性のモンスター
・そして明かりを目当てにやってくるモンスター
デメリットを上げればキリがない。1日で行けないような上層を目指すにしても、夜は安全圏で野営してやり過ごすことが多い。
メリットもなくはない。夜行性の凶暴なモンスターが跋扈する代わり、日中動き回っていたモンスターは棲家に帰り睡眠をとる。
モンスター自体は少なくなかったりする。
夜にしか取れないモンスターや植物の素材も高値で取引されるため、それもメリットとも言えなくはない。
それも、命あってのものぐさだが。
間違っても、新人冒険者がおいそれと挑んで良いものじゃない。
先頭を歩くのはアルム。ライトの魔石が入ったランプを持って道を照らしている。
俺とディーネは離れすぎずといった距離で、彼の後を付いてる。ランプで片手の塞がったアルムを、いつでも助けられるように、警戒しつつだ。
暗い道をゆっくりと歩きながら、アルムが口を開く。
「そのシスター、1人だけなら行けて4層って話だったよな?」
「あぁ、探しに来たシスターさんがそう言ってたな」
「今日、僕らが探索してた3層にはいないと見て良いだろ。4層を隅まで探してみるか……」
「いや、だとしたら5層にいる気がする。無理矢理とはいえ迷宮に入り込んだなら、限界を目指すってのが、カタリナのあり方だと思う」
あくまで、数回関わった中での勘だが。
彼女は、きっと嬉々として上は目指す。
だが、頭が悪いわけではない、自分の実力を分かって、協会主体の探索には呼ばれないだろうと、諦めてるくらいだ。
今回の目的としては。
待ち焦がれた迷宮探索を楽しむこと。
ついでに実力を示したいといったところか。周りの思う実力以上の階層を目指すに違いない。
決して、このチャンスに迷宮の頂上へ、という考えじゃないはず。だから自分の実力の少し上というところが妥当。
「ーー4層をざっと探してから、5層に上がるか……ある程度は道は分かってる」
「流石、アル! 頼もしいね」
「お前が原因だがな。いつ上の層に行きたがるか分かったもんじゃないから、準備するこっちの身にもなってくれ」
方針として、モンスターは徹底して避けていく。
やむを得ない場合に限り、戦闘を行い、先を目指す。
途中、すれ違う冒険者にカタリナのことを尋ねることも欠かさない。僅かでも手がかりが欲しい、迷宮にいてもいなくてもそれは必要だった。
「ーーそう言えば、1人でぴょんぴょん飛び跳ねてた修道女がいたな。背はこんくらい、スッゲー楽しそうにしてたっけか、なぁ?」
「いたなそんなのも。たしか3層だったか?」
「今思えば妙だったな。俺たちのルートはかなり順路から外れてたはずだが……」
奥に行くにつれ、有益な情報が増えてきた。
段々と彼女の行動が見えてきた。朝早く、人目のつかないタイミングで迷宮への侵入を図ったのだろう。
朝早くから上層に向かって、夜遅くに探索を終えて帰るようなパーティー、彼らが見かけていることから明らかだ。
「なっ……やっぱりか。皆さんありがとうございます」
「嫌な予想が当たっちまったなグレイ。どうする? 一旦協会の人らに伝えに戻るか?」
アルムの提案に乗るのもありだ。
仮にカタリナを見つけたとて、状況によっては俺たちじゃ力不足になってしまうかもしれない。
だが……、これまた帰ることで手遅れって事もある。
「いや、俺らで見つけて連れ帰ろう。手遅れになる前に」
「それもそうだな。探索を続けるぞ」
4層に着くと 遠くからジッと見られてるかのような。周囲を見渡すと森の中で光がいくつか輝いている。
あれは、目か? 俺たちという獲物を狙うかの如く、気を伺ってるようだった。
「ちっ、『森林梟』か。いいか、森の中には踏み込むな。迷宮の道だけを歩け、絶対だ。あいつらはテリトリーに踏み込んだ奴を狙ってくる」
***
【モンスター】
名前: 森林梟
レベル: 6
【モンスター】
名前: 森林梟
レベル: 5
【モンスター】
名前: 森林梟
レベル: 7
***
注視したステータスを見ても、間違いない。こいつらは森林梟というらしいが、いかんせん数が多い。
それにフクロウか。いかにも夜行性のモンスターだ。それにレベルも高いのがちらほらいる。まとめて相手するのは困難だろう。
「強いの?」
「一体一体はそうでもないが……狡猾だ。的確に、複数で襲ってくるって話」
「この暗闇のなか……嫌ね、今日はパスしましょ」
「助かるが、妙に聞き分けがいいな。いつもそうして欲しんだが」
「あー、人の命がかかってるからね。私も真面目になるって」
「はぁ、そうかよ」
暫く探索を続けて分かったが、この層は静かなものだった。広範囲に森林梟とやらが跋扈してるものの、積極的に襲ってくることはなく。
道中、寝ぼけた丸狸を数度見かけたが、そいつらは無視した。
日中に探索した場所はほどほどに、その他をじっくり探索するも、カタリナの姿はなかった。そのまま、次の層への階段までたどり着いてしまう。
すれ違う冒険者もいなくなり、新しい手掛かりもない。が、4層は隈なく探したといえる。
彼女はここにはいないだろうと判断して、俺たちは先に進む。
*****
5層に足を踏み入れた瞬間、大型の獣と思わしき咆哮がフロア全体に木霊した。
俺たち3人は誰一人、迷うことなく駆け足で、音の出所へと向かう。
目前には大きな扉が……。そこは5層のボス部屋だった。
「ーー魔法《ホーリー・アロー》」
扉の先から、聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。
短いですが、更新です。
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