表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

不穏な気配がするのですが?

ちょっといいだろうか?


最近新たに俺を悩ませる事態が起きている。


「・・・おい。いつになったら帰るんだ?」


紗枝のルーティーンに"お泊まり"という新たな行動が追加された。何処に?俺ん家だよ!!


「ん?明日は出勤だから明日になったら会社から自宅に帰るよぉ」


いや、お前・・・。

さも当然のように返してきたが、ちょっとどうなんだそれ。


そもそも恋人でもないのに何故こうも頻繁に家に突撃して来る?

あと私物を勝手に持ち込んで置いて帰るの止めろ!

しかも定位置に配置するの止めろ!!


・・・仮にこれが普通の男女の付き合いであれば、俺にとって喜ばしい展開なのかもしれない。


無邪気で可愛い後輩に慕われて強引に距離を詰められ戸惑いながらも強く抵抗出来ない。小悪魔女子に振り回されながらも悪い気はしない男主人公・・・「参ったなぁ〜・・・アッハ!」


迫られてる男は表情は困り顔でも内心ウハウハだ!


・・・だがな?現在俺はそんな浮ついた心持ちは一欠片も抱いていない。


「・・・今すぐ帰れ。そして二度とこの家の敷居を跨ぐな寄生虫!」


俺は紗枝を養う為に日々ストレスを抱えつつ働いているわけではない。そもそも当然の権利の如く自分の衣食住の面倒を俺に押し付けてくんじゃねぇ!いい加減、恋愛勝負のスタートラインにすら立っていない事実に気付いて欲しい。


紗枝お前実は本気で勝負する気ないだろ?


「まぁまぁ〜そうやって苛々するのアトラーニの悪い癖だよ?給料日が来たら借りた生活費はちゃんと返すってばぁ〜」


「それは人として当然だ!そして今はそんな話をしてるんじゃない。もうここに来るなって言ってるんだ。お前いくら中身()()でも一応女だろうが!恋人でもない男の部屋に軽々しく泊まるな!」


あとな、お前のその返す返す詐欺なんとかならないのか?

このやり取り何度目だと思ってるんだ?


二度あることは三度あるというが、お前は既に限界MAXを軽く上回っている。思い出せ!人として恥じろ!!


「やっだぁ〜彰くん?もしかして恥ずかしがってる?照れ隠しでそんな態度とってる?たまにならギャップ萌えで可愛いと思ってもらえるかもしれないけど、私そんな簡単な女じゃないよ?そもそもモブ顔でそんな態度とられてもなぁ〜・・・滾らない!」


えーーーーーーーっと。


すみません。

誰か暗殺業者を紹介して下さい。


もう限界を突破しそうです。

いや、すでに超えてました。

・・・もう勘弁して下さい!


「そんな事よりさぁ。最近変わった事ない?」


「なんだ突然。お前の厚かましさがレベルアップしているとやっと気付いたか?それとも何かやらかしたのか?」


疑心暗鬼にそう返したら珍しく睨み返された。

なんだ、俺が悪いのか?日頃の行いを省みろ。


疑われて当然だぞ!


「なんか、ここに来る度に誰かに後をつけられてる気配するんだよねぇ。ほら、私可愛いから、よくストーカーされるのよ。だから人の気配に結構敏感なんだよねぇ〜。前によく物が失くなるって話たでしょ?」


「・・・気配が分かるって言ったが、それは前世の能力に近い特技か?」


「その言い方は身に覚えがあるって事だね?そっ!魔法とかスキルみたいなファンタジーなものは一切使えないんだけど特殊技能みたいなもんは不思議とこっちでも使えるんだよねー?」


身に覚え?あるかないかと問われれば、あるんだよ。

物心ついて前世の記憶をぼんやり思い出した頃から。


あ、羨ましいとか思っただろ?しかし俺は全く嬉しくない。


「・・・ん?もしかして彰、実は超人ハイスペックを、その平凡な容姿で隠してるのでは?」


「平々凡々な容姿で悪かったな。俺は極力目立たず生きて行きたいんだ。目立ちたがりなお前と違ってな!」


しかし不味いな。

紗枝の気のせいでなければ俺と紗枝との関係を誤解されるだろう。


ストーカー相手だろうが通りすがりの通行人だろうが、これだけはハッキリと言っておがなければ。


"コイツだけはマジでない"・・・と。


「冗談は置いといて、私が気付いたのに彰が気付かなかったってことは相手の目的が私じゃなくて彰って可能性があるんだけど身に覚えは?」


仕事の疲労がまだ抜けないからなのか、それとも紗枝が柄にもなく鋭い指摘を口にしたからなのか、物凄い違和感だな。


・・・なんだか、既視感を覚えるような・・・。


『うるせぇ!俺はなんとしても姫様と結婚する!!俺のマイリトルハニーとな!!』


おかしいな。

なんで今、あの時のメデオスの台詞を思い出したんだ?


ああ"ストーカー"か。


「ちょっとぉ〜?人の話聞いてる?おーい!」


「少し話が逸れるが、一つ聞いていいか?」


今まで自分の事で手一杯で深く考えた事なかったんだ。

そういえば今まで一度も尋ねた事がなかったな。


「人の質問には答えないで、何よ?」


当時は疑問に思わなかったが改めて思い返すと変なんだよな。


「トキウスを見つけた時、メデオスが姫様の話をしていたけど実際姫様と会った事はないよな?」


貴族のアトラーニでさえ姫様の姿を見たのは一度だけだったからな。

平民だったメデオスが簡単に王女と話せるわけがない。


「いつ姫様を好きになったんだ?」


・・・王女に会えるはずがないんだ。


おい・・・アトラーニよ。前世の俺!!

これはもっと早い段階で気付くべきでは!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ