お呼びじゃないです
「ねぇ紗枝ちゃん!今日この後飲みに行かない?」
そういえば最近全然外に飲み行ってないなぁ?
アトラーニと勝負を始める前はよく飲みに誘われて行ってたけど最近週末はアイツの家でご飯食べてたからなぁ。
だってアトラーニのご飯めっちゃ美味いんだもん。
「ごめんなさーい!今月も金欠なんでやめておきます」
「何言ってんの?そんなの俺達で出すからさぁ?」
う〜ん・・・でもなぁ?
最近主任の当たりもキツくなって来たし、お局ババアの妬みも酷くなってるんだよね。
あ、別に私は気にはしてないんだけどさ?
どうも私、相手の精神をへし折る才能を持っているらしいからもっと周りに気を遣ってあげなきゃいけないみたいなんだよね。
誰にそんな事言われたかって?
ムフ!幼馴染の小嶋ちゃん!!
童顔黒髪ストレートが艶っつやの無口でクールでカッコイイ最高の女の子なんだよ?
畜生!
私が男に生まれてたら罵倒されつつ、あの御御足で踏まれてみたかった!!きっと最高の気分を味わえたに違いない!
いや、今でも頼めばして貰えるけど、やっぱり性別が違うと感覚が変わるんだよね!分かるかなぁ?男子諸君!!ああ〜また男の身体に戻ってあの感覚を味わいたい〜!
「紗枝ちゃん?どうしたの?」
「ハッ!いけない・・・妄想が最高過ぎて意識が飛んでた・・・じゃあ他の女性社員も行くなら喜んで!」
「そう?じゃあ鈴木さんも一緒にどう?」
マイナス30点。
じゃあってなんだよ、じゃあって・・・。
たとえ好みであろうがなかろうが誘う相手を不快にさせんじゃねぇよ。
私を見習え私を!
どんなにタイプの男じゃなくてもいつも最高の笑顔で出迎えてやってんだろうが。まぁその後機嫌が悪くなるのはお前らのなってない態度や発言の所為だから仕方ないけどな?
気に入った女一人落とすのに、手を抜いてんじゃねぇぞゴラ!っていけないわ。
いま私、完全にメデオスに意識持ってかれてたわ。
「・・・構いませんよ。今日は、特に予定もありませんので」
「本当!?じゃ、俺と真鍋と四人でいつものとこ行こうぜ!」
ほらぁ・・・鈴木さん断り切れずに頷いちゃったじゃん?
ここで断ったら私も行かないから後々面倒になるって思われたじゃん?
マジ空気読めよコイツ。
「今日は俺達で奢るから二人ともじゃんじゃん頼んじゃって!帰りもタクシーで送るからさぁ」
なんていうか・・・元々自分も男だったってのもあるからか相手の男の考えてる事が分かるんだよなぁ〜・・・はぁ。
「木本さん〜駄目ですよぉ?鈴木さんお酒強くないんですから、無理はさせないで下さいね?」
「まさかぁ〜無理なんてさせないよ!ほら、好きなの頼んで!」
私?そりゃ勿論酒に酔った覚えなんて今まで一度もないね?
アトラーニは知ってるけどね?あ、違った彰も強いんだよね。
「それにしても最近の主任、酷いと思わねぇ?前もそこそこパワハラ気味だとは思ってたけど、こんな酷くはなかったろ?」
「そうだよな?今までこんなに仕事が遅れる事なかったし、この前みたいに皆の前であからさまに南雲さんを怒鳴ったりしなかったのになぁ」
「そうなんですかぁ?私は怒ってる主任しか知りませんよ?」
「・・・・・・そりゃ〜まぁ、ね?」
なんだろ。
以前はこの居酒屋、そこそこ料理も美味しいと思ってたけど、改めて来ると、そこまででもないなぁ・・・これならアトラーニが作ってくれるおつまみの方が美味しいや。
お酒もアトラーニが濃いめに作ってくれる焼酎割りが最高なんだよねぇ。やっぱり酒はアレぐらい濃くないと!
「私思うんですが、多分今までは全部南雲さんが主任のフォローに入っていたんじゃないでしょうか?」
「ええ?あ〜そう言われてみれば、南雲さんのタスク表いつも任されてる仕事より1項目多かったかも!え?嘘だろ?」
「いやいや、まさかぁ?増えたとしても大した仕事量じゃねぇだろ?だってあの人いつも殆ど定時きっかりで帰ってくじゃん?繁忙期だって滅多に残業しないじゃん?」
ふ〜ん?まぁアトラーニらしいよね?
アイツ無駄を嫌いそうだしな?
前世でトキウスの実を一番に見つけたのもアイツだったしな?
フンッ!要領がよろしいですこと。
「飲みに誘っても滅多に来ないよなぁ?まぁ言うほど誘ってもないけどさぁ。だってあの人暗くね?俺あの人と飲みに行ったとしても、なに話せばいいかわかんねぇよ」
「そういえば、いつの間にか紗枝ちゃんの教育係あの人になってたけど紗枝ちゃん大丈夫?怖い思いしてない?」
「え?怖い?南雲さんがですか?あはははは。それはない」
誰が怖がるか!
私を誰だと思ってんの?剣聖メデオス様だぞコラ!
別に前世でそう呼ばれてた訳じゃないけど剣を持たせたら誰にも負けない!4メートル越えの巨大アークを目の前にしたって躊躇わず飛び込んでいった私を舐めるなよ。
「え、えー?でもあの人、いつも真顔で淡々と仕事するじゃん?話しかけても一言しか返ってこない事が多いし。何考えてるか分かんねぇ所が、不気味」
「確かに、私もあまりお話した事ないですね。なんだか話掛けづらいオーラ出てますよね」
「真島さん。我慢してるなら少しは吐き出した方がいいよ〜?黙っててあげるから」
なんだろ?
さっきから感じるこのデジャブ感。
まぁ確かに現世のアトラーニ南雲彰は以前と違い容姿平凡なそこら辺に幾らでもいそうなモブ顔で目立つタイプではないが、別にブサイクではないと思う。
ぶっちゃけ前のアトラーニの容姿より今の方が好感は持てる。前のいいとこの坊ちゃんで頭脳明晰、剣も強くて女にモテる完全無欠野郎より可愛げがあると思うけど?
「あはは〜!じゃあ南雲さんに見捨てられたら私の教育係お願いしちゃおうかな〜?」
「あははー!ごめんそれは遠慮しとく!愚痴はいつでも聞いてあげるから!」
あと、都合の悪い事は人に押し付けておいて悪口だけ言うアンタらと私のライバルを比べようとも思わねぇや。
アイツの悪口言いたいならまず同じ土俵の上に上がりやがれ。
「そうなんです?じゃあいいです!私現状になんの不満もありませんから〜!」
私を本気で落としたいなら人の揚げ足取ろなんて考えずに真っ向勝負で来いや。まぁ顔面偏差値がアトラーニ以下の時点でアンタらに勝機は全くないけど?
「明日休みだろ?二人共もう一件どう?」
ふむ?
まだそれ程時間も経っていないし、お酒も飲み足りない。
このまま帰るには、ちょっと物足りないな。
よし、決めた!
「いえ、明日は朝から出掛ける用事があるので帰ります。ご馳走様でした!」
「え?あ、そうなの?でも少しくらい・・・」
「皆さんお疲れ様でしたーー!」
飲み直そう。
今すぐアトラーニの家に行って、いつものヤツ作っても〜らおっと!(笑顔)