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こういうのはどうだろう?

五杯目のジョッキがテーブルに置かれた時、俺は半端ヤケクソでメデオスこと真島紗枝に提案した。


「じゃあどちらかに惚れさせるってのはどうだ?先に好きになった方が負け。それで惚れさせた方が相手を振れば勝負がつくだろ?」


メデオスは運動神経は悪くないらしいが今は女性だ。

男の俺とではどうしても身体的差は免れない。

仕事で競うにしても、うちの会社にそんな要素はないし、出世争いだと出来ないこともないが時間がかかり過ぎる。

そして、頭脳戦など持っての他。


コイツは恐ろしく・・・頭が、悪い。


取り柄は可愛らしい、この見た目だけなんだ。


「はぁ?私がお前をぉ?全く可愛くないお前なんか好きになるわけないでしょ?アホかぁ」


大分酔いが回ってるなこの女。

そして相変わらずガサツな奴め。


ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ?

俺もお前に惚れるなんて天地がひっくり返ってもねぇよ。


「そうだな?俺もだ。じゃあ勝負はお前が考えろ。俺はもう知らない」


おい。なんで席を立とうとする俺の邪魔するんだ。

スーツの裾を掴むな皺になるだろうが!


「それでいいから先に帰らないで!と、いうかここ奢りだよね?」


お前この前も人に奢らせておいて今回も払わせるつもりかこの野郎。そのテーブルにうず高く積まれた皿とジョッキはほぼお前一人で作り上げたもんだろうが!消え失せろ!(昔の名残)


「いつ俺が奢ってやると?好意もない女に出す金はない」


「先輩!先輩だよね!?こんなに酔っぱらった後輩を一人で置いてったりしないよね?お金は半分後で返すから〜」


なんで半分なんだよ!寧ろ全部払え。

ほぼお前が飲み食いしたモンだろか!!


涙目で大きな瞳をうるうるさせても俺はお前の本性を知ってるからな。ゴリマッチョ野郎!


「お客様?大丈夫ですか?」


「大丈夫です。お勘定をお願いします」


メデオスの手を払い除け伝票を掴むと慌てて紗枝が後をついて来る。俺は極力そっちを見ないよう店員に伝票を渡した。


「お会計はご一緒で宜しいですか?」


「はい。一緒で」


「わ〜い南雲さーん!ありがとうございまーす!」


成る程、すでに勝負は始まっているってことだな?

どうでもいいが腰に巻きつくの止めろ。暑苦しい。


「ベタベタするな。会社の奴に見られたら誤解される」


「ん、誤解?なにが?」


「俺が新人に手を出してると思われる。言っておくけど、それで軽く見られるのはお前だからな?」


俺の弱みにはならないとちゃんと釘を刺しておく。

だけど、なんだ?コイツ俺の言ったことちゃんと伝わってるのか?なんだ、その心底意味が分からないって顔。


お前、本当無駄に可愛いなこのやろう。


「アトラーニってさぁ、なんてゆーか、馬鹿みたいにいい子ちゃんだよね」


「・・・・あ?」


「あの時だって別に姫様の事好きだった訳じゃないんでしょ?いち兵士のアンタがあの果実を王に渡したってなんの得にもならない。まぁ名誉と金は貰えたかも知れないけど、アンタ貴族だったから、そんなもの貰ったって大した褒美にはならないっしょ?」


お前、ちゃんと状況を掴めてたのか?

そしてお前何言ってんだ。

俺達兵士や騎士は国や王に仕える為にいるんだよ。


私利私欲の為だけに動くのはお前みたいな自己中な人間だけだ馬鹿野郎が。お前の姿が昔と変わらなかったら今すぐあそこの橋の上からぶん投げてやるのに。残念でならない!


「私はスラムの出だから、お貴族様のそういうクッソ真面目なところ大嫌いだったけど、今は世界が変わったせいか不思議とそうは思わないな?でも、そうだなぁ?そんなアンタを屈服させるのも面白そうだな?いいよ!勝負の内容はアトラーニの案で行こう!」


俺はさっきから何も言ってないんだが?

お前何勝手に納得して勝手に決めてるんだ?


まぁ、すんなり決まったならそれでいいけど。


「先に惚れさせた方が勝ちって事で!絶対負けないから!」


「そうかよ。精々頑張れ」


さっさと惚れた演技をして振ってもらおう。

そうすれば俺は本当にこの馬鹿から解放されて自由に暮らす事が出来るんだ。


・・・だってな?

何故か知らんが俺も好きな子と付き合えた事ないんだよ!


全部お前の所為だったんだな?関係ない俺まで巻き込みやがってふざけんな筋肉ゴリマッチョ野郎!


とにかく!適当にこいつの勝負に付き合って俺が負けてしまえば万事上手くいく!その後は移動届けを出そう。


二度とこいつの顔を見なくて済むように。








と、思っていたんだ本当に。


「しょーう!お待たせぇ〜」


貴重な休みの日曜日、俺は何故か近所の公園に座っていた。

待ち合わせ場所に遅れてやって来たのは少しウェーブのかかった柔らかそうな髪を下ろし白のブラウスに短めのフレアスカートを履いた小柄な女の子。


「悪い悪い!支度に時間かかっちゃった!普段しないお洒落をしたもんだからさぁ。女の子って大変なんだよ」


ムカつく。

コイツなんなの?

あのゴリマッチョがどうしたら、こうなんの?


笑顔が途轍もなく可愛いと思うのは顔面の作りが良いから、それ一択だからな!


「さ、行こう!まずなんの勝負から始める?」


可愛く小首を傾げるんじゃねぇよ!

俺は絶対お前なんかに絆されない!!

いや、目的としては間違ってはいないんだが・・・とにかく、俺は何処へ向かっているんだろうか!!(困惑)

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