前世の記憶と恋の駆け引き
「ならアトラーニは、どうしてトキウスの実を取りに行った?別に本気で王様に忠誠を誓ってた訳じゃないっしょ?アトラーニはあの実をどうするつもりだった?」
あ、この感覚久々だわ。
やだなぁ。最近はちょっと薄れてたのに。
いま凄く、メデオス側に引っ張られてるぞ私。
「どうするって・・・俺はただ命じられたままにトキウスを取りに行っただけだ。陛下がどうなろうと構わなかったが、あの阿呆に勝手に褒賞品扱いされた王女が不憫だろ」
そうだよ。
姫様は本来あんな場所にいるべき人じゃなかった。
だからあの日、私はアトラーニを探しに行った。
「私は何度も姫さまと会ってるよ。私は姫様の"影"だったからね?」
「・・・・・・は?」
最近よく考えるんだ。
前世でも今世でもアトラーニだけが何も知らない。
それってやっぱフェアじゃないんじゃないかなぁって。
「メデオスは王女の願いを叶える為にあの場所に行ったってこと」
「そんなの初耳だぞ?」
彰って結構頭の回転早いんだよねぇ。
アトラーニの記憶の影響なのか彰自身が持って生まれた素質なのか。モブ全開な見た目の癖に仕事も家事も料理も完璧だし、まぁ喧嘩は弱そうだけど・・・。
「いや、言ったところで信じないでしょ?それに、目的を話してメデオスの言う通りにするとも思えなかったし?」
「王女の使者だと説明されていたら疑いは持っただろうが、無駄に争って死んだりはしなかったはずだ」
分かってるよ。
・・・だってあれ、わざとだもん。
「・・・紗枝?お前、俺に何か隠してないか?」
「ハハハッ!遅いよアトラーニ!もし私が真実を話したとしても私達が今抱えてる問題は変わらないよ?私達はどちらが勝者かハッキリさせなきゃいけない」
そんな顔しないでよ。
私はメデオスの記憶しかないんだよ。
紗枝は姫様から聞いたアトラーニしか知らないんだから。
まるで・・・"裏切られた"みたいな、傷付いたみたいな顔しないでくれる?
「まさか、お前・・・俺を騙してたのか?」
「やめてよぉ人聞きが悪い。メデオスは騙してたんじゃなくて時間がなくて説明する暇がなかったの。そんで私は隠してたんじゃなくて話さなかっただけ」
これはもう無理かな〜・・・勝負に勝つの。
まぁ薄々、無理ゲーっぽい気はしてたけども実は。
「じゃあ答えろ。アトラーニが手に入れた"トキウス"が俺達が死んだ時、現れた"女神"なのか?」
「んー?違うっしょ?あの人、生を司る女神って言ってたし私達の前に現れたんじゃなくて、メデオス達が女神がいる泉に落ちたんだし?っていうか、それこそがイレギュラー。想定外だったんだよねぇ」
あの日アトラーニがトキウスを見つける事最初から分かってた。
だってトキウスは、アトラーニ以外には見つけられない物だからね。
「私達がこんな状態で再開したのも女神の気まぐれの所為。だから、私達はちゃんと勝負をつけないといけない。そうしないとずーーーっと誰とも恋愛出来ないまま一生を終えてまた勝負しなくちゃいけなくなるんだから」
「それはそうだろうが、真相を知る権利ぐらいあるだろ?前世の死に方が悪かった所為で被害を受けてる身にもなれ!」
"被害"まぁそうか。
私もそう思ってたよ。
だから、アトラーニに会ったらさっさと決着をつけて終わるつもりだったのに。
「・・・そんなに迷惑なの?」
「・・・は?」
絶対に、この勝負には負けられない。
例え勝ち目がなくても私が勝つって決めたんだからそれ以外の結末は認めない!何故って?
それは、私が中心で世界が回っているからよ!!(メデオス調)
「私が相手じゃ不服なのかって聞いてるの。私が恋人になるのがそんなに嫌?」
なによ?
なんでそんな青い顔で眉間を押さえんのよ?
彰って自覚なしかも知れないけど優柔不断だよね。
苦言や文句ばかり口にする癖に意外と面倒見がいいからほっとけなくて結局私の面倒みちゃってるもんね?
「・・・お前、俺の質問に答えるつもりはないんだな」
「この質問に答えたら私も答えたげる」
「・・・本当に、俺の本音を聞きたいか?」
まぁね?私も否定的な答えが返ってくるだろうなと思ってはいたんだよ?前世の因縁もあるし、この勝負だってお互い渋々始めたって自覚はあるからね?でもさあ〜それにしてもさぁ〜?
「お前に女の魅力がないかと問われればそんな事はないと思う。もし、何も知らない状態で出会ったら普通に可愛いと思っただろうな。でも、俺は無理だ・・・」
私、彰のこと結構嫌いじゃないんだよ。
「お前と一緒にいると、どうしてもメデオスの姿が重なって素直に好意を向けられない。お前に恋をするのは難しいと思う」
でも、そういうスマートじゃない所は嫌い。
女の子を振るなら、そこは私本人を好きになれないってバッサリ切れよ!紗枝は嫌いじゃないけどメデオスは駄目とかどうしろっつーんだよ!
ぁあああああああ!
本当アトラーニめんどくさぁあああああ!!




