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後の祭りの転生記  作者: ゆゆゆ
序章
4/8

第三話


目の前の自称神様は、とりあえず鈴丸は今、この状況においての目の前の少年の名称を神様としておくことにして、神様は、『さぁ、僕は自己紹介したんだから、それに対する反応くらいあってもいいよね!』といったことを思ってでもいそうな顔でこちらを見ていた。


(いや、なんだよその顔。緊張感もクソもねーそのツラ。なんで自己紹介の義務は果たしましたみたいな顔してんだよ、誰にだってわかる嘘をあたかも事実みたいな顔で語ってんじゃねーよ。もっと上手い嘘でもあっただろ)


少なくとも、この神様の自己紹介に関して、鈴丸は頭では嘘だと決めつけてはいるが実際には真実か虚偽なのかについて、決めかねていた。


普通に考えるのであれば、常識と照らし合せるのであれば、神様が言った言葉の全てを真実だと信じる様な人間はいないだろう。


断片的に、ですらおよそ信じられる言葉、内容ではない。


先ず、目の前の自称神様が、真に神様である可能性。そんなものに審議をつけることすら馬鹿馬鹿しい。


二つ目に、先程神様は『死人に殺されるとか…』などと言っていた。


神様の自称神様発言に関しては審議する必要すらないほどにデマカセではあるだろうし、二つ目の、この場合の死人とは鈴丸のことであろうが、死人に殺される発言にしたって、意味不明な言動に過ぎない。


冷静に考えるのであれば、考えなかったとしても分かる程には、目の前の自称神様は嘘をついていることになる。


しかし、冷静に考えれば考えるほどに、腑に落ちないことが鈴丸には1つだけあった。


(…こいつは、俺の蹴りを、咄嗟に放ったものとはいえども、俺の理解の及ばないなんらかの方法で俺の蹴りに対応してやがる)


(こいつの与太話については、一切の疑う余地もなく嘘だっつーことは理解できてる。だが、少なくともその一点を考慮に入れるんなら、人畜無害みてぇなツラしてるこいつは、人外の可能性が捨てきれない……)


言ってしまえばそれだけの事だ。


ただ鈴丸は、自らの蹴りに、自らが理解の出来ない何らかの方法で対応しているという、酷く感情的なその一点のために、自称神様の話の全てが与太話だと決めつけられないのである。


鈴丸の先程の後ろ回し蹴りは特段変わることの無い、普通の蹴りであった。

だが、その普通の蹴りではあっても、鈴鳴流決闘術の継承者の蹴りであるということは、世界最高峰の後ろ回し蹴りであったということなのである。


もし対面する相手が、鈴鳴流の使い手ではなかったとしても、例えば世界最強と呼ばれるような空手使いが相手なのであれば対応されること自体に鈴丸もそこで疑問を持つことは無かったであろう。


しかし、相手は武術の心得があるような存在ではない、見た目ただの少年である。


だが、それだけならまだ、鈴丸がここまでの疑問を持つことはなかったであろう。


世界は広い、その広い世界の中には、鈴丸もまだ知らぬような流派があり、自称神様がそれを体得している可能性は零ではないのだからら。


だったとしても、いくら世界は広く、また鈴丸の今までの世界が狭いものだったとしても、鈴丸の蹴りに対し、鈴丸が知覚できない程の方法で対応できるものがいるとは、鈴丸は思えなかった。


人はそれを驕りだと、聞けば笑う者もいるかもしれない。だが、鈴鳴流の継承者が知覚できないということは、即ちこの世界に存在する誰もが知覚できないということと同義なのである。


鈴鳴流決闘術とは、所詮は只の格闘・護身術の類ではあるが、ただ強ければ継承できるものでもない。


五感をはじめとした身体機能の完全把握、そして完全に掌握し、自らの思う通りに身体を動かせなければ継承などできないし。

鈴鳴流は五感以外の、いわゆる第六感などといったオカルト的な内容ですら取り込んで強くなっていった格闘・護身術である。


つまり、鈴丸の五感全て、そして第六感を持ってしても理解の及ばない何らかの方法で、鈴丸の蹴りに対応した自称神様は、鈴丸の中では既に見た目通りの存在ではなくなっていた。


(俺に理解出来ない何らかの技術を持ったこいつは、つまり俺には理解出来ない存在であるってことでもある)


最早鈴丸がいくら考えても無駄である。理理解は出来なかったのだから。


(しゃーないか)


ふぅっ、と、鈴丸はここに来て、自称神様がいきなり現れたその瞬間から発していた威圧感と緊張感を解いた。つまりは臨戦態勢を一旦は解いたということだ。


(こいつも仕掛けてくるつもりはなさそうだし、考えてるだけ無駄ってやつか)


「まぁ、とりあえずは、今ここで殺り合う感じって訳でもねーし。名も名乗ってもらったことだしな、そこまでされちゃ邪険に扱うのも悪ぃ。話し合いくらいはしてやるよ。」


と、先程自分が蹴りを放つ際に倒した椅子を立たせ、そこに座り直す。


油断のできない相手を前に、果たしてそこまでせずとも、立って話せばいいことではあるのだが。


(椅子がふたつあるってことは、きっと俺のために用意してもらったんだろうな)


そこは用意してもらった手前、座らない訳にも行かなった。

鈴丸は案外、礼儀正しく礼は返す男であった。


「いやいやいや、むしろいきなり目の前に出てきて、鈴丸君に失礼なことをしちゃったかもね。先ずは謝罪から入らなきゃいけなかった所だったのかもしれないね。ごめんね?」


本当に申し訳なく思っているような、まったく悪いとは思ってないような声で謝る。


「謝る程の事じゃねーよ。結局反応できなかった俺が悪ぃ。ただ、代わりっていうか、1つ質問してもいいか?」


「あぁ、ひとつと言わず何個でも、聞いてきていいよ。答えれるかはともかく、質問を聞くのくらいは僕にだってできるからね。」


質問を行うということが、鈴丸はあまり好きではなかった。

質問をするということはつまり、自分では分かりませんという事を他人に伝えることになるからだ。


そして、質問に対して返ってきた答えが、どんなにおかしなものだったとしても、質問した側はそれを信じない訳にはいかないのである。


つまり、質問するということは弱味になる。だから鈴丸はあまり質問という行為そのものが好きではなかった。


ただ、どれだけ頭で考えても分からない、鈴丸の常識の範囲外のことが起こってしまった以上は好き嫌いは言ってられない。


だから、鈴丸は今、一番疑問に思っていることを、自称神様に向かって質問した。


「自称神様、あんたは一体、何者だ?なんのためにここにいるんだ。」

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