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後の祭りの転生記  作者: ゆゆゆ
序章
2/8

第一話


鈴鳴鈴丸は、自由について考える。


自由とは、不自由では無いということだ。

つまり、無数の選択肢、それこそ無限にある選択肢の中から自由に選びたいモノを選び、それを積み重ねていける状態の事だ。


ならば、無限にある選択肢の中からたった一つの選択肢を選ばなければならないというのは、ととても難解で、とても不自由だと考えていた。


(どんな選択肢を選べばいいのか分からないという状態は、無数の選択肢の中から唯一の選択肢を選ばなければならないという状態に縛られてるっつー事だ)


少なくとも、思考を重ねなければならないという不自由に縛られている。


その点においては、鈴鳴鈴丸は不自由で、縛られていて、自由だった。


(何も考えなくていい、ただ言われた事を行うだけの人生とは、それほど不自由じゃなくて、案外なにより自由な人生なのかもしれねぇ)


鈴鳴鈴丸、現代の日本においては中学生に当てはまる年代ではあるものの、彼は一切の義務教育を受けることも無く、それまでの人生を過ごしてきた。


なにもそれは、義務である教育を受けない道を自ら選択しただとか、生きている時代が違うとか、そういった理由からではない。


それはひとえに、彼の親の方針であった。


彼はその親の方針のために、出生届と言われる物は役所に届けられてもいない。

元より彼に、教育を受けなければならない義務は発生していなかったというだけである。


それは別に、彼は親に愛されていなかった訳でそうなった訳では無いし、逆に鈴丸が生まれた時、親からは大層に喜ばれたものだ。


なら、鈴鳴家には子供一人育てるほどのお金がなかったとか、そんな話ですらない。むしろ、鈴鳴家は歴史に由緒ある血統であり、鈴鳴家は豪邸であり、その広さは2,000坪はあるとされている程だ。


それはともかく、義務教育を受ける義務がないのであれば、それだけ鈴丸に自由な時間があったのではないかとも思えるが、決してそんなことはない。


むしろ、鈴丸の後に生まれてきた彼の妹や弟はしっかりと生まれた際に出生届は役所に届け出されたし、義務教育を受けなければならない義務こそありはしたものの、鈴丸に比べれば自由過ぎるほどに自由だったと言えるだろう。


では何故、鈴丸だけが鈴鳴家の中で不自由でなければならなかったのかという理由。


それは鈴鳴流決闘術と呼ばれる、鈴鳴家に一子相伝の武術が受け継がれてきたからである。


鈴鳴流決闘術。それはこの世界に無数にある格闘・護身術の中でも特別、別格として扱われる武術である。


己の五体のみを武器とし、1体1から1対多数を想定して作られた、古くは紀元前から存在したとされる全局面適応型の格闘術。


つまりは、世界最強として扱われる武術の継承のためだけに、鈴鳴鈴丸には生まれた瞬間から自由はなかったのである。


(結局、この15年間で一度も家からは出ることなんてなかったっけ)


そして生まれて15年、鈴丸はただの一度も己でなにかの選択を行ったことも無いままに、鈴鳴流決闘術の継承を終えた。


鈴鳴流決闘術、数ある格闘・護身術の中でも最強とされる武術の継承のための試練は、たった一つである。


その試練とは、親殺し。一子相伝である以上は避けられぬことではあるが、この世に鈴鳴流決闘術を継承する者は2人もいらないという事だ。


鈴丸が自らの親を殺した事は残酷ではあるが、責められたものでは無い。

鈴丸の父親である勇音だって、そうして親殺しを行い鈴鳴流決闘術を継承したし、鈴鳴流の継承者を殺すという事は、鈴鳴流決闘術を継承するに相応しい実力を持つという、これ以上ない証明だからである。


そして齢15歳にして、鈴丸は鈴鳴流決闘術継承者である自らの父親、鈴鳴勇音を殺し、鈴鳴流決闘術を継承した。


(だからこそ、これから先の人生は、これまでの人生よりも面倒臭くて、不自由な人生になるのかもしれねぇな)


面白ぇ、そう呟きながら、鈴丸はこれまでの15年間を、文字通りの約5500日を過ごしてきた家の、自らの父親を殺した際に付着した返り血すらも乾かぬままに、その敷居を超えた。


(こっから先は自由な不自由だ。目の前の選択肢なんて無限とある。これから先の人生は自分で決めていかなくちゃならねぇ)


鈴鳴鈴丸は、これから始まる、ここから無数の選択肢を積み立てていき形作る自らの人生に様々な夢を描きながら、その足を進める。


そして、意気揚々とまだ見ぬ自らの未来を目指す鈴丸に、たまたま空から降ってきた直径20cm程の隕石が落ちて来て、直前の勇音との戦闘の疲れからか、ただ音速を超えるだけの隕石に反応することすら出来なかった。


そして隕石は鈴丸の後頭部に直撃し、そのまま鈴鳴鈴丸の15年という短い歳月の人生は幕を下ろした。

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