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第二節門:暗闇の中、冷血な、かつ優しい手の差し伸べ

門を潜った先にあったのは、曲がりくねった道。照明の点々とした明かりを頼りに、先へと歩いていく。照明だけが煌々と照らしている道は、あるようでないような不思議なーー明るいような暗いような感じがして、自分が悪い夢の中にいるような気がしてくる。まるで、終わらない夜を延々と彷徨うようなーー。


お屋敷の内部は広大で、あのサイズの入り口からしてみれば、外からはまるで分からなかった程広い。それでも、終わりは確かにあった。大きな木を折り返して超えていくと、開けた場所に洋館のような建物が忽然とあった。あまりにも急にあったので、土地がどこかへと飛んでしまったかと思った。上にぼうと伸びる三階建ての、くすんだ赤の表面がじわりと滲んだ血のように明かりに照らされてあるなかを、案内の人と別れてから、近くのもう一つのお屋敷に入っていくその人を見送りつつ、その正面扉から入るために、ドアリングを持ち上げて、落とす。たしか、これでいいはずーー。


しばらくすると、音もなく、扉が開けられる。どこからやってきたのかわからない程の静けさで、出てきたのはメイドさん。メイドさんや案内の人がいるのなら、まだ事業もそんなに悪くなってないのかな……と思った私は、少しの間話しかけるのを忘れていたことに気づいて、焦って早口に話しかける。


「あの人に、暑中見舞いのお手紙を頂いたので、やってきたのですが……あの、これ、駅で買ってきたお菓子です。どうぞ」


「あの人とは、一体誰のことでしょうか?」


済んだ氷のような、綺麗だけど冷たい声が耳に吹き込まれた気がして、少しだけ寒くなったが、ここで引いたらいけないと思いとどまって、話を続ける。


「お宅の、わたしと同じぐらいの若い男の人なんですけど……夜分で、申し訳ないのですが、会わせていただきたいんです」


しばしお待ち下さい。と言うと、メイドさんは奥へと返っていって、待たされることになった。やがて間も無く、メイドさんが帰ってきて、不思議なことを喋った。


「この場所には確かに居りはしますが、違う次元に居りますので、すぐに会うのは難しいでしょう。あなたをここで返すのは簡単ですが、あなたがもし、本当にあの方にお会いになりたいと思うなら、この次元の差に理解していただくために試練を受けていただく必要があります。

よろしければ、お入りください」


何を言っているのか分からなかった。けど、分からないなりに分かったこともある。この試練を受けないと、あの人とは一生会えない。ここまで来たことも、無駄になる。この時間だし、帰るあてもない。なら!


「やります。試練とやらを突破します!」


我ながら、勇ましい声が出たと思った。こんなところに来なければ、そんなことになることもなかったのに。後の私は、そう思った。しかし、それはその時の私には分かりようもないことで。今思えば、あの洋館の人達の行為の殆どは、善意に基づいて行われたのかもしれないと思う。だって、あの人に会わせないなんて、言わなかったのだからーー。


「では、第一関門、海の間です。あなたを見つける旅路、どうぞお忘れなくように」

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