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五十年前のJKに転生?しちゃった・・・  作者: 変形P
昭和四十二年度(高校二年生)
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七十九話 黒田家

「何で、祥子姉さんがお姉様をお誘いするのよ!?」


明日香の糾弾するかのような声が受話器から響いた。


「その、祥子さんは松葉女子高の生徒会長で、私はクラスの委員長だから生徒会のお手伝いをして、明日香ちゃんや杏子先輩と知り合いだからっていろいろ聞かれて・・・」


俺もなぜ呼ばれたのかよくわからない。


「ちょっと心配だわ。明日の朝ね。私も祥子姉さんの家に行くから!」


そのとき、受話器から別の声が聞こえた。


「美知子くんと祥子が何だって?」水上先輩の声だ。


「姉さんには関係ないから!・・・お姉様、じゃあ明日ね!」


そう叫んで明日香は電話を切った。不安の種が一つか二つ増えた気分だ。


翌日、俺は黒田先輩の家にいて、黒田先輩と対峙していた。


黒田先輩が俺のセーラー服の胸元をつかむ。


「美知子さん、私のものになりなさい。・・・生徒会長が二年生のお気に入りの子を妹として愛する。これが松葉女子高生徒会の伝統なの」


「そんなことできません!家に帰ります」


そう言ったとたん、黒田先輩は俺のセーラー服を引きちぎった。胸元が裂け、ブラジャーがあらわになる。


「きゃーっ!」俺は胸元を両手で隠しながら叫んだ。


「これで家に帰るつもり?・・・今日はもう帰れないわよ」


黒田先輩が逃げられないように俺の頭をつかみ、むりやり唇に・・・。


はっとして目覚めた。いやな寝汗をかいていた。


セーラー服を手で引き裂けやしない。俺は夢だったことに気づいてほっと息をついた。


顔を洗ってセーラー服に着替え、朝食を食べてからもう一度歯を磨いた。さすがに夢のようなことはないだろうが、念のためだ。


家族に断って家を出る。黒田先輩にもらった地図を頼りに歩いて行くと、目的の家の前で明日香が待っていた。


「明日香ちゃん!」「お姉様!」声をかけ合う。


「来てくれたの、明日香ちゃん」


「ええ。・・・大丈夫とは思うけど、祥子姉さんも女の子どうしが好きになるという小説が好きだったから」


「やっぱり・・・」そうではないかと思っていた。


「明日香ちゃん、何かされそうになったら助けてね」


「もちろんよ。お姉様を守るわ」


黒田家は町の郊外近くにあり、敷地も広く、母屋は水上家よりも大きい立派な洋風の建物だった。水上家は半分以上が工務店の事務室や作業場だったが、黒田家は住居だけでこの大きさを有しているようだった。


「こんにちは〜」玄関ドアを開けて勝手に入っていく明日香。


俺は明日香の後について玄関に入った。


「いや〜、明日香、遅かったね」そう言って出迎えたのは水上先輩だった。


「姉さん、なんでここに!?」


「昨日の電話を漏れ聞いてぴんときてね。明日香について行くと怒られるから、先回りしたのさ」


「あなたたちは、二人そろって」と、後から黒田先輩が現れて文句を言った。


「私は美知子さんとお話ししたかっただけなのに」


「何言ってるんだい、美知子くんは祥子のものじゃないよ」と水上先輩。


あなたのものでもありませんが。


「しょうがないわね。美知子さん、こちらへどうぞ」と黒田先輩が俺を招いた。


黒田先輩について入った部屋は広めのリビングだった。高そうな輸入家具が置かれ、壁には大きい油絵がかかっている。天井にはシャンデリア風の照明があった。


「祥子さんの家はお金持ちなんですね」


「父が貿易会社を経営してるから、輸入品が安く手に入るだけよ」


やっぱり社長令嬢でしたか、黒田先輩は。


「とにかく座って。お茶を出すから」


黒田先輩が奥に声をかけると、若い女性がお盆にティーセットを載せて持ってきた。家族ではなくお手伝いさんのようだが、水上家のお手伝いさんより若くて美人だった。


黒田先輩は社長秘書を勧めてくれたが、こういうお金持ちの家のお手伝いさんもいいかもしれない。


メイド服を着て、優雅にお茶の用意をする。


「祥子お嬢様、お茶を召し上がれ」


「ありがとう、美知子。・・・美知子の指は今日もきれいね」


黒田先輩が俺の手をとる。「あら」とわざとらしく驚く俺。


「隣に座って一緒にお茶を飲みましょう」


黒田先輩に手を引かれて、一緒にロココ調の長椅子に腰を下ろす。


見つめ合う二人は、ルノワールの絵から抜け出したように美しかった・・・。


はっ、いかんいかん、白昼夢を見てしまった。普段の暮らしとまったく違う環境に置かれ、妄想にふけってしまった。


「・・・今日はお招きありがとうございます」と黒田先輩に礼を言う。


「ようこそ、美知子さん」微笑む黒田先輩。


「それより美知子くん、僕は今度の試験、頑張ったよ」と水上先輩が口をはさんだ。


「それはよかったですね。大学に入るまで、その調子で頑張ってくださいね」


「自信はないけど、美知子くんとコンビを組むために頑張るよ」


「何言ってるのよ、姉さん!」明日香が水上先輩の言葉に文句を言った。


「まあまあ、美知子さんも杏子の行く大学を目指すらしいから」と黒田先輩が明日香を制した。


「ほんとなの、お姉様?」


「ま、まあ、目指すだけだから」黒田先輩に頼まれた設定を思い出してごまかす。


「とにかく、美知子さんのおかげで杏子も進学する気になったんだから、私たちも美知子さんをいろいろサポートしましょうね」


「そういうことなの」状況を理解したらしい明日香。


出してもらったお茶を飲んでほっとする。それにしても、こういう豪華な部屋に三人の美少女がいると、さっきの妄想ではないが、本当に絵になる。


三人の美少女とは、もちろん黒田先輩、水上先輩、明日香の三人だ。水上先輩は奇行が目立つが、黙っていれば明日香と同じく美少女だ。


俺だけこの場にふさわしくない気がするのは、ひがみ根性からだろうか?


「どうしたの、お姉様?」明日香が俺の気持ちを察したのか、聞いてきた。


「いえ、みんな美人なのに、私だけ浮いてるなと思ってしまったの」


俺の言葉を聞いて明日香が目を見開いた。


「・・・お姉様、質問するから、正直に答えて?」


「なあに?」


「世界で一番きれいでかわいい女の子はだあれ?」


「それは・・・あ、明日香ちゃんです」言わされていると思いながらも答える。


「姉さんよりもきれい?」


「はい」あっさりと答えると、水上先輩がむっとした。


「祥子姉さんよりもきれい?」


「え?・・・ええ」本人の前だと答えづらい。黒田先輩は微笑んだままだったが、それがかえって怖かった。


「じゃあ、明日香が一番好きな人はだあれ?家族や親せき以外でよ」


「さ、さあ・・・」


「それはお姉様でしょ。明日香が一番好きな人なんだから、卑下しないで」


「あ、ありがと・・・」


明日香の言葉はうれしかったが、客観的に考えると、やはり・・・だった。


「なんだいなんだい、美知子くんは明日香が一番なのかい?ロリコンだな!」と水上先輩が叫んだ。


「ロリコンって何?」と明日香が聞いた。


「私も聞いたことがないわ」と黒田先輩も言う。


「幼女しか愛せない変態って意味さ!」


「何よ、姉さん!私は幼女じゃないわ!」と文句を言う明日香。


「まあまあ」と黒田先輩が口をはさんだ。


「とにかく、美知子さんとはこれからも付き合いが長くなると思うから、とりあえず昼食をいただきましょうか」


黒田先輩に促されてダイニング・ルームへと移る。同じく輸入物の家具で飾られた部屋だ。中央の長めのテーブルの上には、既にガラス製のボウルが置かれており、その中に冷水にひたされた白く細い麺が入っていた。そばにガラス製の小さい器、市販のめんつゆに、薬味を盛った小皿が並んでいた。


「え?そうめんですか?」と俺は聞いた。


「正確に言うとひやむぎね」と答える黒田先輩。「私が好きで、夏だけでなく春から秋にかけてよく食事に出してもらうの」


「前から疑問に思っていたけど、ひやむぎとそうめんの違いって何だい?」と水上先輩が聞いた。


「小麦粉を練って作った生地を、うどんと同じように包丁で細く切ったのがひやむぎ、手で伸ばして細くしたのがそうめんよ」と博識な黒田先輩が教えてくれた。


「ただ、今は機械で製麺するから、ほとんど区別がつかないけどね」


ガラスボウルの中の白い麺の中に、ピンク色の麺と緑色の麺が一、二本混ざっていた。


「その色つきの麺が中に混ざっているのがひやむぎの目印よ」


俺は気を利かせて、ボウルの中のひやむぎをガラス製の小さな器によそい始めた。


「明日香ちゃんにはピンクの麺を入れてあげる。祥子さんは緑色の方でいいですか?」


「ありがとう、お姉様」「わたしはそれでいいわよ」


水上先輩に白い麺だけ入れると文句を言うかなと思ったが、特に何も言わなかった。


「昔は姉さんと色つきの麺を取り合って、よくけんかをしたわ。最後はいつも私が泣かされたけど」と明日香が感慨深げに言った。


「そうだったかな?」と水上先輩。「今はこだわらないから、明日香にあげるよ」


麺つゆをかけ、薬味を少量取ると、みんなですすり始めた。


もうじき六月だ。かなり気温は上がっているので、この時期でもひやむぎはとてもおいしく感じられた。


「おいしいわ、祥子さん。今の時期でも全然いけますね」


「そうでしょ?」我が意を得たりと満足そうな黒田先輩。


「ところで美知子くん、僕たちの漫才のスタイルは考えてくれたかい?」いきなり水上先輩が言った。


「杏子、当面受験勉強に専念する約束でしょ」と苦言を呈する黒田先輩。


「今は食事中だから、楽しいことを話題にしてもいいじゃないか?」


「わかりました」と俺は水上先輩の一途さに負けて、話に乗ることにした。


「杏子先輩は見た目が美人ですから」中身が残念とは言わない。「それを生かしてちょっと不細工な相方を見つけるんです」


「美知子くんが不細工だといじるのかい?」


ごほんと咳ばらいをする。誰が不細工だ、誰が!?


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