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五十年前のJKに転生?しちゃった・・・  作者: 変形P
昭和四十一年度(高校一年生)
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二十九話 麗子の誕生日

体育祭の翌日の昼休みに麗子にそっと手招きされた。そこで麗子についていき、二人で廊下の端の方に移動した。


「美知子さん、私の誕生日は十月十四日だけど」


「ええ、知ってるわ」


「その日は平日だから、十六日の日曜日に私の家に親しい人たちを招きたいの」


この時代はあまり誕生日パーティーを開かないと思ってたけど、立て続けだな。


「ほかに誰をお招きするの?」


「頼子さんと良子さんよ」


「わかったわ、よろしくね」


俺がそう答えると、麗子はぱっと顔を輝かせた。


「きっとよ。・・・それから、厚かましいかも知れないけど、私にもミチンガをいただけないかしら」


ミチンガじゃないよ、ミサンガだよ。変な呼び名が定着したな。


「もちろん、持っていくよ。あんなので良ければ」


麗子はそれを聞いて、踊り出しそうなほどに喜んで教室に戻って行った。


翌日の昼休み、俺は二人で話し込んでいる頼子と良子に声をかけた。


「ねえ、ちょっとお話があるんだけど」


二人を廊下の端の方に連れ出す。頼子と良子はちょっとびくびくしているようだった。いや、暴力なんて振るわないよ。


「麗子さんの誕生日の件なんだけど」


「私たちもそのことを話し合ってたの」俺の言葉を聞いて頼子が破顔する。


「プレゼントで何を麗子さんに差し上げようかって」


「ああ、楽しみだわ。お呼ばれするなんて・・・」と良子もうっとりした。


「その件なんだけど」と俺は二人に言った。


「前に麗子さんへの誕生日プレゼントについて二人に事前に相談するって約束したわよね」


「ええ」


「私はこれをあげようと思うの」


俺はポケットから三本のお手製のブレスレットを取り出した。色はそれぞれ赤紫色、天色あまいろ、薄紫色の単色だ。天色あまいろは空の青の色のことである。


「そ、それはミチンガ!」「三本も?」


「いえ、麗子さんに三本あげてもしょうがないから、二本はあなたたちにあげようと思って」


「え?いいの?」


「頼子さんは、誕生日が四月だったわよね。遅れてしまったけど一本差し上げるわ、迷惑でなければ」


「迷惑なんて、とんでもない!うれしいわ」と頼子。


「それから良子さんは、誕生日は来年の三月だけど、それまで待ってもらうのも何だから、早めに差し上げるわ」


「あ、ありがとう、美知子さん。・・・うれしい!」


「何色がいいかしら?余ったのを麗子さんにあげることにするから、選んで」


俺がそう言うと、二人は俺が持っているミチンガ、いやミサンガを手に取って見比べた。


いろいろ迷った挙句、頼子が赤紫色、良子が薄紫色のブレスレットを選んだので、その場で手渡した。


「裸で悪いけど、どうぞ」


「ありがとう、美知子さん!」再びお礼を言う頼子と良子。


二人はその後「何をお願いしよう」と相談しあっていたが、しばらくするとお互いの左腕に巻き合っていたようだった。




十月十四日の麗子の誕生日になった。


「麗子さん、お誕生日おめでとう」朝、学校で会ったときに俺は言った。


「ありがとう、美知子さん。日曜日はよろしくね」


休み時間には頼子と良子に呼ばれた。


「この間はミチンガをありがとう。お返しに私たちから、遅れたけど誕生日プレゼントよ」


二人からもらったのは、人形しおり三個とレース編みのコースター一枚だった。


「まあ、このしおり、とってもかわいらしいわ!」


人形しおりは、細長く折った千代紙を着物に見立て、紙や顔、帯を和紙や別の柄の千代紙で作った人形で、しおりとして使えるものである。


「それに良子さんはレース編みができるのね。とってもお上手だわ」


コースターは白い色で、直径八センチくらいだった。どちらも俺が作ったミチンガより、よっぽど手をかけたプレゼントだった。


俺のほめ言葉に顔を赤くする頼子と良子。


「麗子さんへのプレゼントも、同じようなのにするつもりなの」


「そう。絶対に喜ばれるわ」


俺がそう言うと、二人はにっこりとほほ笑んだ。




十六日の日曜日になった。お昼前に俺が麗子の家に着き、玄関から声をかけると、麗子が飛び出してきた。


「美知子さん、ようこそ!・・・頼子さんたちも来ているから、お上がりになって」と歓迎された。


俺が家に上がり、ダイニング・ルームに入ると、頼子と良子が既に座っていた。


「美知子さん、おはよう」「おはよう」


「おはよう。遅れてごめんなさい」と俺も答えた。


テーブルの上にはホールケーキ、鶏もも肉のローストチキン(足先に持ち手兼用の紙飾り付き)、クラッカーの上にチーズを乗せたカナッペ、ワイングラスなどが並んでいた。やっぱりおしゃれだ。


麗子の母親は給仕に専念し、父親は顔を出さなかった。俺たちだけのパーティーということか。


ホールケーキは、恵子の家で食べたのと同じバタークリームケーキだが、もう少し大きく、ろうそくが十六本立てられていた。


麗子の母親がろうそくにマッチで手早く火をつける。十六本もあると手をやけどしそうで、見ている俺たちもはらはらした。


「じゃあ、始めるわね」と麗子。


「麗子さん、ろうそくを吹き消して」と頼子が言った。


麗子は頬を膨らませると、少し顔を赤くしながら息を吹き出し、ろうそくを少しずつ消していく。息が苦しそうだ。


それでも何とか十六本のろうそくの火が消えたので、俺たちは盛大に拍手した。


「麗子さん、お誕生日おめでとう!」「おめでとう!」


「ありがとう」麗子は顔を赤くしてはあはあ言いながら答えた。


「これは誕生日プレゼントよ」


頼子と良子が紙袋に包んだプレゼントを差し出す。俺もあわてて紙袋を取り出した。


「ありがとう、何かしら?」


麗子が紙袋を開けていく。


頼子のプレゼントは俺がもらったのと同じような人形しおり三個だった、俺がもらったのより出来が良さそうな気がするが、気のせいだろうか・・・?


良子からのプレゼントは、レース編みで縁取りしたハンカチだった。刺繍でRとイニシャルが付けられている。気合入っているな。


「まあ、かわいい!素敵ね!」二人からのプレゼントを喜ぶ麗子。


そして俺が渡した紙袋を開け、天色あまいろのリリアン編みのブレスレットを取り出した。


「あ、ほしかったミチンガ!美知子さん、ありがとう!」


大げさに喜ぶ麗子。もう『ミチンガ』という呼び名を訂正することはあきらめた。俺は麗子に請われて、麗子の左手首に巻いてあげた。


「麗子さん、願い事は込めたの?」頼子が聞く。


「え、ええ・・・。内緒だけど」


目くばせし合う頼子と麗子。おそらく二人は、麗子が好きな人のことを願ったと想像しているのだろう。


頬を染めながら、麗子はワイングラスにファンタグレープをついだ。紫色の炭酸飲料が、ワインのように見えないこともない。


「それじゃあ乾杯しましょう」


「改めて、麗子さん、誕生日おめでとう!」


「満十六歳になったから、もう結婚できるわね」


いや、そのフラグはもういいから。


それから食事をしながらおしゃべりを始めた。頼子や良子は、学校のことや芸能人のゴシップなどを次から次へと話し出した。麗子は楽しそうに応答しているが、俺は話題が移り変わる早さになかなかついていけず、たまに口をはさむのが精いっぱいだった。


まあ俺は優雅にワイングラスを傾けることにしよう。


麗子は頼子や良子とのおしゃべりを楽しんでいるが、時おり俺の方をちらりと見て微笑んだ。ホストの気配りも大変だな。


俺は美知子の誕生日がもう過ぎていることにほっとした。もしお返しに俺のパーティーも開かなければならなくなったら、何人呼べばいいのか?いや、美知子の家には入りきらないだろうな。


誕生日パーティーが始まって三時間経過したので、ダイニング・ルームから麗子の部屋へ移動することにした。後片付けは申し訳ないが、麗子の母親にまかせる。


麗子の部屋では、さすがにベッドの端に四人並ぶと話しづらいので、カーペットの上に直に座った。


いつものように芸能雑誌を広げ、それを四人でのぞき込むような形に俺たちは並んだ。奥から頼子、良子、麗子、俺の順に、ほぼ密着している。


よく話題が尽きないなと感心するくらいに、雑誌のページをめくりながら麗子が話す。頼子も良子も即座に応答する。俺はほとんどついていけなかったが、気を遣っているのか、時々麗子はこっそりと俺の腰に手を回した。いや、そこはお尻だよ、麗子。


そんなこんなで夕方五時を回ったので、さすがに帰ることにした。


名残惜しそうな頼子や良子とともに階段を下りる。台所にいた麗子の母親にお礼を言って玄関に向かった。


頼子と良子が靴を履いているときに、麗子は俺をそっと呼び寄せて、


「家を出て少ししてから、また戻ってきてもらえる?」と聞いてきた。


頼子や良子に聞かれたくない話でもあるのか、と俺は思ったが、指でOKサインを作った。


麗子の家を出て少し歩くと、「今日は楽しかったね。じゃあ、さようなら」と言って頼子と良子から別れた。


そして町内をゆっくり一周して、二人の姿が見えないことを確認すると、もう一度麗子の家の玄関に入った。


「麗子さん、何かご用?」待ち構えていた麗子に声をかける。


「これを差し上げようと思って」麗子が俺に紙袋を手渡した。


「え、なあに?」


「美知子さんの誕生日にプレゼントを渡し損ねたから。・・・遅れたけど受け取って」


そうか、前に麗子は俺に雑誌をくれようとして、先生に没収されたんだった。友だちになれたことがプレゼントだよと、そのときは言ったけど、気にしていたんだな。


俺はそう思うと、お礼を言って紙袋を開けてみた。そこには畳んだ花柄のハンカチのような布が入っていた。


しかし開いてみると、それはハンカチではなく、内向きのポケットがついたケースだった。ちり紙やら脱脂綿やらを入れ、ポケットに忍ばせておける優れものだ。


「これはかわいいし、便利だね。ありがとう」


「気に入ってもらえて良かった。・・・それは手作りで、私のとお揃いにしたの」


麗子はにっこりと微笑んだ。


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