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外伝 上巻

 いきなりですが、皆さまにひとつお訊ねします。


 ある日、突然自分だけが住み慣れた街から見知らぬ地へ迷い込んでしまったら。

 昨日まで日常生活を送っていた世界とはまるで異なる、別次元のパラレルワールドに来てしまったら。


 あなたなら一体どうしますか?


「ヒャッホ〜! 俺はついに異世界へやってきたんだ!」


 と、諸手を挙げて小躍りしながら大喜びするだろうか?


 いや、そういった人達もいるにはいるだろうが、大概の人間は途方に暮れて、目の前の現実を受け止めきれず、延々とそれを否定する為の判断材料を探し回るだろう。


 自分の頭の中に記憶された地元の道路、最寄りの駅、大手チェーン店や見慣れたコンビニエンスストア。

 もし、『スマートフォン』などの携帯端末を所持していれば、親兄弟や友達などに連絡を取ろうとするかもしれない。

 けれど、一向にこの状況を全否定できるような決定的証拠は見つからない。現状を打破する方法も何一つ思いつかない。

 それどころか、探せば探すほど、現実を知ろうとすればするほど。言い知れぬ不安と恐怖が、彼の、彼女の心を支配していく……


「……元の世界に帰りたい……」


 愛する家族、友人、恋人の事を思い出し、ついに彼等は泣き崩れてしまうだろう。その果てしない孤独感と絶望感に耐えきれず、自ら命を絶つ者も少なくないはずだ。



 しかしそんな悪夢のような現実の中で、ふてぶてしくもこんなセリフを吐いた強者(つわもの)が……


「どうやら、俺は相当に面白そうな世界に迷い込んだようだな」


 彼の名は花村(はなむら)(てん)


 (いわ)く、常勝無敗の格闘家。

 曰く、食物連鎖の頂点。

 曰く、歴史上最強の人類。


 一般人にとって絶望的とも言えるこの状況下……だが彼にとっては、これは思いもよらぬ僥倖、何ものにも代え難い幸福だった。


 ーー俺はツイてる。


 男はこれでもかと猛っていた。こんな非日常を自分は求めていたんだと。

 正直言って、以前自分がいた世界は、退屈とまではいかないがどこか物足りなかった。常日頃から、もどかしさを感じていた。


 ーーまた本気を出せなかった。


 いつも何かに手加減する日々。全力を出さずとも勝負事では必ず自分が圧勝。せめて相手と同じ土俵で闘いたいと、まだ見ぬ好敵手に思いを馳せ、渇望していた。


 そしてそんな日常の中で、突然訪れた人生最大級の転機。


『魔技』、『リザードマン』、『ドバイザー』――


 ーーいまだかつて、これほど心躍らせたことがあっただろうか?


 それは神の悪戯か、悪魔の罠か。あるいはその両方? まあ、どちらでもこの男には関係ないこと、どうでもいい事なのだろうが。


「さあ、()こうか」


 そこかしこに魔物が蔓延り、魔法が飛び交う文明社会。驚天動地の異世界を、天下無双の格闘王が行く!





「ハァ……ハァ……」


 まさに疲労困憊といった状態で、肩で息をする俺。


「こいつは参ったな……」


 その身体には無数の切り傷や打撲痕、はっきり言ってボロボロだ。


「ガォオオオオオオオオオオオオオオ‼︎‼︎」


 そんな俺を嘲笑うかのように、地鳴りのような咆哮が辺りに響き渡る。


「チッ、まさか『史上最強の格闘王』と呼ばれたこの俺を、まるで子供扱いとは」


「ガウオオオン!」


 この世界に迷い込んで早四日。


 現在、俺こと花村天は、小山ほどはあろう一匹の巨大な『ドラゴン』と対峙していた。


「まったく嫌んなるぜ。これでも、前の世界じゃ向かうところ敵なしだったんだがな?」


「グヴオッッ‼︎」


 俺が減らず口をたたいていると、ドラゴンは大きく口を開けて俺を睨みつけた。

 そして次の瞬間、ゼェゼェと息を切らす俺へ、トドメだと言わんばかりに灼熱の業火が降り注ぐ。


「うおっ!」


 間一髪、俺は怪獣映画さながらの火炎放射をギリギリのところで躱すと、そのまま急いでドラゴンの死角へと回り込む。


「危ねえ、危ねえ。もう少しでバーベキューにされちまうところだったぜ」


 俺はあごを伝う汗を泥だらけの手の甲で拭いながら、短く息を吐いた。

 もう体力も残りわずか。加えて、今のところ自分の持つ攻撃手段の中でドラゴンに有効な決め手が見つからない。


「ガヴオオオオンッ‼︎」


「……こりゃあ、いよいよヤバイかもな」


 いわゆる絶体絶命の大ピンチというやつだ。


 ーーだが悪くない。


 しかし俺は、そんな危機的状況の中で、自然と笑みをこぼしていた。


「こんな窮地を、俺は求めていたんだ」


 ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、俺は眼前で山のようにそびえるドラゴンに向かって一目散に駆けて行く。


「とことん()ろうぜ!」


「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオン‼︎‼︎」


 激しい力と力のぶつかり合い。


 その瞬間、俺の世界が真っ白な景色で塗り潰された……………………




「…………のはずだったのに」


 現実の俺は、ただいま死んだ魚のような目で自分の目の前にいる一匹のモンスターを見据えていた。


「ブギィーー!」


 よだれを撒き散らしながら俺を威嚇するソイツは、大きさは俺より一回りぐらい小さい人型サイズ。


「ブヒ、ブヒヒッ」


 異形なる三本指の手には、ゴツゴツとした歪な形の木の棒。


「コイツをバーベキューにしたら、それなりに美味いかもな……」


「ブヒィイッ!」


 まあ、ぶっちゃけると丸々と肥えた二足歩行のブタである。


「て〜ん! ボクが魔技を生成してる間『オーク』の足止めを頼むのだよ!」


 黄色い声援というわけでもないが、少し離れた場所から若い女性の声が飛んできた。


「たぶん一分ぐらで生成できると思うから、それまで頑張ってね〜」


 俺にエールを送ったのは、金髪ポニーテールの『ハーフエルフ』、一堂ジュリ。ちなみに、彼女はエルフの血が混じってるくせに、耳の部分は人間(ノーマル)だった。


「……分かったよ、ジュリさん」


 俺は、やる気なさげにその声に応える。


「もう、いまいち元気が足りないのだよ、天は……あ、そうだ! ここで頑張ってくれたら、ボクが今度、一日デートしてあげるのだよ♪」


「はいはい」


 猫なで声であからさまなニンジンをチラつかせるジュリに対し、俺は適当に流す感じで手をヒラヒラと振って見せた。


 ……健全な男子ならそれで多少はモチベーションも上がるのかもしれんが、あいにく俺の中身は三十路過ぎの()れかかったおっさんなんだよ……


 なにより、今は夢とリアルのギャップが激しすぎて、何を言われても心に響かない。

 一方、そんな俺の態度を見たジュリは、ますます面白くないといった様子で口を尖らせて、


「あ、いいのかな〜〜、ボクにそんな態度とって? なんなら、その時に例のご褒美(ほうび)を天にあげてもーー」


「いい加減にしろよ、ジュリ!」


 ジュリの軽口をさえぎるタイミングで、俺の背後から怒鳴り声が上がった。


「今は戦闘中なんだぞ! 真面目にやれよ!」


「う〜、ちょっと天とお喋りしただけじゃないか! ほんと、昔から(あつし)って冗談が通じないのだよ」


 緊張感のないメンバーを叱りつけたのは、俺が所属しているこのチームのリーダーを務める、一堂淳。ついでながら、彼は一堂ジュリの従兄でもある。


「天。俺も攻撃のサポートに回るから、俺にくるオークの攻撃も防いでくれ!」


「……了解だ、リーダー」


 容姿は完全に美少女にしか見えないその男の()の指示に、俺は渋々頷いた。


「ラム! 他にも周囲にモンスターがいないか警戒してくれ! それと弥生(やよい)は、一応のために回復魔技がすぐ使えるよう準備を頼む‼︎」


 淳が大声でそう叫ぶと、十数メートル後方から少女二人分の声が届く。


「了解しましたです!」


 まだ幼さが残る童女体型。黒い猫耳とですます口調が特徴的なこの可愛らしい少女の名は、ラム。


「わかりましたわ、兄様」


 そしてこの美少女軍団ーーとりあえず淳も含めーーの中でひときわ光彩を放つ、年齢に似合わず落ち着いた物腰の娘。


「私も万が一に備えて、ただちに魔技の生成を始めますわ」


 白く透き通った雪のような肌。上質な黒真珠を思わせる深く艶めいた黒髪。未成熟ながらも絶世の美貌を持つ彼女の名は、一堂弥生。チームリーダー、一堂淳の妹でもある。



「いくぞぉ! タァッ!」


 気勢を上げ、構えていた両手持ちの剣でオークに斬りつけたのは淳。以前の『リザードマン』の時とは違い、中々に気合いが込められた斬撃だ。


 ……まあ、それでも剣道なんかをそれなりにやってる奴らから見れば鼻で笑われるレベルだがな……


 俺が少し引いた視点から淳とオークの攻防を眺めていると、淳の二合目の斬撃が見事、オークの左肩に命中した。


「ブギイイッ!」


 たまらずといった様子で、オークが後退する。


「ブギィ、ブギーーーッ‼︎」


 だが魔物はすぐに体勢を立て直し、怒り狂うった形相で淳に向けて棍棒を振り上げた。


「天! 盾を頼む!」


「了解……」


 俺は、小声で「言われなくても分かってるよ」とぼやきながらも、右手に持っていた盾を構え、無駄のない動きで淳を背に庇うようにオークの前へ出た。

 次の瞬間、カンッ! という甲高い金属音が周囲に響く。

 無論、俺が右手に構えた盾でオークの棍棒攻撃を防いだからだ。


「ブヒィッ⁉︎」


 その一方、渾身の力で放った攻撃をあっさり跳ね返えされたオークは、見るからに動揺した様子で後ずさる。


「よし、ナイス盾役!」


「…………」


 俺は返事をしなかった。ただ嬉々としてこちらに顔を向けてくる淳と、右手に持つ軽自動車のタイヤほどはあろう『鉄製の盾』を交互に見た後、人目もはばからず盛大なため息をついた。


 ……こんなはずじゃなかったのに……


 人知れず落ち込む俺へ、さらに追い討ちをかけるように女性陣全員から無邪気な声援が送られる。


「凄いですわ。天さんがまた敵の攻撃を盾で防いでくれました!」


「うんうん。今の盾を出すタイミングも絶妙だったし。ほんと、盾役は天の“天職”と言っても過言ではないのだよ」


「あっ! 攻撃を仕掛けたオークの方が、天さんの盾の威力に尻込みしちゃってます!」


「……………………」


 ……なに、その『盾の威力』って……?


 力なく肩を落とす俺。


 そう。わけあって俺は、現在このチームの『盾役』に任命されていた。


「お、おい!オークに攻撃を食らわせたのは俺だぜ? 褒めるなら俺の方だろ、普通はっ⁉︎」


 などと実に小さいことを口走っている淳の傍らで、俺はもう一度、今度はその切実な思いを声に出してつぶやいた。


「……こんなはずじゃなかった……」



 ……どうしてこうなった?



 俺はこれ以上ないというぐらい肩を落としながら、この異世界にやって来た当初のことを思い出す。



 そう、あれは忘れもしない三日前のことだ――。



 この世界に来たばかりの俺は、とにかくここでこれから生きて行くにはまず一般常識を身につけなくてはならないと思い。目の前にいる会ったばかりの異世界人の若者達から、それとなく情報収集をしようと考えた。


「それはあたしたち獣型亜人の種類ということですか?」


「いや、モンスターじゃなくて普通に文明がある、知能の高い種族全部を」


「それでしたら私が説明させて頂きますわ。主に私達、人間と交流あるいは一緒に暮らしてる種族はラムちゃんみたいな亜人の方々と森人のエルフの方々ですかね。他には知能が高いですが私達人間とは余り友好的ではなくて場合によっては敵対するのが魔族で、ある一つの事以外はほとんどかかわり合いがないのが神様がたです」


「ちなみにボクはエルフと人間のハーフだよ」


 なんと!金髪女はハーフはハーフでも外人じゃなくてエルフと人のハーフかよ!


 まぁ異世界だから外国とかよりも種族別でわかれているのかもな…いや、外人とかの概念もないかも……そろそろ完全に自分の世界の常識を捨てないとな、よし!この流れでまた色々と情報収集だ!


「ちなみに俺と弥生の父親の双子の兄がジュリの父親だ」


 その情報はいらないリーダー男。


「すまない、俺の親父から聞いた話で気を悪くしてしまったら申し訳ないんだが確かエルフとは耳が長い種族ではなかっただろうか?」


 小説の知識をジュリにぶつけてみた。


「ああ、別に気にしないでくれ。よく普通の人間に間違われるのだよ、確かに君の言うとおり純血のエルフは耳が長いのだよ、ただ人と交わったり亜人と交わると子供は大抵そっちの方の特徴の人型になるんだ。人間なら人間、亜人なら亜人、髪と目の色はどちらになるかわからないんだがね。ただしエルフのハーフは必ずと言っていいほど純血のエルフ同様に魔力が高いんだ!ほら、さっきボクがかなり強い魔技を生成できたのもその才能を受け継いでるおかげ」


「生成する時間がかかり過ぎだがな」


「う、うるさいのだよ淳!」


「ふん!さっきからのお返しだ…」


 ふむふむかなりの情報が得られたな。


「後、神様というのは本当にいるのか?にわかに信じ難いんだが…」


「はい、間違いなくいらっしゃります。私達はお会いした事はありませんが王族の方や英雄的な冒険士の方々、高位の神官の方々はあった事がある方もかなりいるとか?」


 おいおい神に普通に会えるだと?強いのかな?


「でも一般人にはその一つの事以外は先程もお伝えしましたがほとんどかかわり合いませんが」


「そのある一つの事とは?」


「う〜ん普通なら絶対知ってる事なんだが天は山奥ぐらしの野生児だから知らないのか?親父さんは教えなかったのか?」


 リーダー男が本気で疑ってる…そんなに常識的な事なの?神様がやってくれる事って?


「兄様、天さんは嘘は言わないと思いますよ!普通に聞かれた事は説明するべきです!」


「…やけにそいつの肩を持つな…」


「弥生さんはとても親切なだけですよ淳さん、あたしが田舎から出てきた時も色々教えてくださいましたです」


「む、そ、そうだな。」


「本当に淳のシスコンは……」


「うるさいぞジュリ!」


 ……金髪女、リーダー男もうその絡みはいいから。


 後、大和撫子さん俺は先ほどからほとんど嘘しか言ってません!すんません!!


 俺は心の中で親切な大和撫子に謝った。


「…話しが少しそれましたね…その事というのがこれですわ」


 そう言って大和撫子は数字と人の肖像画が描かれている紙を俺に見せた、ん?この形もしかして……


「兄様、ジュリさん、ラムちゃん、私5千円札しかないんですけど1万円札と千円札ないですか?」


「すみませんあたし財布持って来てません……」


「俺は1万円札と5千円札しかないな…後は小銭だ」


「ボクが千円札持っているから大丈夫なのだよ。それにしてもなんで君達兄妹は1番みんな持っている千円札が財布に入ってないんだ?」


「今はそれはどうでもいいですよ、とりあえず兄様とジュリさん1万円札と千円札貸して下さいませ」


「ん」


「了解だ」


 そう言って大和撫子は2人から紙幣を受け取り俺に手渡した。


「これが主に神様が私達に関わっている物です」


 ああ成る程お金ね…そりゃ普通は絶対知ってる事だわ。「この1万円札に描かれてある方が創作の神マト様、そして5千円札に描かれてある方が生命の女神フィナ様、最後に千円札に描かれてある方が知識の女神ミヨ様ですね」


 大和撫子は本当に丁寧に教えてくれる。


 さっき助けて本当に良かった…いやそれじゃなくても助けたがね。


 ふむ、創作神マトというのが1万円札か、確かに似合ってるな見た目は良く神話に出てくる神の絵だ70代ぐらいの爺さんで長い髭で頭はハゲている…どっちかと言うと仙人像か?


 次に生命の女神フィナはかなり色っぽいなしかも超美人だ!胸もデカくて谷間まである……これをネタにする男もいるんじゃないか?…バチが当たりそうだが…。


 そして最後に知識の女神ミヨはハッキリ言ってインテリ大学生かこれは?美人だが全然遊んでなさそうな、ショートカットじゃなくて三つ編みならこれ美人委員長だろ、キツめな感じのインテリ美人って所か?てかなんで神様なのにメガネしてんの?目が悪いの神なのに?それともキャラ付けかなにか?色々ツッコミ何処が多い神だがこれだけは言っておく!めっちゃタイプです!!


 それと、お金が円読みなのは同じなのね。


「ありがとう、成る程お金はコインだけじゃなかったんだな。また一つ勉強になったよ!」


「ああそうか、確かにこんな山奥なら別に小銭だけでもやって行けるからね。納得、納得」


 よし、札があるなら小銭もあると踏んで正解だったようだな、金髪女も単純だから納得してくれた。


「ちなみに小銭の全てそれぞれの神様がいらっしゃる神殿をモチーフにしています」


「勉強なるな本当に、それと気になったんだが神様が紙幣を作っているのかな今の話しだと?」


「はい、それであっています」


「…凄いなそれは…。 どこで作っているんだい?やっぱり神殿?」


「作ってくれるというか与えてくれると言った方が正しいかもしれませんね。神様がお金を与えてくれる条件は大きく2つあります。1つ目はさっき私達が倒したリザードマンなどのモンスターを冒険士協会や教会に持って行って魔石にして貰いその魔石を神様にお金にして貰うという方法です。そして2つ目は文明の発達に貢献したり英雄的な活躍などを神様に認めて貰えば神様直々に多額のお金が受け取れますね、おそらく大まかな分類はこの二つかと」


「へぇ〜、そうだったんですね」


 お前も知らなかったんかい猫少女!あれ?でもそれだと問題があるんじゃないか?


「それだと需要と供給が追いつかない様な気がするが、お金を得る手段が少な過ぎる」


「…天さん、山育ちなのに難しい言葉を知っていますね…。しかも質問の内容も凄く真理を追究する感じの事ですし」


 しまった!もっと慎重に言葉を選ばなければいけなかった!


「天は父親に色々と一般常識以外の事は教えこまれているんだろ?生きて行く上で必要な世渡り術とか?それにさっきから思っていたがかなり知能が高いと見えるのだよ、知らない事を教えているはずなのにすぐに理解しているし」


「確かにジュリより頭が良いな」


「…一度、淳の中でのボクの評価についてトコトン話して貰う必要があるのだよ……」


「あわわわわ…」


 ナイス金髪女!さっきからいい仕事しやがる!だが、知能が高いとか、俺は猿か?かなり上から目線だが絶妙なツッコミを入れてくれてるから許す!


 それにしてもこの2人仲がいいな本当に、そして猫少女は和む…。


「では改めてその質問にお答えしますね、実は既にどの国でもある程度のお金が溜まっていて国庫が少ない国がないのです。ですから冒険士や発明家などの職種以外の仕事は国が負担しそれに付け加え雇い主や顧客がお金を支払っています」


 成る程、殆どの職種が公務員に近いって事か、しかしそれでも。


「だがそれでも限度がないか?やっぱり?」


「ありませんかね?実際に聞いた話だと文明を発展させて1番神様からお金を与えられたのがドバイザーの発明なんだと教えられましたが、その時に与えらたお金は兆単位の額らしいです」


「兆単位の額!!」


「凄いです!!」


 いやだからなんでいつもお前も驚いたり感心しているんだよ猫少女。


「確かに凄いがそれだとその発明家、もしくは発明した人々しか儲からなくないか?」


「文明の発展で得たお金はどれも一個人が使い切れる額ではないので大陸全体の国に配られます」


「それならわかるが本人達は納得するのかそれで?」


「納得しますね。勿論そういう偉業を達成し大陸を潤した方には様々な恩恵がありますので、まず一つは国から貴族の位と土地が下賜されます。 もう一つは神様から寿命が与えられますね。今の所は最高で500歳を普通の寿命に+された方がいますね」


「500歳!!それはまた剛毅な…」


「凄いです!!」


 ……なんかやっぱり和むはこの猫少女。

 でもそれだと納得できるな色々と地位と名誉と寿命まで貰えるとは…。


 だが今度は土地が足らなくならないか?それと国だっておそらく不公平になるだろそれだと、その文明を発展させた者が出てきたら毎回土地やんなきゃいけないんだろ?


「そしてその文明の発展に大きく貢献した人間やエルフ、亜人がいる国は国土を増やせます」


 納得しました。


 だがまだ問題が…


「それだと国土が削られた国が怒らないか?」


 戦争の原因になるだろ普通に。


「いいえ、それは神様が何処をどれぐらいその国の領土にするか決めるのでどの国も怒らないですね、というより怒れないです」


「……隙がないな色んな意味で」


 …いや〜感心した〜。


 なんだかんだでお金が元になってるけどかなり神に管理されてる世界みたいだなこの世界は、一応これも問題解決してるんだろうけど聞いてみよ…。


「それで国がなくなってしまった所とかなはないのか?領土を取られるだけで文明を発展するような英才が生まれなかった国とか?」


「それも大丈夫ですかね。 そういう国も多いですが領土はお金でも買えますから、さっきも言いましたが文明を発展させて神様から貰ったお金は大陸全体の国に均等に配られますからそういった国は国庫だけはかなり潤っているんですわ。なので普通にお金で大国から領土買ったり国どうしの結婚なんかもありますね」


 領土を合併するって事だろ?


「ふぇ〜頭がクラクラしますです」


「へぇ〜、そんなのもあるのかい?」


「……俺も知らなかった…」


 大和撫子以外は全員知らなかったんかい!


「まぁこれはドバイザーが発明されるだいぶ前にほんの数件しか起こらなかった例なので知らない方も多いかと」


「よくそんな事知っていたな、流石は我が妹!」


「でたよまたシス…」


「それは吸収されたという意味じゃないのか?」


 俺は金髪女がリーダー男をおちょくる前に質問を素早くし金髪女とリーダー男の会話を無理矢理終わらせた……だから何度もしつこいだってお前ら!


「近い様ですが若干違いますかね、確かにどちらかの名前はなくなりますが王家や貴族はそのままの地位で増えますし、権限もかなり維持された方でどちらかに嫁ぎますから。だから王、女王が2人でその合併した国を動かしますね、同じ権限の強さで」


「その2人が国の運営の事で夫婦喧嘩したら大変そうだな」


「それも時にはあるでしょうがだいたい王族と言うのは英雄か英雄の子孫なので人間が出来てる方が多いです、自分達の勝手な思想のぶつかり合いで国を傾けるまでの喧嘩をする不義理な愚か者は人間、エルフ、亜人の中にはいませんかね」


 …俺のいた世界よりある意味平和かもな、神が管理する世界か…ま、モンスターがいるから平和とは言えないか、後は魔族ねぇ、モンスターとは違うのかな?


「ちなみにさっき言った500歳を神様から与えられた英雄は新しい大陸を見つけた正真正銘の英雄ですね。名前はルキナ様、今は北の亜人の国を治める女王様です」


「ルキナ様が!!あたし達の国の女王様がそんな凄い英雄だったんですね!」


 いや、知っとけよ猫少女!自分の国の1番偉い偉人の英雄譚ぐらい!


「これが今の世の中の国の情勢みたいな感じですかね」


 ……こっちの世界に来てしょっぱなから半端ない量の情報ありがとう大和撫子さん、だが他にも色々、自分で見て聞いて完璧に近いこの世界の情報を集めないとな。


 大和撫子を信用してないわけではけしてないが、耳年増や自分自身で解釈している知識もあるだろうから色んな国を回り正しい知識を吸収して自分なりに推測し情報をきちんと構築せねば。


「そういえばこれも見て貰えますか?これが私達の世界地図です」


 そういって大和撫子は俺に自分のドバイザーを操作し画面をみせてきた。


 有難い!こんなに早く世界地図を見れるとは、俺は冷静を装いながら食い入るようにドバイザーの画面を見て驚愕した…そこには日本とそっくりな大陸が映しだされていた。

「へ〜、大陸ってこんな形なんだな…」


 俺は動揺する心を抑えて平静さを装い世界?地図を眺めながら喋る。


「ハイ!これがここ数年の最新地図ですね。海の向こうにはまだ知られざる大陸があるかも知れませんが、今の私達の世界の地理はこれが全てですね」


「いや〜興味深いは本当に、親父のやつそういうこと全然教えてくれなかったからさ」


「世界地図を持っている方は少ないですからね。おそらくこれは推測ですが天さんのお父様は教えなかったのではなくて知らなかったのかもしれませんね」


「確かにな、親父はそういう世の中の常識には興味を持ってなかったかもしれないな」


「にしては息子の天は世の中の事に興味津々みたいだね。そういう所は母親似なのかい?」


「うーん、母親は物心着く前に親父と離婚しているからどんな人かわからないけどそうなのかな?」


 うん、嘘は言ってないなコレに関しては。


「そ、そうか…すまないな変な事聞いてしまったのだよ」


「馬鹿だなジュリは、親父さんと山暮らしという時点でさっしろよ」


「う、うるさいな淳!」


「ジュリさんて本当に人の家族構成や生い立ちとか聞きたがりますよね…。あたしも都会に出て来てすぐの時は色々聞かれましたし…です」


「ラ、ラムまで…。た、大切な事だぞその人間を知るには…」


「あたしは亜人なんですが……」


「う…、こ、言葉の綾だよ!それを言ったらボクだって半分はエルフだし!」


「珍しいなジュリがラムに困らされてる所なんて?ラム!もっと言ってやれ!」


「あう〜、そういうつもりはなかったのです」


「く、このシスコン調子に乗って…」


 …ふぅ、こいつらは本当に仲がいいな、だが今は情報収集に専念したいから話しを戻さないとな。


「いや、全然気にしないでくれ、俺は世の中の知識には興味があるが基本、家族には興味がないからな」


「ど、ドライだな天は…、ちょっと引いちゃったよお姉さん…」


「ふぇ〜、家族は大事ですです〜」


「俺もそう思うぞ天…」


「天さんその歳でそんなに冷めていらっしゃるのですか…」


 ま、マズイ!みんな引いてる!確かに今、俺は16歳設定だった…。


 修整せねば、しかし本音を言った途端これとは、こっちの世界の16歳に精神年齢を合わせる必要があるな、この先怪しまれずに情報収集をするには。


「いや、言葉足らずだったな?家族の事は知り尽くしているから家族情報には興味が無いと言ったんだ、もっと正確に言えば持っている情報に興味は無くて新しい情報に興味津々と言う事だよ」


「そういう事か、いやでもさっき母親とは物心着く前に親父さんと離婚したと言ってなかったかい?」


「あ、あ〜その離婚した後すぐに母親は死んだらしくてな、その後の事は無いんだよ」


「う、また変な事を言ってしまってすまないのだよ……」


「…ジュリ、地雷踏みすぎだ…」


「気にする事はない、確かに母親の事がまるで恋しくないと言ったら嘘になるがそこは既に何年も前に乗り越えている」


 本当は欠片も恋しくないが一応それなりの事は言っておかないとな、そしてこの世界にも地雷があるのか?思わぬ情報だな。


「そ、そうか、何処で親父さんは今なにをしてるんだ?」


「親父も5年前死んだ」


「っな!……すまないのだよ本当に…」


 金髪女が話しをそらそうとして親父の話しに移ろうとした所に地雷をまた仕掛けてしまった…。


 親父は、死んでいた方がこれからこちらで生きて行く上では色々面倒臭くないからな…金髪女、すまないがしばらく気まずい気持ちでいてくれ。


「ジュリ…お前はもう喋らない方がいいぞ……」


「うう、言われなくてもわかっているのだよ淳!」


 反発は相変わらずだがもうかなり弱々しいな金髪女、まああれだけ地雷踏めば弱々しくもなるか?仕掛けたのは俺だがな。


「所でさっきの世界地図の話しなんだが…」


「あ、はい!!なんでも聞いて下さいませ」


「あたしもわかる所は力になりますです!」


 よし!気まずい空気を変えようと地理の事とその質問に答える方に乗り気になってくれた!!


 結果的にはまたもいい仕事をしたぞ金髪女、そして猫少女、君にはあまり期待出来ないが一生懸命な所が可愛いからありがとう!


「ありがとう!じゃあまずここは……」


「うん、弥生の知識はかなり凄いからなんでも答えてくれるのだよ!」


「なんで、お前が偉そうなんだジュリ…確かに我が妹の知識は凄いが」


 …とりあえず金髪女は話しに入ってくるな!もうお前の仕事は終わったんだよ!そしてリーダー男のドヤ顔もうざいな。


「ここはこの世界地図でいうとどの辺りになるんだ?」


「はい!この山奥は大体この辺りだと思いますよ」


 ふむ、やっぱり俺が向こうに居た時と一緒の場所だ……多分、兵庫県だよなここは?

 そう、俺の出身地は兵庫県のとある山奥だ。


「ふむ、成る程…全体的に見て結構下の方にある場所なんだな」


 俺はあたかも初めて見る、聞く様に大和撫子に接する、人間は自分が教える立場に立った時その対象が無知なら無知な程、饒舌になり色んな事を教えてくれるからだ。


 勿論例外もあるが彼女の様なお人好しそうな子はこういう場合ほぼ間違いなくそうなる、言い方は悪いが優越感に浸れるという点もあるからだ。


「確かに若干下の方にありますかね、ソシスト共和国は」


 こっちの国ではここはソシスト共和国と言うらしい。


「ちなみにさっき話したルキナ様が見つけた新しい大陸というのが地図の一番下に位置するこの大陸です」


 成る程、九州を見つけたのか…


「そういえばその大陸にはその時に先住民族は居なかったのか?いたら見つけたとしても神様が英雄扱いするとは考えにくいが?」


「居ませんでしたね。確か伝承では動物とモンスターしか居なかったらしいですよ?見つけた時もルキナ様がその大陸に入ってからすぐに3柱神様が現れてよくぞ見つけた!おめでとうといいその場で加護を与えたとか?」


 宝箱かよ!こっちの神って結構ゲーム感覚で世界管理してんのかもな。


「それが歴史によると今から丁度200年前になりますね。後3ヶ月もすれば大陸全土で記念祭が行なわれますよ」


「……そのルキナ様って今、何歳?」


「確か今、221歳か2歳ですかね」


「えーー!!ルキナ様そんなにおばあちゃんだったんですか!!」


「いや、それは知っとこうよラム…」


 金髪女がツッコミを入れる、そしてその意見には超同意だな…自分の国の女王の歳ぐらいしっとけ!


「あう〜、だってルキナ様凄い若々しくて美人のウサギの亜人なんですよ」


 なんと!バニーガールの亜人!!素晴らしい会ってみたいもんだな…そしてまた一つ何気ない会話から情報を得られたな…ここの世界の日時表現でも何ヶ月という時で表されているようだ。


 西暦は違うだろうが、秒、分、時、日、ヶ月は変わらないとみた!俺はそれとなく大和撫子に質問してみた。


「はい、それであっていますよ」


 っと返された、やはりここは俺がいた世界と共通することが多いな…さっきからみんな言葉は日本語だし、良かった〜、結構日常を暮らすには難易度低いはココ。


「そういえば普通の人間やエルフ、亜人はどれくらいの寿命なんだ?」


「一般的には人間と亜人の寿命が大体生きて140〜150歳ぐらいでエルフが200歳ぐらいですかね?」


「うんそれであってるのだよ弥生、ちなみにボクみたいなハーフでもエルフは魔力が高いから普通に生きれば200歳は生きるかな?」


「ほ〜、長生きなんだな」


 小説に出てくるエルフよりは短命だがそれでも全体的に普通に長生きと思い俺は一言つぶやいた。


「まあ普通に寿命をまっとうすればだがな………」


 リーダー男が少し悲しそうな顔をする。


「はい…そうですね兄様…。この世界での全体の平均寿命は確かここ数年の記録だと50歳を下回る数値だった気がします……」


 低!!確かに普通の寿命と世界の平均寿命は違うがそれにしても50未満とか…江戸時代かここは?


「それは病気で死ぬという事か?」


「それもなくはありませんが1番の理由はモンスターに殺されてしまいます…」


 成る程な確かにこの世界ならありそうな理由だなそれは。


「そこからは、俺が話そう…」


 リーダー男がいつになく真剣な顔で俺に語りかけて来た。


「そこで絶命してるリザードマンもそうだが世の中にはああいった魔素を取り込んだモンスターがうじゃうじゃいる。天はあったのが初めてみたいだが普通はモンスターに遭遇するのは日常茶飯事だ」


「おそらくこの山奥の森林のおかげじゃないかな?ボクさっきから思ってたけどここら辺は魔素が薄いからね、生き物がモンスターになることが少ないんだと思うのだよ」


 最初からモンスターじゃなかったのかよあのリザードマン、ふむ興味深いな、ある程度は予想が付いたが一応聞いてみるか。


「モンスターとはどの様に生まれるんだ?」


「モンスターはね、空気中に含まれる魔素を動物や虫、魚とかありとあらゆる生物が吸いすぎて吸収しすぎるとなってしまう現象?災害みたいなものかな?」


「成る程、生物のウイルス感染病みたいなものか?」


「そんな感じなのだよ!で、ここは魔素が少ないから生物がモンスター化されにくいししたとしてもすぐに他のモンスター化されてない動物なんかに食べらちゃうんじゃないかな?ここら辺の魔素濃度ならモンスター化したとしても小さい虫ぐらいなものだし」


「そのモンスターを食べた動物はモンスターにならないのか?魔素というのを取り込んで?それとなら何故リザードマンとかいうモンスターがこの山奥に現れたんだ?」


「まず一つ目の質問に関してはNOなのだよ、魔素は確かにその虫モンスターに入っているが特殊な方法じゃないとそのモンスターが吸収した魔素を取り込んだり力に変えたり出来ない!普通に食用のモンスターもいるぐらいなのだよ、食べるという行為で他の生物が魔素を取り込んむことはないのだよ。で、2つ目の質問だがこれはボクらの作戦みたいな感じかな?もともとあのリザードマンはこの山に住んでた訳じゃなくてここら辺の近隣の町や村に出没していたんだよ、それでボクら冒険士に依頼が来て討伐した感じなのだよ。こここら辺の山は他のモンスター出没情報もなかったし人も最初は絶対にこんな山奥にいないと思ったのだよ」


 確かに自分でいうのもなんだがここで暮らせる人間はかなり少ないだろう、俺も昔はたまに山登りなどで訪れた登山家によく妖怪と間違いられた。


「本当、こんな少し登るのにも大変な山奥に住んでる人間がいたなんて驚きなのだよ実際…」


「う〜、本当ですよ〜、あたしなんて追いつくのにやっとです」


「ラムは追いついたとは言い難いのだよ、リザードマン倒した後だったし」


「はう、…ジュリさん意地悪です…」


「さっきのお返しなのだよ」


 ふふんと金髪女がしたり顔になる、なんでいつもじゃれるんだよお前らは…だが猫少女が可愛いので許す!


「そういえば依頼で思い出した、弥生!リザードマンをドバイザーに入れてくれ」


 それは忘れちゃダメだろリーダー男!


「あ、はい、えっと…」


 ん?大和撫子が動かずにその場で口ごもる……あ〜、成る程ね。


「他の2人の方が良いんじゃないか?彼女はさっきそいつにそういう感じで近づいてそのトカゲに殺されかけたからな…そういった恐怖心はよっぽど慣れてないと1日2日じゃ抜けないぞ?」


 俺が察した事を口に出して伝えると大和撫子がこちらを少し潤んだ感謝の目で見ている、やはり正解の様だ…。


「確かにそれは言えてるね、よしならボクがドバイザーに入れちゃうのだよ」


「すまん弥生!思慮が足りなかった…」


「ふえ!弥生さん殺されかけたんですか!!」


「うん…でも大丈夫だよ?天様…天さんが助けてくれたから」


「大した事はしてないんだがな……」


「いいえ、本当に本当にありがとうございました」


 深々と大和撫子は頭を下げる……お礼言い過ぎだからあんな事で…。


「……ジュリ!さっさとリザードマンをドバイザーに入れろ!!」


「はいはい。シスコン兄様は気が気でないですね」


「……ふぇ?」


 リーダー男がとたんに不機嫌になりそれを見て金髪女がニヤニヤした顔で見て大和撫子は少し顔が赤い様だ、そして猫少女はこのやりとりの意味がわからずキョトンと首かしげる…和むな本当この猫、そしてリーダー男…心配するな、お前が危惧している事にはまずならない。


 何故なら俺はさっき自分の顔を端末(スマホ)でみたから確信してるが俺の顔は別に若返ったからと言って格好良くなった訳ではない!例えるならザ、普通だ!もしくはブサイクの部類、目は空いてるかどうかわからないぐらい細い癖(普通に見てるが)に眉毛は濃くてちょっと太いまあ鼻は整っているかも知れないがまず間違いなくお前ら美形アイドルグループとは釣り合わない、吊り橋効果的なアレだよきっと!そうに決まってる!


 ……32年間も童貞やってるとまず疑ってかかるんだよなこういう物事にたいして俺は…。


 仕方ないじゃないかよだって32年間童貞&彼女無しだぞ?恋愛関係に自信や調子に乗るなど出来る訳がないだろ?逆に戦闘なら自信しかないんだがな…俺は負けた事ないから。

 ……今はそんな事より情報収集だ情報収集。


「さてと怖いお兄様がこれ以上怒らないうちにリザードマンを回収するのだよ」


 そういって金髪女が何やらドバイザーを指で操作してリザードマンに向けるとリザードマンがドバイザーに吸い込まれた!……いや驚かんよ別に、普通に流れから容易に想像できたしね、それよりドバイザーの操作まんま端末(スマホ)の操作じゃん!


「よし!依頼達成!」


「ジュリ!冒険士協会にそのドバイザーを見せて手続きをしてやっと依頼達成だ!」


「そうですよジュリさん!」


「淳とラムは真面目ちゃんなのだよ」


「私もそう思いますジュリさん…っあ、兄様とラムちゃんに同意と意味です」


「このチームで真面目じゃないのはお前だけだよ…ったく!」


「むぅ〜……っあ!天、そういえばさっきモンスターや魔素に関して色々質問してたのだよ、他に聞きたい事はないかい?」


 逃げたな……まあ俺としては渡りに船だがな。


「では教えて欲しいんだが魔石というやつをモンスターで作ると言っていたがそれはどうやってやるんだ?」


「知ってる人には当たり前過ぎるけどいい質問なのだよ。 ではその質問に答えるのだよ。 さっきも言ったと思うが魔素は特殊な処理をしないと取り出せないって言ったよね?その特殊な処理というのが魔石製造なのだよ、そして魔石製造は神様から与えられた方法、機械などで製造するのだよ。でだそれをする機械や儀式方法を所持しているのが冒険士協会や教会さ、まあ大きな町や都市だと普通にデパートとかにも置いてある機械だけなのだよ。後、儀式方法の方は高位な神官や魔技使いや国のお抱え製造士なんかは余裕でできるのだよ…ボクは出来ないんだけどね……」


「成る程、それで神様にお金に代えて貰うのか」


「うーん、その選択肢を選ばない人のが多いのだよ、魔石はボクらの生活には絶対必要だからね」


「というと?」


「まずねボクら魔技使いだと魔石という触媒がないと魔技を使えないものが多いのだよ!使える方もいるが本当に一握りの英雄級冒険士や最上位の神官、国の上位お抱え魔技士ぐらいさ、そしてこれが魔石の1番の利用法なんだけどね、魔石っていうのはなんの燃料としても今の時代は使えるのだよ、テレビをつけたり冷蔵庫をつけたりランプに灯りをともしたり機関車を動かしたりコンロに火を着けたり、それこそ多種多量でほとんどの燃料になるのが魔石と言っていのだよ。そしてそれらの機械を魔石機器と言っているのだよ」


 では魔石とは俺のいた世界の石油や電気みたいなもんか?魔石機器って電気機器みたいなものの事だよな?そしてテレビに冷蔵庫あんだな、テレビあるって事はどっかにテレビ局もあるんだろうし。


 それに機関車って事は魔石を燃料にして動く電車の交通手段があるって事だろ?……ヤバイ、ワクワクしてきた。


 だが一つ気になる事があるな。


「魔石というやつはモンスターしか材料に出来ないのか?」


「そこが一番の問題点なのだよ……実際そのとうりなのだよ。 魔素を吸収したモンスターからしか魔石は製造でいないんだ。だからボクらの脅威になるモンスターがボクらの暮らしを支えてくれてるという矛盾が発生するのだよ」


 成る程なもし魔石がなくなっても生活は出来るがそれは、俺たちで言う石油や電気力がなくなるのと同義だ、かなり生活が苦しくなるし人間、一度快適な環境に身を置くと抜け出すには厳しいだろうな。


「魔石以外の燃料の開発とかはないのか?」


「それも無いのだよ。まずね、モンスターは確かに魔石目的が1番ポピュラーだけどね、モンスター化したモンスターをずっと放って置くと進化しちゃうのだよ、魔素自体はモンスター化した後も勿論吸収するからね。あのリザードマンだって前は元はトカゲ、大トカゲでリザードマンになったんだ、ちなみに放って置くとハイリザードマン、リザードキング、ドラゴンになっちゃうのだよ。ハイリザードマンの時点でボクらでは微妙、リザードキングは間違いなく殺される、ドラゴンに関しては最低Aランクモンスターだから国の軍隊やA、Sランク冒険士チームじゃなきゃ自殺行為以外の何物でもないぐらい危険なのだよ」


 やっぱドラゴンはいるんだな……勝てるかな俺なら?正直戦ってみたい…。


「まあハイリザードマンぐらいでみんな気づくからそこまで育つ前に仕留められちゃうけどね、トカゲがドラゴンまでのモンスターになるまで恐らく魔素の強い地域で50年はかかるのだよ。リザードマンぐらいなら3.4年ぐらいでなれるのだけどね」


 なんだちょっとがっかりだな……。


「だからドラゴンを魔石にすると最高品質のかなりデカイ魔石が出来るのだよ。あらゆる燃料として使える上に多分物によっては100年間ぐらい使えるかな?お金にしても10億円ぐらいになるしまさに一攫千金かな。実際目にしたらすぐに逃げるだろうけどね、ちなみにこのリザードマンでも100万ぐらいの魔石になるのだよ」


 あんな雑魚で100万!!いや、一般人には脅威か?多分だが俺の見たてだとあのリザードマンは俺の世界での3メートル級のワニと大差無い実力だったからな恐らく一般人は出会ったら逃げないと終わりだ。


「そういえばもう一つ気になった事があるんだが人間は魔素を取り込んでしまう事はないのか?」


 その言葉を言った瞬間リーダー男、大和撫子、金髪女はおろか猫少女まで顔を強張らせた。

 うわァ〜、何かマズイ事を言ってしまったかな。

「それは、禁忌なのだよ」


 金髪女が珍しく難しい顔をしている。


「人が普通に生活して自然に魔素を吸収する事はまず無いのですが、意図的に吸収する手段があるのです」


「ああ、邪教の連中がやっている儀式魔技だよな?」


「……それであっているのだよ…」


 大和撫子、リーダー男、金髪女がシリアスに会話をしている。


 やれば出来んじゃねぇかそういうふうに会話をする事!…っと今はそういう話しをしてるんだよな、俺も言葉を慎重に選ばなくては。


「邪教?紙幣に描かれている3柱神を崇拝してないって事か?」


「ハイ…極々一部しか存在しませんがそういう輩もこの世界には存在していますわ」


「別に信仰心が強い人間ばかりが沢山いる訳でもないがな俺みたいにとりあえず何時もお世話になってますぐらいしか信仰してない人間もいるぞ?普通に紙幣で鼻かんだ時もあるしな」


「…兄様そのような下品な事をしていたのですか?」


「ち、違!子供の頃に一回だけだ弥生!

 天がわかりやすい様に実例を!」


「何がわかりやすい様にだよ。まあボクも普通に紙幣を踏んづけてもあ、マズ、ぐらいにしか思わないけどね」


「あう〜、お二人ともお金は大事にしなくちゃダメですよ〜」


 そういう問題の話ではないだろ今の話しは…まあ、お金を大事にするのは確かに同意だが。


「ま、まあそんな感じで俺やジュリみたいにそこまで信仰してない物もかなりいるということだな」


「むしろそっちの方がが圧倒的に多いのだよ実際には」


「ですがそういった方々も否定はしてませんし勿論、反発もしていませんわ。ですが邪教集団は3柱神様を否定し反発している物達なのです」


「それで神様の怒りに触れないのか?」


「基本的に神様達は平等ですからね加護がなくなるだけの処置で済ませてますね、つまりお金が使えなくなるだけですね」


 なんとまあ軽い処置だな…でもお金が使えないのはキツイか?


「それにお金が使えないと言っていいのかも怪しいですかね」


「どういう事だ?」


「ありていに言いますと神様から与えて貰った機械が使えなくなるんです。だからお金を預ける事が出来なくなるだけで財布に持っていれば使えますし魔石も機械を使わずに製造出来る者がいたら普通に製造出来ます」



 ああやっぱり軽いはまあ実際、神に反発して本当にペナルティがあるなんて俺がいた世界だと考えられないしな?それを考えるとペナルティがあるだけ重いのかな?


「しかし紙幣には、3柱神が描かれているよな?反発や否定しているのにそれを使うのかそいつらは?」


「そういう輩はツラの皮が人の10倍厚いからな、ご都合主義で矛盾の塊みたいな奴らに常識は通用しないだろ」


「淳の言うとうりなのだよ!あいつらは世界の…特にエルフの敵なのだよ!」


 金髪女が感情むきだしで怒っている、なんとなくみえてきたなそいつらが何をやって儀式魔技というやつを行っているか。


「儀式魔技には大量の魔力がいるのだよ、それを補うためにあいつらは生まれつき魔力の高いエルフをさらって来ては無理矢理、儀式魔技に参加させているのだよ!」


「例えさらわれたとして、そんな危ない儀式にエルフが簡単に協力したりするのか?」


「だから無理矢理やりなのだよ!邪神アイテムというやつらが独自に開発した中で最も有名で最も醜悪な道具、奴隷の首輪というやつがあるのだよ!それを着けられると言う事を聞くしかなくなる、というより言う事を聞かないと想像を絶する激痛を与えられるらしいのだよ……」


 金髪女の顔が青いな、無理も無い自分の同族の悲惨な扱いを結果的に説明しているからな…あ!それをさせたのは俺か?


 すまんな金髪女…にしても何処の世界にもクズはいるもんだな…。


「しかもそれを着けられてしまうと外すには専用の鍵が必要でそれを持っているのは邪教の幹部のごくわずからしいからな」


「ハイ……。だから着けられた時点で服従か死の二択になるらしいですね」


 リーダー男と大和撫子も顔色が悪いな?無理もないが……最悪に悪趣味な首輪だなまさに奴隷の首輪だな。


「無理矢理外そうとするとやはり…」


「天の思ってる通りなのだよ、無理矢理外すのはほぼ不可能だ、首輪は着けられた時点でその者の魔力に反応してくっついてしまうんだ、ドバイザーの様にね。で、無理矢理外そうとすると激痛が走って最悪ショック死してしまうのだよ。それにかなりの強度を誇る上に今も言ったが首の一部みたいに張り付いてしまうから外すのは至難なのだよ。魔力の供給が止まればもしかしたら外せるかもしれないがそれは逆に死ぬまで外せないということなのだよ」


「この首輪は持っているだけで重罪になりますね。そしてこの首輪を一度でも使った事があるものは神様の加護から外れます」


「だがそれでも所持しているものは少なからずいる、邪教の連中以外でもマフィアや盗賊団などが所持している事が多い」


 マフィアや盗賊もいるのか、やはりこっちもこっちでかなり黒い部分もあるな。


「それもこの世界では一般常識なのか?」


「いや、一般人でその首輪の見た目だけなら知っている者はいるがその全容をしる者は少ないな、王族や教会関係者なら常識だが一般人は持っていると神から加護を受けられなくなる呪いの首輪ぐらいにしか思ってないと思うぞ」


 まあそれでもあってるっちゃあってるがな。


「あたしも、冒険士協会に入る前はそんな感じで認識してましたです。持っているとご飯が食べられなくなる首輪だと思ってましたです」


 いや、そっちは微妙に違うかな…でも今はその和みスキルは重要だぞ猫少女。


「成る程、冒険士協会で教えて貰えるという事か」


「ああ、そのとうりだ、入るのと同時に教えられる事の一つだな、やつらとやり合う機会もあるかもしれないし、もしその首輪を着けた者がいたらすぐに保護しなければならないからな。そこら辺はどの国でも徹底している」


「………」


 金髪女が悲しそうな顔をしているな……助からなかった者や保護されても首輪を着けたまま生活している者も多いのだろう、今の話だとその中でもエルフが断トツに多いのは容易に予想がつく、辛いだろうな。


「そうまでしてしたい儀式魔技とはどんなものか想像したくないな」


「儀式魔技が成功するとその者は人や亜人、エルフではなくなります……」


「人型が魔素を大量に取り込むと魔族になるのだよ…」


 ここで魔族!確かにどんな奴らかは気になっていたが…人型の堕ちた成れの果てとはな…。


「失敗したら確実に死ぬというのに奴らの中でやろうとするものは後を絶たないらしいのだよ……本当に狂っているのだよ」


「ああ、俺もそう思う、しかも成功例も多々あって邪教の幹部のほとんどが魔族だとか」


 それはなんとも厄介な連中だな。


「じゃあ魔族とは人型が魔に堕ちた成れの果てということでいいんだな」


「いえ、確かにそれも魔族は魔族なのですが、それはあくまでも中途半端な者たちです。普通に純粋な魔族も存在します。というよりモンスターの知能が人型と同等かそれ以上な者たちを魔族と言うのです」


「更に着け加えるとモンスターで魔技を使える者たちを魔族というのだよ。ドラゴンなども火のブレスを吐くがこれは魔技ではなく魔素自体を形を変えて吐き出しているというのが正しいのだよ、だが魔族達はボクらみたいに魔力をもっていて自分の体に溜まっている魔素を触媒にして魔技を生成するんだよ。強力な魔技も生成出来る厄介極まりない奴らさ」


 あ〜、それはたちが悪いな、つまりは自分自身を質のいい魔石変わりにして魔技を打ててしかも魔素もおそらく形を変えて魔技みたいに技に出来るとみた、更に空気中での魔素を取り込む事もモンスターなら出来るからこの場合は無限に回復出来るのか?時間はかかるだろうがな、おそらく今俺が推測した事に近い事はやってのけるだろうな…そうするとやはり強いのかな?


「色々聞いて推測するに相当厄介な連中とみたが、やはりモンスターランクは高いのか?」


「はい、最低でもBランクですね…。多分、人型からなった者の多くはBかAです。ただ何百年も生きて魔素を取り込み続けた魔族達は最上位のSSランクも居ると聞きました、ちなみにモンスターのランクは低い方からG、F、E、D、C、B、AそしてSとSSですねリザードマンは丁度真ん中ぐらいです。SとSSはほとんど確認された事のない伝説級のモンスターなので一応ランクは存在しますがあって無いようなものですね。ちなみに私達、冒険士のランクなのですがこれは先ほど言ったモンスターランクのGとSSを抜かす感じですね。私達3人が冒険士ランクEでラムちゃんが冒険士ランクFですね」


「あたしも早く皆さんみたいにEランクの冒険士を目指しますです!!」


 いや、そこはAとかSランク目指そうよ猫少女!


「AやSランクの冒険士はどれくらいいるんだ?」


「AやSランクの冒険士の方々はほとんどいらっしゃらないですかね。それぐらいになると英雄級なので中には国のお抱えの戦士になったり王族になったり高位の貴族になる方も多いですからね、今現在で冒険士協会に所属してる中ではSランクが世界で5人、Aが世界で確か20人足らずとか」


 少な!いや世界チャンピオンがそんなに多くても困りものか、冒険士と言う奴らがどれくらいの人口いるのかわからないしな。


「ちなみに冒険士とはどれぐらいいるのんだ?」


「確か全体で5万人ぐらいだったかな弥生?」


「はい兄様、世界全体の冒険士の数はそれぐらいですねそして世界人口の約1%が冒険士と言われてます」


 思ったより多いな?いや世界全体なら少ないのか?いやいや世界って言ってもほとんど日本だけど、もしくは日本より若干小さいか……ん?今、大和撫子は冒険士は世界人口の約1%とか言わなかったか……まさか…。


「気になったんだが今、冒険士は世界人口の約1%って……」


「はい!世界人口は500万ほどと言われていますので冒険士はその1%つまり5万人になります、世界全体でそんなに人がいた事にやっぱり驚きましたか?」


 大和撫子がニコニコしながら聞いてくる、驚いたは驚いたが多くてじゃなくて余りにも少なくて驚いたわ!…あ、そうか人間だけの数ね、亜人とエルフも入ったらその3倍ぐらいに……


「ちなみにエルフ、亜人も混みでの人数です」


 3種族でかよ!!あ〜そりゃ土地余るは、いくら日本が俺の世界でそんなに広い方じゃなくても人口500万人ぐらいなら余裕で土地管理出来てないだろう。無論、人が住んでない地域も出来てくるな。


「ほへ〜、世界人口ってそんなに多かったんです?」


 猫少女、お前はこの世界の事なんならしってんだ?


「そして不快だが魔族も実はかなりいるのだよ世界人口の500万には遠く及ばないが確か10万ぐらいはいたと思う、まあこれは世界の学者や専門家の推測だから本当の所は誰も知らないのだよ」


「はい、その通りですわ」


「ちょっと待ってくれ、魔族というのが10万もいたら世界にとって深刻な脅威だろ」


「いえ、天さんの言わんとする事はわかりますが実は魔族には一つだけ決定的な弱点があるのです」


「弱点というと?」


「ハイ、魔族は確かに脅威的な力を持ちますがその分燃費が凄く悪いのですわ、普通に生活する分にはそんなに魔素を使わないと思いますが私達人型の冒険士や国の軍隊などと戦うとたとえ勝ってもかなりの魔素を消費します。 もしかしたら途中で魔素がなくなり死んでしまう可能性もありますね。それぐらい魔族が本気で戦うとなると一気におのれの魔素を使ってしまうのです」


「でも魔素は空気中に普通に存在するんだろ?取り込めばいいんじゃないか?」


「確かに魔族は空気中の魔素を取り込めますが、基本的に私達の世界での魔素は魔族の魔素をすぐに回復させるほど大量には含まれてません、特にこの辺りなら活動するのも辛いんじゃないでしょうか?」


 成る程、酸素が薄い的なアレね、この場合は魔素が薄いか。


「それに魔族は私達人間やエルフなどを襲ってもメリットがまるでありません、食べる訳でもなければ魔素の元でもないし、お金も魔族には必要ありませんからね」


「言われてみれば確かにそうだな」


「それに魔族は強さに貪欲なので、好戦的な面もありますが人型相手に長年溜め込んだ魔素を使ったりしませんね。それをするのはさっき言った邪教の魔族になった者達だけです」


「ああ、あの愚か者達ぐらいなのだよ、人型界で戦ったり人型を襲ったりするのは、全く不愉快極まりない連中だよ」


「ジュリさんの言う通りですね…」


「人型界というのは?」


「ん?普通にボク達の生活してる大陸だよ、ちなみに魔族が生活してるのは魔界だ、ここでなら空気中の魔素が濃いから普通に魔族でも戦い放題なのだよ」


「ジュリさんの説明に補足すると魔界に言った場合は向こうも遠慮なく私達を襲ってきますね…。基本的には、戦いが大好きなモンスターなので、だから私達人型は魔界には絶対に足を踏み入れませんわ」


「その魔界とはどこにあるんだ?」


「あ、さっき地図見せる時に説明不足でしたね……ここです」



 大和撫子はまた世界地図を開いて俺に見せて、魔界?を指差した………北海道じゃねえかよここ!!なにコレ?世界が変わったら北海道も魔界に変わっちゃったよ!!


  …まあ異世界ならなんでもありだよな?うん切り替えよう。


「元々はここも人型界だったらしいのですが大昔に何らかの原因で魔素が大量発生し強いモンスターや魔族が沢山生まれてしまって人型が住める環境ではなくなってしまったらしいのです」


「大昔ってどれくらい前?」


「3000年ほど昔と言われてますね」


「3000年前ね…ちなみに俺たち人型はいつぐらいから存在していたのか知ってるか?」


「いつから存在していたのかはわかりませんが人間、亜人、エルフの文明があったのが約5000年前かららしいですね、今は神歴5005年ですから」


 ふむ、かなりの歴史があるようだな……さて色々な情報が集まったし後は自分自身の足や目で確かめるか…。


「すまないな、色々と質問責めをしてしまって。世の中がそんな風になっていたなんて思っていなかったな。親父は山から離れて人里に行く事もしばしばあったが、俺は子供の頃からここを離れた事が無いからな、凄く勉強になったよ!ありがとう」


 俺は深々と頭を下げて礼を言った。


「いえいえです!私も助けて貰いましたしお気になさらないで下さいませ」


「冒険士として一般人に世の中の危険を教える事は当然の事だから俺の方も気にしないでくれ」


「だな、それにボクは人と話す事が好きだからむしろもっと話したいぐらいなのだよ」


「ふぇ、あ、あたしは何も教えてないです〜」


 猫少女が頭を下げられて困惑している……うん、お前からはほぼ何も教わってないな?むしろお前は俺と一緒に教わってたポジションだ。


「これからも山暮らしを続けるのか天は?」


 勿論そんなつもりは微塵もないよ、寧ろ一刻も早く世界を見たい!


「いや、世の中に興味が湧いたから山を降りようと思う…」


「でしたら私達と冒険士をいたしませんか!!」


「お、おい弥生!」


「ボクも賛成なのだよ、どっちみちボクらも山を降りて冒険士協会に行かないとだしね」


「お、お仲間さんが増えるんですね!」


「ジュリ、ラムも勝手に!それに天の返事も聞いてな……」


「助かるな!どうか、宜しくたのむ!!」


 俺はまた頭を深々と下げて礼をした、こういう時は即断即決が大事だからな?俺は用心深いが即行動に移らなければならない事への見分けや対処は早い。


 そうシスコン兄貴に他のメンバーを言いくるめられる前に…。


「ぐぬぬ、、、」


「よし!決まりなのだよ!」


「こちらこそよろしくお願いしますわ!天さん!」


「わ、わ、あたしの方こそよろしくお願いします」


「ああ、右も左も分からなくて常識はずれな言動も多々あると思うがよろしく頼む!」


「……わかったよ、俺の方こそよろしく頼む、ちなみにこのチームのリーダーは俺だ、何でも命令を聞けとも上下関係をしっかりしろとも言わんが、いざとなったらの指示と日常時の予定や行動は護って貰うからな!」


「それで構わない、よろしく頼むリーダー!」


「う、それならいいんだ……それと弥生に手を出したら許さないからな…」


 リーダー男が俺に小声で言ってきた、安心しろシスコン、吊り橋効果はそう長く続かないから。


「では新しい仲間が入った所でそろそろ山を降りよう、後3時間もすれば日がくれてしまうからねボクらはそれでも大丈夫だかラムは危ないのだよ」


「ふぇ〜、やっぱりもと来た道をまた戻るんですよね」


「いや、それしかないだろラム…」


 リーダー男が呆れている、うんそれしかないぞ猫少女……とはいえやはり猫少女にはこの山道はキツイからな?よし!


「….…よっと」


「え、え?」


 俺は猫少女に近づいて無理やりおぶった、とゆーよりも背負った。


「俺にとってこの山は庭みたいなもんだがら俺が山を降りるまでおぶって行きますよラム先輩」


「え?え?いいんです?って、ラ、ラム先輩!」


「良かったじゃないかラム、紳士的な後輩が出来て、淳も見習った方がいいと思うのだよ」


「うるさいぞジュリ!」


「……ラムちゃん羨ましい…」


 そして俺はこの世界の第一歩を踏み出した、湧き立つ感情が抑えられなくて自然と口元が緩む。


 この世界なら俺は本気を出せる!この世界なら俺の考えた数々の技や力を試せる!


 こうして俺は山を降りるのであった。


 〜この世界に来て四日目の朝〜


 この異世界に来てから四日が経ちソシスト共和国という国の冒険士協会がある都市の近く街道にいる。


「天、ボクが魔技を生成してる間オークを頼むのだよ」


「……わかったジュリさん」


「天、俺もサポートするから俺にくる攻撃を防いでくれ!それとラムは他にもモンスターがいないか周囲に警戒を、弥生は一応の為に回復魔技がすぐ出来るように準備してくれ」


「わかりましたです!」


「わかりました兄様」


「……了解だリーダー…」


 俺はこんな事をやりたかった訳じゃないんだが……。


「行くぞ!ハアー!!ッタァ!」


 リーダー男がオークに斬りつけた前回のリザードマンの時とは訳が違うな…。


 まあそれでも俺の世界の中学生で剣道をやっていてある程度強いやつらには鼻で笑われてしまうレベルの剣術だがな。


 つうかさ、敵に攻撃する前に「行くぞ!」っとか言うなよ……言葉が通じてるとは思わないが狩りは気配を消して奇襲がセオリーだろうが…。


 だがそれでもオークに一撃いれたからまあいいか、豚男(オーク)も大した事ないな、本当に戦闘のレベルが低い…。


「く、天!オークが攻撃してくる!防いでくれ!」


「……了解」


 言われなくてもやるよ、ふぅ…。


「ブヒーーー!!」


 俺はオークが剣で斬りつけられて怒ってリーダー男に持っていた棍棒(ふといかくざい)を振り下ろそうとしている所に割って入って装備していた盾を前に構えてその攻撃を防ぐ…盾に棍棒がぶつかり、バン!!と大きな音が響きオークがその衝撃に耐えきれず後ろに仰け反る、ちなみに俺はびくともしていない。


「よし!ナイス盾役!」


 そう、俺は今このチームの盾役になっている。


 くそ、今オークが向かってきた時に眉間に一本拳で指突(しづき)すればそれで終わりなのになんでこんな無駄な事やってんだ俺は…。


「よし生成出来た!二人とも下がるのだよ」


「わかったジュリ!」


「……了解だ」


 俺は下がる前にバランスを崩したオークにみんなには見えない様に素早く足払いをしオークを転ばせてからある程度の距離に下がった。


「自分の攻撃の反動で倒れるとは馬鹿なやつなのだよ。 いい(まと)だね。くらうのだよ烈火玉!!」


 俺が転ばせたんだけどね……おっ。

 ドン!!火の玉がオークに命中した。


「ブーヒーーーー!!」


 おお〜燃えてる燃えてる、いい匂いすんな〜………あ、炎が消えて動かなくなった…絶命したな。


「ふぅ〜、戦闘終了なのだよ」


「…また出番がありませんでしたね」


「ふぇ〜、あたしもです弥生さん」


「今回も余裕だったのだよ」


「まあ俺が剣で斬りつけたおかげであいつは弱ってたからな」


「なにを言ってるのだよ淳、倒したのはまたボクじゃないか」


「天さんもまた盾で敵の攻撃を防いでくれました!」


「…いや俺は大した事してないよ…」


 突っ立って盾を前に出しただけだしな……。


「確かに助かった。 ま、天は盾役しか出来ないんだがな」


 ムカ!出来ないんじゃなくてお前らが、とゆーか(おまえ)がやらせてくんねーんだろ!!


「まあまあ淳、それは仕方ないのだよ」


「そうです兄様!」


「なに、そのうち天も攻撃手段を身につけるさ、そしたら天!お姉さんがいい事して、あ・げ・るのだよ」


「わ、私もい、いい事を…」


「ふぇ〜〜、あ、あたしにはま、まだ早いのです〜」


「そんな事はないぞ11の亜人なら立派なレディ…」


「とりあえずみんなオークをドバイザーにいれて依頼達成を告げに行こう」


 く、俺を舐めおってからに……金髪女の下トークを横入りして無理矢理終わらせて、俺は仕事の話しに戻した。


「天の言うとおりだジュリ、弥生、ラム!そして、弥生、淑女がそんな事を軽々しく言うのは……」


「まあまあ淳、これも天にやる気を持たせる為の方便なのだよ。(小声)」


「あいつがその気になったらどうするつもりだ…(小声)」


「多分それはないと思うのだよあの歳で童貞ならそうとうそういう事に疎いからね、まあ山奥育ちなら仕方がないことだがね(小声)」


 金髪女とリーダー男がヒソヒソと話している、聞こえてんぞ!!


 く、この4日間で俺のこのチームでの立ち位置はかなり低い…つうか舐められてしまっている。


 ………どうしてこうなった?そうアレは確か山を降りて最初にいった村での事だった…。


「ふぅ、何とか日がくれる前に村につけたな」


「本当なのだよ淳、いや〜疲れたから早く宿を取ってしまうのだよ」


「むにゃむにゃ…zzzZZ」


「ラムちゃん寝ちゃいましたね」


 俺の背中ですっかり熟睡してるな猫少女…結局山奥からここまでおぶってきてしまった…。


「そろそろ起こすか?」


 リーダー男が近づいて来た。


「いや、寝かせておいてやろう。 若いのにあの山道を登って来たんだ、かなり体力を消耗しているのだろう。 俺ならこれぐらい何ともないから宿でのベットまで連れて行くよ」


「本当に紳士だな天は、そして淳は本当に天を見習うのだよ…」


「天さんは、優しいですね」


「うぐ…」


 リーダー男が罰の悪い顔をして女二人が感心や尊敬した眼差しを向けてくる。


 いや、俺に取っては猫少女をおんぶしてるのはむしろご褒美なんで出来るだけ長くおんぶしていたいだけなんだがね。


「と、とりあえず宿をとるぞ!」


「ハイハイ、あ〜早くお風呂に入ってベットで寝たいのだよ」


 …こっちの世界でもお風呂があるんだな?…。


 それにしてもこの村、思ってたより質素じゃないな普通にレンガや木製の、豪邸とは決して言えないまでもそれなりに綺麗で大人が余裕で3、4人くらせる様な、日本でもド田舎以上、都会未満ぐらいの素朴な作りの家が数十件かなりのスペースを開けて立っているな。


 畑や小さい池などもあって落ち着く。


「ここがこの村の宿屋かな?」


「ああおそらくそうだろう」


 俺が村を見てそんな事を思っているうちにこの村の宿屋らしき所を金髪女とリーダー男がみつけた。


 ハッキリいっておおきめのビジネスホテルだ、村なのにかなりいい宿屋だな…木製の様だが余裕で俺の世界でも通用するぐらいのレベルだぞ。


 だが一つ問題がある……。


「すまないが俺はお金を持ち合わせていないのだが…」


 そう俺はこの世界のお金をまだ持っていないのだ。


「ああわかっている、俺達のチームに入ったんだ、ここはチームの活動資金で一緒に払うに決まってるじゃないか」


「すまないな、ありがとう」


「天さん気になさらないで下さい。 ラムちゃんをここまでおぶってきて貰っただけで十分働いてくれてますわ」


「それこそチームの一員になったなら当然だよ弥生さん」


 むしろ猫少女をおぶる事に関してはこちらがお金を払ってもいいぐらいだ。


「や、弥生でいいですよ…」


 少し赤くなって大和撫子がつぶやいた……だが。


「いや、入ったばかりでまだ冒険士の資格すら持ってない新米以下の俺が皆さんを呼び捨てにするのは忍びない、本当なら言葉遣いも敬語にするべきなのだろうが最初に会話した時この口調だったから直すのもどうかと思ってな」


「それでいいと思うのだよ。 しかし天は今時珍しいぐらい硬派なイメージだな、それも山育ちがプラスしているのかな」


「凄く好感が持てます…」


「……さっさと受け付けを済ませるぞ」


 ……大和撫子、俺を贔屓した事をあまり言わないでくれ、お前の後ろのシスコンが凄い目で俺を睨んでいる…。


「…ムニャムニャ」


 そして猫少女は本当に爆睡だな。


「案外中も綺麗だな」


「確かになのだよ」


 リーダー男と金髪女に同意だな、凄い掃除が行き届いていてかなりこ綺麗にされている。


「では私が受け付けしてきますね」


 大和撫子が受け付けに歩いていく。

 そしてすぐに戻ってきた…早くね?


「皆さん、依頼主の村長さんが私達の為に宿の部屋を取っていて下さってたみたいですのでここはタダでいいそうです」


「それは有難いな」


「なのだよ」


「ただ、ええと4人部屋らしくて天さんの分のベットが足りないとか…」


 ああもっともだな。


「問題ない、なんなら部屋の床に寝ればいいからな、自分で言うのもなんだが山暮らしは逞しいぞ」


「それは駄目です!!」


「そ、そうか…」


 俺はそれで問題ないんだがな?それより男女5人が一晩一緒の部屋の方が問題あるな、まあ親戚3人+マスコット猫1人だったから俺がいなければ問題なかったのだろうが。


「それは部屋で一休みしてから考えればいいのだよ。 なんなら天はボクと一緒に寝ればいいのだよ」


 金髪女、それは色々と俺の方が大問題だ…まったくこいつは本気か冗談かの区別がつきづらい、見た目ボーイッシュなのに中身は小悪魔か?


「ジュ、ジュリさん!」


「弥生はうぶなのだよ」


「遊んでないで早く用意して貰った部屋に行くぞ!」


 リーダー男が話しを切り上げて用意された部屋に向かった。


「こりゃまたいい部屋を取ってくれたんだな…」


「本当ですね兄様」


 ……広くね?この部屋、普通に(はちにん)ぐらいで泊まれるぞ?お、二人用ぐらいのソファーもある、俺の寝床はあそこに決定だな。


「いや〜村長さんも気が利くのだよ」


「とりあえずラム先輩をベットに寝かせたいんだが何処でもいいか?」


「ラムちゃんはいつも窓ぎわに寝たがるので一番奥のベットに寝かせて貰えますか天さん」


「了解した」


 子供かよ…って子供だったな猫少女はそして大和撫子はお母さんか?


「まだ起きないのかラムは?まったく冒険士の自覚が足らん」


「まあそういうなよ淳、さっき天も言っていたがあの山道を登ってきただけでも成長しているのだよ。 では早速ボクはお風呂に入ってくるのだよ」


「私も行きますジュリさん」


「俺は皆さんが帰って来てからでいい、もしラム先輩が起きて誰もいなかったら今の状況がわからなくて混乱してしまうかもしれないからな」


「それはあるかもな、…よし!では初めに弥生とジュリが風呂に入って来て後から俺たちが行こう」


「わかったのだよ、ではお風呂に行こうか弥生」


「はい、ジュリさん」


 そういって二人が部屋から出て行った。


「リーダー、俺はここに寝かせて貰うな」


 そういって今、俺とリーダー男が腰掛けてるソファーを手で軽く叩いた。


「そうか、すまないな天」


「いや、さっきも言ったが俺は新米以下だ気にしないでくれ」


「そう自分を下にしなくてもいいと思うがな?」


「こういう事はしっかりしたいたちでね」


「そうか……。 改めててこれだけは言わせて貰う…弥生の盾になってくれて本当にありがとう!」


 リーダー男がソファーから立ち上がって俺に頭を下げる。


「山でも言ったが対した事はしてない、お礼ももう弥生さんやリーダーから言われてるから十分だぞ」


「それでも弥生は俺にとってかけがえのない大切な妹なんだ、どれくらいお礼を言っても足りない」


 だったら俺に対する態度をもう少し柔らかくして欲しいんだが…。

 大和撫子が俺に優しくしたり褒めたりするとすぐ睨むし…。


「妹か、俺は一人っ子だからわからないがやはり兄妹は大切だよな」


「ああ、それともう一つ、弥生はあの歳でまだ男性経験がないんだ。 俺達と違いな、だからそういう所も気を遣って欲しい、もし弥生を悲しませる様な事をお前がしたら俺はお前を許さん」


 リーダー男がいつになく真剣な顔で言ってきた、はぁ〜大和撫子やっぱ経験無いんだ、でもあの歳ってまだ15だろ?別に普通じゃないのか?それとお前が経験者なのはわかったが俺はまだ童貞(さくらんぼ)ですよ?素直に言うべきか……


「気になったんだが経験とはなんだ?俺は一般常識に疎いから予想がつかないんだ。 もしなにかやらかしてしまってからじゃ遅いからな、弥生さんを悲しませてしまうかもしれない前に教えて欲しい」


 知識がないフリをして探ってみるか。


「そういえばお前は山育ちで父親に育てられたんだったな。 そしてその父親からも最低限の知識しか教えられてないみたいだから遠回しの言い方じゃわからないか、経験とは子供を作る行為の事だこれでもまだわからないか?」


「ああなるほどその事か、ならわかるが俺はまだ、その、そういう経験?がないのだが……」


 なんで異世界に来て一日目で知り合った男に俺のトップシークレットをしゃべらにゃならんのだ!!そしてリーダー男!お前はそんなに驚くな!


「いや…そうか…山育ちなら、いやしかし…だがやはり山育ちならそれもあるか?」


 山育ち馬鹿にし過ぎでしょ!いやまて俺は今16だよ?……本当は32だけど…とにかく16なら経験してなくても普通だと思いますが!!!


「俺の歳で、その、経験がないのはそんなに珍しい事なのか?」


 俺は恐る恐る聞いた。


「あ、ああすまん、今時珍しいなと思って、いやこれじゃ答えになってないな。珍しい、人間の男は大体10、11歳でそういう経験をするからな…」


「そ、そうなのか…?」


 ある意味、魔技よりビックリしたわ!!


「というよりも義務づけられてるんだよ学園で、 授業に生命の授業というのがあって担当の数人の講師がそういう事を自分の体を使って教えてくれるんだ」


 なんて素晴らしい授業があるんですかこの世界には!!


「女もか?」


「いや、女には授業自体はあるが筆記だけで実技はないな、それに女の場合は体が出来てない子供の時にそういう事をさせるのは危険だからな」


 確かに10やそこらの少女にそれはキツすぎるな。


「お互いに了承していれば問題ないがな」


 了承してたら法的には大丈夫なの!?


「だがそれだとリーダー達の様な男子はどうなるんだ?それに女講師も嫌がったらそういう事はできないんじゃないのか?」


「俺達は子供だったからそれが当たり前の事だと思っていてな、まず間違いなく男な身を委ねるよ。 女講師の方々はなんというか……子供好きな方多くてな…皆さん。自分から生徒を選らんで進んで教えていた。 俺なんか1回でいいのに講師の先生10人全員と、その、授業をした……」


 ……あ〜、講師の人達みんなショタ……まあ好き者なのね、そりゃそういう人種にとってそんな授業で合法にやり放題なら天国だよな?そしてリーダー男、10歳で経験者二桁とか……久々に泣きそうなんだが…まあリーダー男の子供時代なら超美少年だと思うから大人気だったのね。


「そんなに当たり前のようにそういうことをして、その、子供とか出来ないのか?」


「……これも説明する必要があるみたいだな。 出来ない、というよりも出来なくしているというのが正しいな」


「つまりどういう事だ?」


「生命の授業の目的の一つがまさにそれなんだよ。 生命の授業では最初に、そういうことをしても子供ができなくするように出来る魔技を覚えさせられるんだ。 で、その実技で女講師達にその魔技を使いながら行為を行う」


 なんと!ではこちらでは避妊具(コンドーさん)がわりの魔技があると!便利だなそれ、でも…。


「魔技を使うには確か魔石がいるんだよな?」


「当ってるし間違ってもいるな、魔石を使うのは生成する種類の魔技で生命の魔技は魔石がなくても使える、まあ魔石で強化して使うのが生命の魔技でも一般的だが、この魔技に関しては強化する必要がないからな」


 確かに、使えば妊娠しない魔技の強化なんてしてもその上なんてないからな。


「そしてこれは普通に女も使える、しかも女の方が小さい頃に教えられる」


「つまり世の中ではお互いが望まないと妊娠しないということだな?」


「ああ、まさしくその通りだ。どちらか片方が望んでも他の片方が望まなければ子供は生まれない」


「……ふえ?……ここどこですか?!ご飯まだですか?!」


「「…………」」


 お前はどんなタイミングで起きてんだよ!てゆうか知らない所で目を覚まして一番最初に心配する事がなんで飯の事なんだよ!!


 だがありがとう!なんか俺の荒んだ気分が和みました!


「やれやれやっと起きたかラム」


「ふえ?」


 そしてリーダー男はラムに今の状況と経緯を説明した……いや、宿に来るまでの説明でよくね?なんで俺が童貞(さくらんぼ)なのもいうのよ?


「天さんごめんなさいです!!凄いご迷惑をおかけして、ごめんなさいです!」


 凄い謝ってるな猫少女、でも気にするな、俺にとっては逆にお礼さえ言いたい素晴らしい体験だった。


「全然気にしないでくれラム先輩」


「ふえ?そうですか?すみません凄い天さんの背中が心地よくて…。 それとあたしは呼び捨てでいいですよ!」


「それは駄目だ」


「はう〜…」


 こういう事はきっちりしておきたい性分なんでね。


「そういえばラム先輩もその魔技使えるのか?」


「え?は、はい!普通に使えますね、ただあたしの場合はまだ使わなくても大丈夫です」


 ああ、まだなのね。


「そういえば亜人の男も経験は早いのか?」


「ハイです!というより恐らく亜人の男性が人型で一番早くそういう事をすると思います。 みんな10歳未満で経験しますから」


 一桁!!……もう絶対に自分の常識を信じない。


「それには理由があるのか?」


「ハイです、元々亜人は殆どが女です。 純粋な亜人の男性は亜人全体の1割もいませんからねです」


 そりゃまた少ない。


「そして純粋な亜人の男性は種の繁栄に多大な貢献をしますです。 なんせ動物ならどんな種類でも種付け出来ますからです。 で、近くの森林や山に入ってはそういう行為を人型以外の動物としますから自然と10歳未満で経験しますです」


 ぱないな…、そして節操がなさすぎるだろそりゃ!まあ相手が人型じゃないだけ俺的には救いだが。


「その話だと妊娠動物が後をたたんだろ?」


「いいえです、確かに普通に考えればそうなのですが亜人の男性は動物ならなんでも妊娠させられますがそれには条件があります」


「条件?」


「条件というか…えっとです、さっき言ってた避妊の魔技の逆の魔技を使うということです」


 なるほど確かに避妊の魔技があれば妊娠強化の魔技もあるか。


「その魔技を使えるのが亜人の男だけなんだよ天」


「はいです!そしてそのやり方を教えて貰えるのが成人、亜人だと18歳になった男性だけなんです」


 ああ、色々繋がったは、とゆーか18歳で覚えるとか18禁魔技と俺のなかで認定しよう。


「色々教えてくれてありがとうラム先輩」


「い、いえいえです!!」


 まさか猫少女に何か教えて貰えるとは…やっぱりこの子もこの世界の住人だった…。


「ラム、そういえば弥生とジュリが風呂に入ってると思うからお前も入ってこい、あいつらが行って15分ぐらいしか経ってないから多分まだ入っている」


「あ、はい!わかりましたです」


 そういって猫少女は部屋を駆け足で出て行った、転ぶなよ…。


「しかしまあ知らない事が沢山あるな、世の中には」


「これから覚えて行けばいいさ、俺たちも協力するしな」


「ありがとうなリーダー」


 素直に俺はそう思った。


「ちなみに亜人はあんな魔技を使えるから人型のなかでは断トツで多い、ざっと350万以上だと聞いた事がある」


「そりゃまたかなりの割合だな」


 世界人口500万のうち350万が亜人とかかなりの比率だな。


「まあそれでもそんな魔技を使えて女も多い種族にしては少ない方かもな」


「リーダーの意見に同意だな」


 少しして女性陣が帰ってきた…なんで金髪女は俺の方を見てニヤついてるんだ…。


「よう天。天然記念物(さくらんぼ)らしいじゃないか?どうだお姉さんがなんなら相手してやるのだよ」


「ちょ、ちょっとジュリさん、不謹慎ですよ!」


「そうですよジュリさん」


 …最悪だ『そうですよジュリさん』っじゃねえよ猫少女!お前がバラしたんだろこの状況からみて!あ〜〜口止めすんの忘れてた!!……泣きたい…。


 こうして俺は異世界に来たその日あった者たち全員に自分のトップシークレットを知られてしまうのであった……。


 昨日の夜は散々だった。


 金髪女に弄られる弄られる、挙句に大和撫子まで俺に童貞(さくらんぼ)の事で同情してくる始末だ、大和撫子それは間違った優しさだぞ!余計惨めになる。


「いや〜、昨日の夜は楽しかったのだよ」


「俺は全然楽しくなかったがな」


「そう機嫌を悪くするなよ天、それにしてもまさか、お堅いイメージの天があんなに動揺するとはね、人肌脱いだかいがあったのだよ」


 そうこいつは昨日文字通り俺の前で裸になった……。


 勿論からかわれてるのが目に見えてわかったので無視したかったがそもそも不本意だが金髪女は超美少女でプロポーションも抜群だ普通にガン見してしまいそれでムッツリスケベだの実は硬派じゃないだの散々弄られる始末だったからな。


 俺はかなりの細目なのにやはり女は視線に敏感なようでこの金髪女は俺が少しでもそっちを見ると…「あ、また見た」っとか言ってくる始末…いや見ちゃうでしょ普通に?でもそのときは心の中でお礼を言っていた自分もいた……いいもん見せて貰いました!!


「いい歳した女子があんなに簡単に昨日今日あった異性に裸を見せるとか、どうかと思うぞジュリさん…」


「天さんの言うとおりですジュリさん!」


「散々ボクの裸をガン見しておいてなにを紳士ぶっているのだよ天」


「うっ…」


 くそ!これじゃ昨日のリーダー男だ、あんな弄られポジションはごめんだ。


「ジュリさんはああいうことに慣れているのか?」


 少し皮肉っぽい口調でそう言った。


「ああ、勿論なのだよ。 こお見えて人生経験豊富なのだよ、たかだか童貞に見られたぐらいで動じないのだよ」


「…ふぅ、とりあえずもうあんな事やめてくれ」


「いいのかい天、本当にやめてしまって?ニヤニヤ」


 …こいつはやっぱり小悪魔だ…そして金髪女!なにが人生経験豊富だ!16の小娘のくせに!俺なんか32年間の人生経験があるんだぞ!!……ほとんど戦いの歴史だが……。


「それはそうとリーダーはジュリさんの裸を見ても全然動じなかったな?」


「ジュリの裸など見飽きているからな、まだラムの裸の方が動揺するぞ…」


「…本当からかいがいがないのだよ淳は、こんな美少女の裸にこともあろうに慣れたなどと」


「お前は昔から天みたいなタイプをからかう時には必ず服を脱ぐからな…」


「私もジュリさんが人前で裸になるのはもうコレで何回目になるかわかりませんわよ……」


「あう〜、あたしは男の人の前で裸になりません〜」


 昔から露出魔なのね金髪女は…後、猫少女それは例えばの話だから本気にするな!


「安心したまえ、ボクは襲いかかる様な理性が弱い者の前では裸にならないのだよ」


「誰の前でも裸にならないで下さい!」


「ふむ、弥生それでは行為が出来ないのではないか?」


「そ、それは…えっと、あの…」


「所でこれからどうするんだリーダー?」


 俺は無理矢理話しの流れを変えた、お前は下ネタでみんなをからかうの本当に大好きだな金髪女!!後、童貞(おれ)には美少女の下トークとかかなりの苦行だからな!


「あ、ああとりあえず村長にリザードマンの件とこの宿のお礼に行く」


「昨日のうちに報告はやって置くべきじゃないのか普通?」


 こういう事は普通はすぐに報告するものだと思うが?リザードマンという脅威が村を困らせてたのなら尚更「もう倒したので安心して下さい」とか連絡するべきだ。


「一応昨日、私がドバイザーで村長さんには報告しておきましたから。 あちらも疲れているなら詳しい報告は明日でいいからと言ってくれましたので」


「本当に天は真面目なのだよ」


「普通だと思うが……そしてまたドバイザーか?やはりそれは便利な道具だな」


「何を言ってるんだ天?お前だって持っているだろ?」


「へ?天さんドバイザー持ってるんですか?」


 さてなんて言い訳するかな?そして猫少女、確かに俺は山奥育ちの設定だがお前に疑問をもたれるとなんか腹立つ…。


「実はこれは親父に貰った時計なんだよ」


 ある意味間違っていないと思う…。まあ時間と日付けだけを見る為だけに端末(スマホ)を持っているやつはまずいないがな。


「本当かそれは?」


「ああ本当だ、ほら」


 みんなが俺の端末(スマホ)を覗き込む、勿論パスワードロックは解除してない時計と日付けが出ているだけの画面だ、ちなみにこの世界の時間軸…時間と日付けは全く俺がいた世界と一緒だからこういう時には便利だ、只今7:30分。


「………ぷ、ぷぷぷ、ぷは!!」


「アーーッハハハハハハッハハー!!」


「に、兄様、ジュリさん、そんな笑っては……くふっ!」


「はへ?」


 猫少女以外の3人が笑いだした…まあわからなくもないが…猫少女はなにがツボなのかわからないようだ、とりあえず猫少女、さっき俺がドバイザー持ってた事に疑問を抱いた事を許す!


「天、ボクに笑い属性の攻撃をするとは中々やるのだよ……ぷふ!」


「俺はいたって真面目だ」


 てか笑い属性の攻撃ってなんだよ…。


「すみません天さん、余りにこった作りの時計だったので…っぷ」


「全くだ、これは俺がみてもドバイザーにしか見えんぞ!」


「え?これドバイザーじゃないんですか?」


 ……ああ、猫少女はツボがわからなかったんじゃなくてドバイザーじゃない事がわからなかったのね。


「元々ドバイザーには時計機能がないから間違いないのだよ」


「でも逆に助かるな、天がいれば正確な時刻がわかる」


「みんな時計は持って無いのか?」


「時計…時刻を知らせる道具に使われる魔石燃料はドバイザーと相性が悪くて私達みたいな冒険士は一緒には持って歩かないんです」


 成る程な、だからあんなになんでも機能が付いているドバイザーに時間や日付け機能が付いてないのか。


「一緒に持っていると全くドバイザーが使えなくなるのか?」


「いや、使えるは使えるがドバイザーの反応が鈍くなるのだよ、ボクの魔技も生成にかかる時間が増える。 だから魔技士などは必ずと言っていいほどドバイザーと時計は一緒に持たない」


「でも時刻が移動中わからないのは不便ですから冒険士はチームに1人は時計を持っている人がいますね」


「俺たちのチームの時計係がちょっとな……」


「ふぇぇ〜、時計忘れてすみません〜」


 ああ、やっぱり猫少女ねそこは、もう慣れたな…。


「まあ少しでも役に立てるならなんでもいいがな」


「お、やはり素直なのだよ天は」


「はい。そんな所がすごく好感がもてます!」

「……とりあえず村長の所に早く行くぞ…」


 だから俺を睨むなってシスコン…。

 俺たちはホテルの食堂を後にして村長の家に向かった。


「では、俺が行って報告してくるからみんなはここで待っていてくれ」


「わかりました兄様」


「余り待たせるなよ淳、ボクはまたせるのは好きだが待たされるのは嫌いだからな」


 いや、そこは待たすのも嫌いになれよ金髪女、やはりこいつは小悪魔だ…俺の警戒レベルを二段階上げとこ…。


「そういえばリザードマンはこの村を襲ったんだよな? それにしては村が被害にあった跡がないんだが?」


「村の外で村人が被害にあったんだと思います。 普通リザードマンクラスはこういう人型が多い所には現れませんから」


「そうなのか?」


「普通はそうなのだよ、弥生の言うとおりリザードマンクラスは人型が多い所にはまず現れない、最低ハイリザードマンクラスじゃないと村自体が脅威にさらされる事はないのだよ」


「リザードマンは人が食料じゃないのか?」


「最初に言い忘れてたかな?リザードマンというよりモンスターは魔素を吸収していれば基本腹が減らないのだよ。 まあそれでも人を食べるモンスターもいるが殆どは魔素を取り込めば事足りるのだよ」


「じゃあなんでモンスターは人を襲うんだ?」


「簡単なのだよ。 ボク達と理由はほぼ一緒で向こうも人型は脅威と認識しているのだよ本能的に、だから逆にこんなに人型がいる村にはまず来ない。 ほらボクらもモンスターの巣なんかに行かないだろ?」


 確かにそれなら納得出来るな、動物と変わらん。


「でだ、奴らは1人や2人なら誰でも襲ってくるのだよ。 だから村の人達が街道を歩いていたり畑を耕している所で鉢合わせになった時に襲われたんだろ」


「成る程な。そういえばリザードマンは群れたりしないのか?」


「基本モンスターは群れないのだよ。 別に違う種で敵対はしないが仲間意識もないからな、単体が普通なのだよ。 ただ勿論例外のモンスターもいるがね」


「ふへ〜、勉強になります」


 だから猫少女、お前は何故いつも冒険士の一般常識的なの事を知らないんだ?昨日俺に世の中の事を教えてくれたのはマグレか?


「それにリザードマンクラスの魔素を取り込んでるモンスターがそんなにうようよいたら困るのだよ」


「私もそう思います」


 一応アレでもDランクモンスターらしいからな、俺はGランクと言われても信じるが……。


「そういえば一番低いランクのGランクモンスターとはどんな奴らなんだ?」


「う〜ん、1番ポピュラーなやつはここら辺にはいないのだよ。 今日、ソシストの冒険士本部に行くだろうからその時に多分教えられると思うのだよ」


「今日1日でそのソシスト共和国?の冒険士協会に行けるのか?」


「余裕なのだよ」


「この村からだと、魔導バスの停留所が近くにあると思いますからそこからバスに乗って1時間30分でソシストの冒険士協会がある都市まで着けると思います。 そしてそこから歩いて20分ぐらいのところに冒険士協会本部がありますね」


 2時間ぐらいで着けるのか、近いな…それとやはりバスもあるのかこの世界は。


「あ、淳さんが出て来ました!」


 村長の家からリーダー男が出て来た。


「待たせたな、報告は終わったから早くソシストの冒険士協会まで行こう」


「待たされたのだよ淳、レディを余り待たせるもんじゃないのだよ」


「仕方ないだろ、村長になんども礼を言われたんだから」


 やれやれという感じだがそれでもリーダー男は少し嬉しそうだ、まあ感謝されるのは悪い気にはならないからな。


「そろそろバスの停留所に向かいましょうか皆さん」


「了解だ、弥生さん」


 こうして俺たちは魔導バスに乗りソシスト共和に向かった、バスに乗っている時に猫少女がずっと外をみてわーわー言っていたな、何故俺より珍しがっているんだお前は?まあ子供なら慣れててもそれが普通か…ちなみにバスは普通に現代にある田舎で走ってる様なバスだった。


 そして約1時間半立ちソシスト共和国の冒険士協会がある都市に着く。


「都会だな…」


 俺は正直にそう思った。 日本とはまた違うが中世より少し近未来な感じで大きな建物や住宅もありデパートらしき建物や図書館らしき建物もある、人が都市の大きさに比べて少ないのもあってかなり建物が際立って見えるな…道路も広くて車?も少しだけだが走っている、ブリキの車を大きくした様なやつだ。 ビルは流石にないがハッキリ言って俺好みの都市だな。


「天やはり都会は珍しいかい?」


 金髪女が興味津々みたいな感じで聞いてくる。


「あ、ああ凄い驚いているよ、まさかこんなに沢山の建物や人がいるとは」


 俺は多分金髪女が聞きたがっているだろう俺の感想を予想してセオリー通りに言葉を投げる。


「そうだろ、そうだろ、だがこれぐらいで驚いて貰っては困るのだよ」


「まだ何かあるのか?」


「ふっふっふ、冒険士本部を見ればわかるのだよ」


「それは楽しみだな」


「きっと驚くと思いますよ天さん」


「あたしも最初見たときは凄い驚きました!!」


 …お前は結構何時も驚いてるけどな猫少女…。


「後5分ぐらいで着くぞ」


「そういえば天さんにソシスト共和国がどんな国だか説明してませんでしたよね?」


「ああ聞いてないな弥生さん」


「では簡単に説明します。 まずソシスト共和国には王家や王族がいません」


 そこら辺は俺の世界と一緒だな、確か日本は共和国ではなく立憲君主国だアメリカやロシアが共和国だったような気がする。


「私達の先祖や英雄、冒険士協会でお金を出して土地を買いそしてそれらの土地が合併して国ができたのがソシスト共和国です。 なのでソシスト共和国の政治家や国の発言力が1番高い者は国民の投票で決まりますね」


「へえ、そうなのか」


 うん、やっぱり一緒だな。


「そして、その方はここ60年間ずっと同じ方ですね」


 大統領が、60年間一緒とは…流石異世界。


「その人ってやはり神様から寿命を貰った英雄なのか?」


「はい、そのとうりですね、そして冒険士のトップであり世界で5人しかいないSランクの冒険士でもある方です」


「あのおじさんそんなに凄い人だったんですか!!」


 いや猫少女、冒険士のトップってだけで凄いし、それに大体予想つくだろランクがどの程度か…やはり強いんだろうな。


「ラムちゃん、冒険士協会のトップってだけで凄い事だと思うんだけど…お願いだから本人の前で絶対言っちゃダメですよ」


「はう〜、ごめんなさいです」


 大和撫子にも俺が思ったようなツッコミ入れられてるし、お前は感情を表に出しすぎだ!……だが和むからよし!


「着いたぞ、ここが冒険士協会本部だ」


 リーダー男が指刺した建物を見て俺は驚愕した、そこには城かと思う程のばかデカイ建物があった。


「これは確かに驚くわ」


 そして俺はここで更に驚く事実を知った。その言われた言葉を俺は生涯忘れないだろう。


「デカイな……」


 とんでもなくデカイ建物だな、これ全部が冒険士協会本部か?おそらくだが5階6階だてじゃ気かないだろ、まるで超大型の百貨店だな……。


「これが私達冒険士の本部ですね、冒険士本部もそうですが他にも食事処や武器屋に防具、アクセサリーや衣服や魔石製造場など様々な店も多くありますね」


 まんま百貨店だった。


「あう〜、ここに1人で入ったら迷子になってしまいます〜」


 間違いなく猫少女ならなるな。


「今日はシスト大統領はいるだろうか?」


「多分いらっしゃらないと思いますねジュリさん、多忙な方なので…」


「そのシスト大統領って言うのが例の?」


「はい、冒険士の最高責任者にしてソシスト共和国の大統領ですね。 前にラムちゃんが冒険士になる時は偶々いらっしゃったのですが今日はまずいらっしゃらないかと」


 一回あって見たかったが…まあ国の大統領ならどこかしらに本人じゃなくても写真的な物があるだろ。


「冒険士協会の資格取得の受け付けは4階だ、早く行こう。 まだ昼前だがもう少し経ったら混むからな」


「了解だリーダー、所で俺は普通に冒険士の資格を取れるのか? 色々世間知らずで何もわからないんだが…」


「おそらく問題無いだろ、最初は見習いのFランクから入るからな。 誰もチームのメンバーがいなかったら色々面倒な手続きが必要だが俺達の紹介があればすぐに冒険士見習いの資格が貰えると思うぞ? ラムが取れたぐらいだから天なら余裕だ」


「説得力があるな」


「はぅ〜〜、酷いです2人とも…」


 事実だから仕方ない猫少女。


「とにかく4階に行くのだよ」


 そして俺達はエレベーター…もやはりあったんだな…で、4階に着いて受け付けに向かった。


「ここも広いな」


「俺達は慣れてこれが普通なんだがな」


 とても広いロビーだ、そして受け付けには受け付け嬢が4人程いた。


「では、俺と天は受け付けと依頼の達成の報告と報酬を貰ってくるからお前達はそこで待っていてくれ」


「わたりました兄様」


「天、緊張して転んだらだめなのだよ」


「はぅ〜、それはあたしがやってしまった事ですよねジュリさん…」


 お前らはもう少し緊張感をもて!


「天、ついてきてくれ」


「了解だリーダー」


 そして俺達2人は受け付けに行き。


「Eランク冒険士の一堂淳だ、リザードマン討伐依頼の達成報告と報酬受け取り、そしてここにいる冒険士希望の者の資格取得の手続きをお願いしたい」


「かしこまりました、ではドバイザーをお願いします」


 俺はリーダーの隣でやり取りが終わるのを待っている。


「依頼達成を確認出来ました。 報酬はドバイザーに振込みますか?それとも現金でお渡しいたしますか?」


「振込…いや、現金で頼む」


「かしこまりました」


 ん?振込みじゃないのか?まあどっちでもいいか。


「では次にそちらの方の冒険士資格取得の講義の手続きをいたしますが一堂淳様の紹介で大丈夫でしょうか?」


「それで構わない、さあ天」


「花村天です、よろしくお願いします」


「花村天様でございますね、市販のドバイザーはお持ちでしょうか?」


「いえ持っていません」


「かしこまりました、ではその手続きも資格取得講義の後にいたしますので簡単なアンケートと書類の記入をお願いします」


「わかりました、それと俺は読み書きが余り得意じゃなくて上手く書類等が書けるかわからないのですが?」


 そう、ここでは日本語が通用するし数字読みも一緒だが、だからと言って文字の読み書きも大丈夫とは限らない。


「かしこまりました、ではこの短編小説を読めるでしょうか?」


 そう言って一枚の紙切れを渡された、そこには2000文字程度の本当に簡単な短編小説が載っていた、普通に読めた、よし!文字も日本語で何故かカタカナもそのままだ。


「問題無く読めました」


 そう言って受け取り嬢に紙切れを返す。


「それなら大丈夫ですね、ではこの書類とアンケートをそこにある見本を元に記入して下さい」


「すまないリーダー少し時間がかかると思うから弥生さん達の方で待っていてくれ」


「気にするな天、それぐらいの書類とアンケートならすぐに終わるだろ?ここで待ってるよ」


「そうか?ありがとう」


 俺は見本を元に書類とアンケートを記入していく、書類は決められた事をアンケートは適性不良にならない無難な答えを書いて10分ほどで書き終わり受け付け嬢に渡した。


「これで大丈夫でしょうか?」


「……はい、問題ありませんね、では講義の準備が出来ましたらお呼びいたしますのでそれまでお待ち下さい」


「わかりました」


「天、意外にここまでスムーズだったな?ラムなんて今の天と同じ事をしおわるまで2時間近くかかったぞ…。」


 いやいやいや、それはかかり過ぎでしょ猫少女…。


「偶々受け付け嬢が親切でわかりやすかっただけだよ」


「そうか?まあとりあえず弥生達の所に行って天の講義が始まるまで待つか」


「了解だ」


 そうして俺とリーダー男は大和撫子達のいたロビーのソファに向かった……ん?誰かいるぞ?


「ち、嫌な奴にあったな…」


「リーダー?」


 明らかにリーダー男の顔が不機嫌だ、そしてそれは大和撫子、金髪女も同じだな?猫少女はあわあわしている、あれは何時もの事だから流していいだろう。


「よう、淳!」


「お前も来てたのか(りょう)……」


 1人の男が話掛けて来た、ハッキリ言ってザ・チャラ男だ、まあイケメンの部類にははいるかな?それにしても…う〜ん見事なうんこ色をしているな、名前は亮か。


「リザードマンに手こずったんだって?そんなんで弥生を護れるのか?」


「……それを言いに来たんならもう用はすんだろ?向こうに行け亮…」


「いや、それも言いたかった事の一つだが、本題は弥生とジュリのスカウトだ、こんなリーダーがやってるチームよりも俺の所に来ないか?ってな」


 …嫌な顔をする男だな…しかもまんま嫌な奴だ…大和撫子と金髪女も心底嫌そうな顔をしている、恐らく何度も断ってるのに諦めないんだろ、よし肌の色もそうだがこいつは俺の中で糞男(くそおとこ)に決定だ。


「さっきからずっとその事についてはボクも弥生も断っているのだよ…。 しつこい男はもてないのだよ亮」


「………」


 うんざりした顔をしているな2人とも。


「だってよ〜、俺の方が絶対上手く立ち回るし俺自身も淳より全然強いし!俺の所に来れば2人とも安全に冒険士の活動をできるぜ?」


「くっ!とにかく今日は新人も入ってこれから資格の講義とうで俺達は忙しいんだ!さっさと向こうへ行け!」


 リーダー男がそういうなり糞男は俺の方を興味なさげに一瞬見てまた視界を大和撫子と金髪女に戻す…完璧に舐めてるな…よし!


「はじめましてだな、俺の名前は花村天、ずっと山育ちだったが山奥でリザードマンと戦っていたリーダー達に出会って冒険士の仕事に惹かれて山をおりて冒険士をする事を決意した。 右も左も分からない田舎者だがよろしく頼む!」


「ふ〜ん、どうでもいいけどいきなりタメ語?」


「恐らくリーダーと同じぐらいの感じだと思うが…何か問題あるかなリーダー?」


 俺は糞男に顔が見えない様にリーダー男にニヤリとほくそ笑みながら聞いた。


「いや、全く問題ないと思うぞ天!亮ならタメ語でも全く問題ない!!」


 リーダー(あつし)は途端に機嫌が良くなった、よしよし次は…


「亮、お前の方こそ天が自己紹介しているのに何も返さないのは失礼だと思うのだよ」


「ジュリさん気にしないでくれ、確かにリーダーやジュリさん、弥生さんにラム先輩は俺に初めて会った時にむしろ自分の方から自己紹介や挨拶してくれたが、それが冒険士の人達の常識とは限らないのだろ?」


 俺がわざとらしく言う。


「亮さん、冒険士の品位が疑われてしまいますし何より私達のチームに新しく入った新人の天さんが間違った常識を持ってしまうので自己紹介はしっかりして欲しいですわね」


 大和撫子(やよい)金髪女(ジュリ)も少し気持ちが晴れたようだ、そして糞男(りょう)は苦虫を噛んだ様な顔をしているな、さて次は…


「あわ、あわ、わわ」


 ちょっともう少しそこで大人しくしててね猫少女…。


「Dランク冒険士の中村亮(なかむらりょう)だ……」


「中村さんかよろしく」


 俺は糞男を見ずに受け付けの呼び出しはまだかなという素振りをして後ろを向きながら返事を返した。


「……花村とか言ったな?山育ちか、道理でみすぼらしい格好をしていると思ったぞ」


 俺の無地のTシャツにジーパンの服装を糞男は指摘する。


「ん〜、これが山だと動き易くてね、逆に中村さんは何というか動きづらそうな格好をしてるな、なぁリーダー、中村さんのズボンのベルトに無駄に着いてるクサリとか意味があるのか?冒険士の必需品とか?」


「いや、まるで意味がないな…ぷ、ぷっ」


「無駄なんだな?了解だ、じゃあ俺は絶対マネしない様にする!!」


「ぶ!ぷは!」


「………くっ、くくっ」


 猫少女意外みんな笑いを思いっきり堪えている…糞男は顔を真っ赤にして怒っている様だ、黒いから解りづらいが。


「…花村くん、結構良いがたいしてるみたいだけどちょっとこっちに来て近くで見させてくれるかな?冒険士の先輩としてアドバイス出来るかもだから」


 何かやるつもりだな…面白い!やれるものならやってみろよ。


 そう思いながら糞男の方に歩いていく。


「すまないな中村さん、ならよろしく頼むよ」


 そう言って糞男に近づいた瞬間、糞男は俺の正面から横に素早く回り込みながらそれと同時に片足を出してきた、いわゆる転校生に転校した初日に不良が足を掛けて転ばせるアレだ、絶妙なタイミングだな。


 だが甘い、猫少女なら転倒、他の3人なら足を引っ掛けてバランスを崩していたかもだが俺にはそんな足掛け通用しない。


 そう思いながら俺はその出された糞男の片足のカカトの所に引っかかったと見せかけて上に足をすくいそれとほぼ同時に糞男のもう片方の足に素早く足払いをして完璧に両足を地面から払った結果糞男はその場に結構な勢いで尻もちを着く。


「い……っつぅ」


「大丈夫か中村さん?」


 俺はまたわざとらしく聞く。


「あ、ああ…大丈夫…だ」


「すまない、いきなり中村さんの足が前に出てきて止まれなくてな」


「い、いや少し気分が悪くなってバランスを崩してな…」


「それは大変だ!そういえば確かに中村さんはさっきから思っていたが顔色がかなり悪い!まるで体調の悪い時の糞の様な色をしている!」


「な!!」


「ぶはっ!はっ、ははぁ!」


「くくっ、く、くぅ!」


「ぐ、ぐふは!やめてくれよ天、それ以上は腹がくるしいのだよ。 …ぶはっ!」


 3人とも腹を抑えて下向きで必死に笑いをこらえている、そして猫少女はまたツボがわからない様でキョトンとしている。


「こ、これはわざとこういう色にしてるんだよ田舎者!!」


「む、そうかこれはすまない。 なんせ俺は山育ちで世の中の常識に疎いからな、まさかそんな糞みたいな色に自分からなっているとは思いもよらなかったぞ」


「な、なんだと!!」


 ピンポンパンポン


『花村天様、冒険士資格取得講義の準備が整いましたので受け付けまでお願いします』


 時間切れか……。


「中村さんすまないな、講義の時間のようだ」


「ま、まてコラ!!」


「リーダー、弥生さん、ジュリさん、ラム先輩、言ってくる」


「ああ、天にはある程度講義の内容は会ったときに言ってしまったから退屈かも知れないがな」


「天さん、行ってらっしゃいませ」


「もう今のでほとんどやりとげた様な物だから後はオマケみたいなものなのだよ天…ぶふっ!」


「天さん…ご武運を!」


 みんな笑顔になった…いい仕事をしたな俺は…。


 いや猫少女だけ真剣に俺に敬礼してる…いや、別にただ講習受けるだけだからね?逆に金髪女はもう今のやりとりでほぼお終いとか言ってるし…まだ書類とアンケート書いただけですけど! 今のやりとりは資格取得とは全く関係ありませんけど!!


「あ、ああ言ってくるよ…」


 俺は受け付けに歩いて行き、そして講義を受ける部屋まで案内された。


「今から冒険士資格Fランク取得講義をはじめます。 約90分ほどかかりますのでご了承下さい」


「わかりました。 よろしくお願いします」


「でははじめます」


 ちなみに講義を受けるのは今の時間帯は俺1人の様だ、さっきの受け付け嬢のお姉さんがそのまま講義するのか?大丈夫なのか受け付けは?どっちでもいいかそんなことは…まあ90分は長いのか早いのかわからないがとにかく集中しよう。


 〜〜90分後〜〜


「これで講義は終わりです、次はこのFランク取得講義完了と書いてある札を持って5階にあるドバイザー情報処理室まで行って冒険士ドバイザー契約をして下さい」


「わかりました。 ありがとうございました」


「これから冒険士として頑張って下さいね」


「はい!」


 一応いい返事をしておく…そういえば受け付け嬢のお姉さんの後ろにデカデカと写っている写真か?あれがシスト大統領かな?チョビ髭のがたいのいいダンディなおっさんだな、身長も体重も俺と同じぐらいか?それにしてもどう見ても80以上(おれのよそうだが)には見えない、せいぜい40〜45だ、そしてやっぱり強そうだな。


 とりあえず俺は部屋から出てロビーのみんながいた場所に行く、90分も講義をしていたのでまだいるか少し不安だったがリーダー達は普通に雑談しながら待っていてくれたみたいだな。


「みんな待たせてすまない」


「お、天おかえり。 気にするななのだよ」


「お疲れ様です天さん」


「案外早く感じたな?もう90分たったのか」


「て、天さん大丈夫でしたか?」


 いや大丈夫って…お前はどんな講義を想像していたんだ猫少女?というかお前も受けた事あんだろ!


「あ、ああ大丈夫だったよ。 リーダーが言った様にほとんど最初にみんなに教えて貰った事の復習だったし」


「だろうな、では冒険士ドバイザー契約に行くんだろ?早く行こう、確か5階だったか?」


「そう教えられたな、そういえば中村さんは?」


 一応本人がいなくても糞男はまずいので中村さんと呼んだ。


「ぷっ、ぷふ!……ふぅ、あの男は天が言ってから一言二言嫌味を行って帰って言ったのだよ」


「そうか、何やら具合が悪いみたいだったからな」


 俺がとぼけた様に言う。


「あははは!!….はぁもう笑わせるな天!そしてとぼけるなよ?わざとやってたくせして」


 リーダーには、とゆうより猫少女以外にはバレバレだった様だ。


「ふぇ?天さんわざとあんな事言ってたんですか?」


 うんお前が気づいてないのは知ってた。


「思っていた事を言ったのは事実だぞ?ただみんなの空気が悪かったから面白可笑しく相手しただけだ」


「天さん案外黒いのですね…ただ私はこういってははしたないかもですがスカッとしましたわ」


「ボクもだよ天!本当にいい仕事をしたのだよ」


「ただ中村(あいつ)はなんであんなに…なんとゆーかリーダーに喧嘩を売る様な言葉ばかり言っていたんだ?誰にでもああなのか?」


「……まあ、あいつが自分より冒険士ランクが低い男を見下すのは何時の事なんだが、俺とあいつとは少しばかり因縁があってな…」


「本当にくだらない事なのだよ…。 亮が好きだった相手が淳の事を好きでね、それを淳が振ったから淳に何かと絡んで来るのだよ!」


「当時その女の子は兄様にべったりで兄様もかなり困らされていたので」


「…あまりに鬱陶しかったからもう付きまとうなと引き離したら大泣きされてしまってな……」


 …くだらないな本当に、逆恨み以外の何物でもないな。 まあリーダーは美形だから好きになられた女も余裕で一人二人いただろうからな、糞男もイケメンの部類だがリーダーに比べると足元ぐらいだギリギリ。


「くだらないひがみと逆恨みだな…そもそもそれはリーダーとその女の子の問題で中村さんには直接関係がない、もしその女の子の事が本当に好きなら嫌味ではなく男を磨きその子に振り向いて貰えばいいだろ、中村さんは」


「いい事を言ったのだよ天!!ボクもその意見に同意なのだよ!」


「はい!流石硬派な天さんですね」


 別に俺は硬派な訳じゃないんだがな…。


「その事はもういい…とりあえず早く天の冒険士ドバイザー契約を済ませよう」


「同意だリーダー、では5階のドバイザー情報処理室に」


 そして俺たちは5階のドバイザー情報処理室にに向かったそしてそこに到着した俺の感想は…うん、2年前に端末(スマホ)を契約した時と一緒だ…だった。



 ここである事件が起こる…。


「すみません新しくFランク冒険士になる花村天といいます。 この札を持ってここに行く様に言われたのですが」


「はい、承っております。 では札をお願いします」


 そう言われて俺は係りのお兄さんに札を渡す。


「はい、確かに。 では今からドバイザー契約を行いますが後ろの方々がチームの方でよろしいでしょうか?」


「はい、後ろの4人が俺のチームのメンバーです」


「わかりました、では花村さんがドバイザー契約を終わりましたらすぐにチーム回線を繋ぎますね」


 チーム回線とはおそらくそのままの意味だろう、ここは別に突っ込まなくても詳しい事はみんなに聞けばすむからな。


「わかりました」


「それではこの中から色を選んで下さい」


「ではコレで」


 俺はどれでも良かったので真ん中の青いドバイザーを選ぶ。


「かしこまりました」


 ちなみに冒険士専用のドバイザーはタダらしい、やはり命にかかわることだから協会の援助が大きいのだろう。


「では魔力契約に移りますね、そのドバイザーを握ったまま少し待って下さい」


「あの、俺は魔技を使えないんですが?」


「大丈夫なのだよ天、魔技を使えなくてもただ持ってるだけで天の魔力とドバイザーを繋ぎ契約をする儀式をそこの担当の人がやってくれる」


 なるほど〜、いや〜田舎者丸出しだな俺は…ちょっと恥ずかしい…。


「では初めますので私が契約の儀式を完了するまでドバイザーを握っていて下さい」


「わかりました」


 そう言って俺がドバイザーを握ってからすぐに担当のお兄さんが何やら祈りをしている、アレが儀式というやつだな。


 ふぅ〜、これで俺も晴れてドバイザー所持者になれるんだな、こういう機械を弄るのは何気に大好きだから楽しみだ。


 〜〜15分後〜〜


「おかしいな〜」


 担当のお兄さんが困った顔をしている、どうしたんだ?


「どうしたのかね?」


「あ、主任!」


 異変を察知してそのフロアにいた責任者の様な中年の男性がこっちに来た…本当にどうしたんだ?


「すみませんこの方のドバイザー契約の儀式をしていたんですがどうも上手くいかなくて……」


「ドバイザーの故障じゃないのかね?すみませんお客様、ドバイザーを少し見せて頂けますか?」


「わかりました…」


 そう言って俺は中年の男性にドバイザーを渡す、はぁ〜、そういうイベントは正直いらないんだが……。


「何も問題ないな…」


「おかしいな〜〜…」


 ドバイザーに問題ないみたいだ。


「しょうがないね、私が契約儀式をやってみるよ」


 そう言って中年の男性がドバイザーを返して来た。


「申し訳ありませんお客様、もう一度儀式をいたしますのでまたドバイザーを握って貰えますか?チームの方々等お待たせしてしまい本当に申し訳ありません」


「申し訳ありません!」


 中年男性と最初の担当のお兄さんが深々と頭を下げて俺たちに謝ってくる。


「いえいえ、…そういう訳だからみんなもう少し待って貰えるか?」


「別に構わないのだよ」


「ああ、講義に比べたら全然待ってないしな」


「はい、ゆっくり行きましょう天さん……あ、ラムちゃんここでは寝ちゃダメ!」


「……ふぇ?ご飯ですか?」


 お前は本当に子供だな猫少女…そしてなんで何時も起きるとご飯の心配するんだよ!


「では今からもう一度、今度は私が儀式を行いますのでドバイザーを握って下さい」


「わかりました」


 そういって俺はまたドバイザーを握る、今度の人はここの責任者っぽい人だから安心かな?


 〜〜15分後〜〜


「おかしいな……まてよもしかしたら…いやまさか、でもそれしか…」


 中年の男性が考え込んでいる…え、なに?また失敗したの?仲間達も少し同様しているな…。


「すみません、お客様。少しのあいだ手を握らせて貰えませんか?」


 中年の男性が聞いてきた。ハッキリ言って握手でもない限り中年のおっさんと手なんか握り合いたくないが、何やら緊急事態のようだから仕方ない。


「わかりました……」


「では」


 俺が渋々了承すると、おっさんは優しく俺の手を握ってきた。なんか変な気持ちになった。


「――なっ、まさかこんな事が!」


 しばらくして、おっさんは目を見開きながら信じられない物を見るかの様に俺と自分の握り合ってる手を見ていた……何があったんだよ!


「原因がわかりました……」


 そしておっさんは一回咳払いをして、


「えー、お客様はその……魔力が無い、ようなのです……」


「? と言いますと?」


「言葉の通りです。私も正直信じられないのですが……お客様の中には、その、魔力が全く存在しないようなのです」


 …………………………………………はい?


 

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