記憶がトぶほど凄惨な――
なんとか持ち直せたにしろ未だにショックは大きく、その日は食事も喉を通らなかった。
だが食事などよりも優先するべきことがある以上、そんな事はどうでもいい。
こっそり渡された紙に書いてあることを確認する――。
今の私には、それよりも優先する事などない。
一人きりの独房――。確認するにはうってつけのシチュエーションだ。いや、他に選べるシチュエーションもない。見るなら今だ。
服の中に入った紙きれを――現在すがれるだけの唯一の希望を、震える手で取り出す。
内容を確認するのには、覚悟が必要だった。
唯一の希望が打ち砕かれる。
そんなショックに、二度も耐えられるとは思えなかったからだ。
乱れる息を殺し、私は手に握られた、小さな希望へ目をやった。
『話を合わせろ、強姦された身寄りのない女』
見慣れていたわけではないにしろ、その字には見覚えがある。
元の世界で、セシリアの部屋にあった走り書きと同じ筆跡だ。
その記憶から、この紙きれの字も、あの書置きも、セシリアの書いたものであるという事が分かった。
ひとまずは安心していいんだよな……。元の世界にあった書置きと同じで、簡潔な内容だが、こっちの方がまだ分かりやすい。取調室での会話が、意識しているわけでもないに頭に浮かんできた。
『後日またお話しましょう』
成程、そういうことか……。