プロローグ
当たり前の事だが、人生というものは何が起こるか分からない。
例えば今朝、お気に入りのスニーカーの靴紐が切れたり、数学の抜き打ちテストがあったけど予習してたと事は全く違うとこが出たり、食堂の割り箸が割れてなかったり…あー自販機に1000札を入れてジュース買ったら全部10円玉でおつりが来たのは驚いた。アレはホント驚いた。これも追加しとこう。
――俺は運がない。
そう、革命的にない。地雷を自分で踏んでいるようなもんだ。いや、むしろ地雷が俺の方に降ってきているだろう…こんな愛され方ノーサンキューなんだが向こうはそんな事聞いちゃいない。容赦なく降ってくる、そう容赦なく。おかげさまで学校ではちょっとした有名人になり『アンラッキーマン』という二つ名も頂きました。鮮烈な高校生デビュー、やったぜ。
唯一の救いは志望してた高校に入学出来た事だ。幸い、勉強はそこそこ出来るので名前の書き忘れやマークシートの場合は一段ズレてたりがなければとりあえずは大丈夫…それでも何度も見直しはするけどね。皆もテストの時はちゃんと見直しはしよう、俺との約束だ。
そして放課後、今は教室にケータイを取りに戻ってる。最初から最後までどうしてこうもツイてないのか。ふと窓の外を見ると運動部が活動してる、野球部やサッカー部、陸上部にテニス部…あっ、あのテニス部の子可愛い、ちょっと嬉しい。
「せめて人並みの運があればなぁ…」
人並みの運がどれくらいのものか分からない。それが頑張って手に入るものならとっくに手に入れてると思う。これまで買った開運グッズは数知れず、だけど全く効果がない。思い切って水晶玉とかも買った事もあったけど真っ二つに綺麗に割れた、19800円がたった1日でパーだ。段々嫌な気分になってきた、いけないいけない、これだと折角ちょっと幸せになった気持ちが台無しだ。
自分の教室の前だ、1つため息をつき僕はドアに手をかけた。
「あっ…」
僕は息を呑んだ。そこには女子生徒が1人、机に腰を掛けて窓の外をじっと見ていた。窓は開いておりそよ風でカーテンが揺らぐ。彼女の腰まである長い黒髪も揺らぎその光景はまるで絵画のようだった。気づかれないように写メでも撮ろうかと思ったけど、生憎ケータイは机の中だ。ホントツイてない。
「…ん?やあ、少年。忘れ物かい?」「あ…ああ、ケータイ忘れちゃって」
彼女は俺に気づき声をかけてきた、若干俺の声が裏返る。
「そのケータイってこれかい?ほら、投げるよ」
彼女は机の中からケータイを取り出し、そして投げた。それもそのはず、腰かけてた机は俺の机だ。一瞬の事で驚いたがケータイは綺麗な放物線を描き俺の手の中だ。
「あっ、ありがとう。じゃあ、さようなら…」「待ちたまえ少年、君に話がある」
彼女はそう言うと俺が開けっ放しにしていたドアを閉めた。2人だけの空間、廊下を歩いてる生徒や教師はいない。遠くの方で運動部の掛け声は聞こえる。自然と鼓動は早くなる、こんな展開は生まれて初めてだ。彼女は俺の方へと振り返り、声を発した。
「少年、私と友達になってくれ」




