とある青年の過去
血塗られた過去
国の為にと剣を振るった僕
浅はかな未熟者で
良かれと思った行為が愚かな争いだと知ったのは
全てが終わり
後悔すら許されない世界となった後
戦う為の力しか持たない僕は
英雄だともてはやされながら
孤独になった
これからどうすればいいのか
これからどうしたいのか
義務も権利も見つからず
生きているだけの日々
息しているという意味を求め辿り着いたのは
“贖罪”という名の逃げ道
国を出て 海のそばにある
争いが原因で親を失った子供たちが暮らす
小さな施設で働き始めた
何もかもを自分たちでしなければならない
決して豊かではない生活
それでも英雄扱いされた頃より
ずっと温かい日々
反省するどころか癒されていた僕は
自分の立場を忘れかけていた
君と出会ったのはそんな折
施設の近くで倒れていたところを助けたのが始まり
素性は決して明かしてくれなかったけれど
すぐ隣で君の人柄に触れて
次第にひかれていってる自分に気がついた
ある日 国がまた争いを始めたと風の噂で聞いた
それを耳にした途端 君は唇をかみしめて
父と母が死んだ意味なんて結局なかった
言葉を吐き捨てた
僕が起こした争いのせいで
君の大事な人は命を落とした
つまり僕は君にとっての仇敵
ならば いっそのこと僕は消えればいい
最初からそうすればよかった
切り立った断崖の上で
醜く自嘲した
そのまま海に身を投げようとした時
君が僕を止めた
何故 ここに来た?
何故 仇敵の僕を助けた?
何故 君は優しいのか?
自暴自棄になった僕の独白
君の唇に止められた
思わず言葉を失うと
君は喜怒哀楽がないまぜとなった顔で
バカな人
泣きながら笑った
もういいの
そう言われて抱きしめられて
僕の償いは
終わりを告げた
初めてわかった気持ち
僕は他人に許されたかった
他人に謝りたかった
海が見渡せる丘の上
僕は誓う
これからは大切な人の為に生きると
息している本当の意味を
やっと見つけられたと
永眠る両親に向けて
そっと微笑んだ
~END~
短編というよりも詩に近いものとなりました。
英雄と呼ばれた人のその後はどんな人生なのか、想像してみました。




