恋<友情 = 失恋
『ねぇ、悠?』
「なに?」
『どう…かな?』
「うん、いいんじゃない?」
『似合ってる?』
心配そうに聞いてくる夏樹がめっちゃ愛しい。
「おぅ、似合ってるよ」
『ホント?』
素直に喜ぶ夏樹も愛しい。
「何処か行くの?」
『うん、お出かけ。』
「へぇ〜、またクラスのやつか?」
『ううん、今日は別の子。』
「もしかして、男?(笑」
冗談のつもりで言ったら、夏樹は黙ってしまった。
「男…なんだ…?」
『う、うん…』
「もしかして…章…?」
『うん。』
「そういや夏樹、あいつのこと好きって言ってたもんな。楽しんで来いよ。」
『うん、ありがと。』
「まだ、行かなくていいの?」
『あっ、行かなきゃ』
「頑張れよ。」
『うん、ありがと。』
ホントは嫌、すっげー嫌。
俺は…ずっとずっと夏樹が好きだった。
もちろん、今も。
でも…アイツは章が好きなんだ。
何度も諦めようと思った。
だけど…諦め切れないんだ。
♪〜〜〜
その夜、俺の携帯が鳴った。
「はい、もしもし。」
『あっ、悠輔?」
「なんだ、章か。」
『今、ちょっと外出れる?』
「おう。」
『じゃ、いつものとこで。』
俺は、重い身体を起こして外に出た。
『あっ、こっちこっち!!』
「なんだよ、急に。」
『あのな、相談があるんだ。』
「章からなんて、珍しいなぁ。」
・
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・
・
・
〜〜〜翌日〜〜〜
『悠、おはよ。』
「おはよ。」
『どうしたの?元気ないけど…』
「そんなことないよ?」
『ホント?』
「あぁ。それより、昨日楽しかった?」
『うん、楽しかったよ。』
「よかったじゃん。」
夏樹…頼むから…あっち行ってくれ。
もう、夏樹の顔…見てられないんだよ…
早く、放課後になれ…
「はぁ…」
俺は放課後の教室でたった一人机で寝ていた。
傾いてく夕日を見ながら…考えていた。
『俺、好きな子できたんだ。』
『俺、明日の放課後夏樹に告白するわ。』
「…なんで…俺は夏樹と出会っちゃったんだろ…」
泣いたら、駄目だ。
泣いたら…いけないのに…涙は止まらなかった。
あっという間に制服の袖が涙で濡れた。
視界がボヤけて、目の前は夕日の色に染められて…ろくに見えなかった。
『…悠…?』
すぐ近くで俺を呼んでいる声がする…それは紛れもなく夏樹の声だった。
「な…なに?」
『…大丈夫…?』
「大丈夫大丈夫、目にゴミが入っただけだから。」
見え透いた嘘だってわかってても…ごまかすことしか出来なかった。
『ごめんね…悠…」
「なんで謝んだよ。」
『…アタシ…』
「章に呼ばれてたんだろ?」
『え?』
「告白されたんだろ?」
『どうして…』
「昨日、章に言われたんだ。明日夏樹に気持ち言うって。」
『悠…』
「大好きな相手なんだから…もう俺に近づくな。」
『え…?』
「俺と今までどおりしてたら…章…ヤキモチ妬くぞ。」
『悠…』
「もう、話かけんな…もう、誘うな…もう、俺の部屋に上がりこむな。」
『…悠…」
「俺は…きっぱり…お前を諦めるから…だから…協力してくれよ…」
『え?』
「…ホントに…夏樹を好きになれてよかった…」
『悠…』
俺はそのまま鞄を握り締めて教室を出ようとした。
けど…後ろから夏樹が抱きついてきた。
「離せよ、なぁ…頼むから…離してくれよ。なぁ、夏樹!!」
『やだ、アタシが納得するまで離さない。』
「なぁ…俺すげー辛いんだよ。」
『ごめんね、悠…アタシ…ずっとずっと悠が一番だったよ。』
その言葉を言った途端、背中にくっついていた夏樹が離れた。
『悠…バイバイ。』
泣き顔で…バイバイって言われたら…悲しくなるじゃんか。
「…おぅ、バイバイ。」
俺は、びしょ濡れの制服の袖で顔を拭って再び歩き出した。
「夏樹っ!!」
『なに?』
たった一言……
...俺がお前を好きになったこと...絶対忘れんなよ。