『 嵐の前の平和な日常 : 後編 』
オーブンをのぞいてみると、いい具合にチーズが溶けだしている。
焼き上がりまで、もう少しといったところだろうか。
今のうちに、ジンジャーエールを試し飲みしてみようかと
氷室から、取り出してきた氷をアイスピックで割り
グラスに、ジンジャーシロップを入れレモンを絞り
蜂蜜を落としてから、炭酸水を入れよく撹拌してから
氷を入れたと同時ぐらいに「ただいま!」と元気のいい声が響く。
「お帰り」
「アルト、お帰りなさい」
僕とセリアさんが、アルトに答えると
アルトは、急ぎ足でこちらへとくる。
どうやら、悩み事は解決したらしい。
キラキラとした目を僕に向けながら
「なに! なに! なに!! 師匠。
何を作ってるの! すっごい、いい匂いがする!!!」
そわそわ、そわそわ、と僕の周りをうろちょろとして
香りの元を探しているようだ。
「もうすぐできるから、手を洗っておいで」
「はい!」
駆けるようにして、手を洗いに向かい
そしてやはり、駆け足で戻ってきた。
「師匠、それはなに? 飲み物?」
僕の横に置いてあった、ジンジャーエールを見て
興味を示す。
「飲んでみる?」
「お酒?」
「違うよ」
アルトの分を新しく作って、渡すと
そっと鼻に近づけて、香りをかぎそして
ゆっくりと口元に持っていき、本当に少しだけ口に入れた。
「うわあぁぁぁ!! 舌が! 舌が! ビリビリする!!!」
耳と尻尾の毛を逆立てて、グラスを机の上に置き
アルトは、舌を出していた。
「あははははは!」
セリアさんが、アルトの反応をみて楽しそうに笑っている。
「師匠、酷い!!」
「えー……。美味しいでしょう?」
僕も一口飲んでみるけど、なかなかおいしくできたと思う。
やはり、記憶に残っている味とは少し違ったけれど。
「うーーーん」
「こういう飲み物なんだけど、気に入らなかった?」
「うーーーーーーん」
アルトが唸っているのを見て、セリアさんがまた笑い。
結局、アルトは「俺は林檎の果汁がいい」といって自分で注いで飲んでいた。
アルトと話しながら、ピザの生地を整え
その上に具材を乗せていく。そろそろ焼き上がるという頃に
昼食をとるために、メンバーが集まり始めた。
「何か美味しそうな匂いがするっしょ」とアルトと同じことを
言ったのはエリオさん。「お腹が空いたわけ」と珍しく
食欲を刺激されたのか、サフィールさんがそれに続く。
剣と盾の人達も、興味をそそられているようだったし
酒肴は、部屋に戻ってきた瞬間、ほぼ全員が厨房を凝視した。
その目は真剣で、怖い。先日のゾンビよりも怖いかもしれない。
丁度焼き上がったピザを、オーブンから取り出し
お皿の上に置いていく。初めて目にする料理に、いい匂いから始まり
おいしそうになり、どういう料理かの考察が入り、早く食べたいになった。
宅配のピザのような切り方は、全員にいきわたらないきがするので
格子状に切っていく。切り分けられていくピザに、アルトとエリオさんが
そわそわと体を動かし、まだかなという目でピザを見つめている。
そして、酒肴の人達は小皿を用意してくれていた。
3枚全部切り分けてから、カウンターの上へに置き
「召し上がれ」といったと同時に、アルトとエリオさんが手を伸ばし
酒肴の人達は、小皿に取り分けピザを配っていく。
「美味しい!! 師匠すごくおいしい!!」
「この、上に載ってる燻製の肉は何の肉だ?」
「うわ、数種類のチーズの味がするわ」
「美味しい~」
「野菜の甘みと、チーズの塩味がよくあってるわね」
「うまいぞ! もう一枚食えるか?」
「この下のソースは、トマトか?」
アルトの第一声に続いて、あちらこちらから
ピザの感想が、耳に届く。オーブンにまた3枚のピザを入れ
焼き始めてから、酒肴の人が取り分けておいてくれたピザを口にした。
これまた、なかなかおいしいと思う。
「気に入ってくれた?」
アルトにそう尋ねると、アルトはピザを頬張りながら頷いた。
「セツナよ。美味いなぁ。
ロールキャベツも美味かったが、これは酒にあうの!」
「セツナ君! これは本当に美味しいよ!」
アラディスさんが、凄くいい笑顔を僕にくれ
ピザの素晴らしさを力説してくれる……。
何時もの、アラディスさんの雰囲気とはかけ離れた
このテンションの高さはいったい。唖然としている僕に
エレノアさんが、苦笑を浮かべながら
「……アラディスは、チーズが好物でね」と理由を教えてくれた。
アラディスさんの言葉に、ちらほらと頷いている人達は
チーズが好きな人達なんだろう。アルトも、頷いているのを見て
思わず笑ってしまったけれど、皆が美味しそうに食べているのを見て
僕も作ってよかったと思った。
「セツっち、おかわりはあるのかな?」
「師匠、まだある? まだ、作る?」
2人が催促に来るが
他のメンバーも、期待に目を輝かせているのがわかる。
「もうすぐ焼き上がるよ。生地もまだあるから
残さず食べてね」
「食べる!」
「食べるっしょ!」
アルトとエリオさんが、同じことを言っている。
この2人は、同じ種族だったら兄弟に見えるかもしれない……。
手を洗い、次のピザ生地を広げようと丸めていた生地をとり
麺棒で伸ばしていくと、バルタスさんとニールさんが
厨房へと入って来て、同じように伸ばしていく。
他のメンバーは、恨めしそうにバルタスさん達を見ながら
手帳と鉛筆を持ち、作り方をメモしていっている。
所々説明しながら、一緒にピザを作り
ピザが焼けると、5番隊の人が切り分けて配って歩く。
その間に、3番隊と4番隊の人達が昼食の準備に取り掛かっていた。
「おい、フリード。後でそのメモを見せろよ」とダウロさんが告げ
フリードさんが「はいはい。見せてやるから、昼飯を作れ」と
返事をしたのを確認してから、食材を切り始めた。
「そういえば、アルっちこれはなんだ?」
アルトが飲みかけたまま、放置していた
ジンジャーエールを、エリオさんが見つけた。
「飲み物?」
「これ、飲めるのか?」
「うん、飲む?」
「うまいの?」
ここでアルトは、一瞬考えてから頷いた。
「美味しいと思う。
新鮮な味がした」
アルト……。さっき、微妙だって顔をしていたでしょう?
アルトはたまに、エリオさんにこういった悪戯をする。
悪戯というか、仕返しというか。アルトとエリオさんは
同じ次元の戦いを繰り広げる仲間だと言えるのかもしれない。
「へぇー。いい食材でもつかってるのか?」
「飲んだらわかると思う」
アルトが、エリオさんにグラスを渡す。
グラスに時の魔法をかけてあるから、炭酸が抜けることはない。
「なんか、泡が浮いてきてるけど
飲めるのか?」
「飲める。師匠が作ったものだし
師匠も飲んでた」
「セツっちがつくったのなら、美味いんだろうな!」
エリオさんは、一気に警戒心を下げ
思いっきり口に、炭酸水を含んだ。
「ぶびぃ!」
変な音が聞こえたと同時に
エリオさんが口から、炭酸水を噴き出した。
噴き出す時に、食べ物がある方向とは違う方を
向いたので、食べ物とグラスの中身は無事のようだ。
「エリオさん、汚い!!」
アルトが、エリオさんから距離を取り
エリオさんは、目を丸くして固まり
異音を聞いたことで、酒肴の人達が視線を僕達の手元から
アルト達の方へと向け、エリオさんが噴き出したのを見ると
フリードさんが、慌てて厨房の布巾を手に取り
エリオさんの傍に行き、絨毯を拭いてからエリオさんを殴った。
「何をやってるんだお前は!
絨毯を汚すな!」
クリスさんもサーラさんも、エリオさんに冷たい視線を向けている。
誰かが何かをこぼしたり、落としたりすると
十中八九、酒肴の若い人たちが布巾を片手に飛んでくる。
これはもう、職業病だと思う。生活に沁みついている感じだ。
「あー。あー。すげー吃驚した!」
「はぁ?」
「これ、口に入れた途端
口の中がびりびりして……」
フリードさんが、いぶかしげにエリオさんを見て
エリオさんがもっている飲み物を見た。
「お前、これバートル湖の水だろ。
これは、普通の水じゃない。
なんで、こんなもん飲んでるんだよ。
噴き出して当たり前だろ」
「いや、だってアルっちが飲めるって。
セツっちが、作った飲み物だっていうからさ」
「セツナが作った?」
エリオさんの言葉に、半信半疑でフリードさんが
アルトへと視線を向けると、アルトが頷いた。
フリードさんは、エリオさんからグラスをとり
一口口に含んで、驚いた表情を作り僕を見る。
「これは、なんで?」
エリオさんとフリードさんのやり取りに
耳を傾けていた酒肴の人達が、一斉に興味を向ける。
この人達の、食に対する探求心は本当に感心するほどすごいと思う。
「それは、バートル湖の水に
生姜と数種類の香辛料を砂糖で煮詰めて作った汁と
檸檬と蜂蜜を入れて味を付けたものですね」
フリードさんは、もう一口含み
「俺は、こんな飲み物を初めて飲みました」
フリードさんの一言に、バルタスさんが僕の傍にあるグラスを見て
一口飲ませてくれんかと頼まれる。グラスを渡すと口に含み
スッと目を細めて、飲み込んだ。
「セツナよー。お前さん
本当に、酒肴に入らんかー」
バルタスさんの勧誘に、いち早く反応したのはアルトで
前回と全く同じことを口にして、僕が断る前に勧誘を断っていた。
バルタスさんの持っているグラスに、視線が集中しているのがわかる。
飲みたいと言いたいけれど、僕の飲物を奪うのは駄目だという
自制心との戦い。セリアさんが、姿を消してクスクスと笑っている。
「飲んでみますか?」
僕の言葉に、酒肴の全員が頷いた。
「貴重なものじゃないのか?」
バルタスさんが、心配そうに僕を見る。
「先ほども言いましたが
材料は、生姜と砂糖と僕が調合した香辛料だけですから
香辛料も、どこででも手に入るものです」
「そうか」
手を拭いて、食器棚からグラスを出そうとすると
2番隊の隊長である、セルユさんが「僕がする」と
グラスを取り出していってくれる。フリードさんは
「他に飲みたい人はいるんで?」と飲みたい人の人数を数えていた。
アルトは手をあげていない。
エリオさんは、フリードさんからグラスを返してもらい
チビチビと飲んでいる。
一杯目は僕が作り、二杯目からは2番隊の人に任せる。
フリードさんが、新しいグラスに僕の分を作ってくれ
僕が一口飲んだだけの、ジンジャーエールはそのままバルタスさんが
一気に飲み干した。
「ぷはー。これは癖になる味だの!」
3番隊の人達は、セルユさんに一度試し飲みとして
一杯だけ作ってもらい、それを3番隊で回し飲みしてから
飲むか飲まないかを決めていた。多分、アルトが飲まなかったことから
警戒したのだろう。獣人族には、あわない飲み物かもしれないと。
食い意地の張っているアルトが、食べない飲まないものは
大体が、獣人族が苦手とするものが多いからだ。
3番隊は、クローディオさんとイーザルさんだけが
作ってもらう事にして、他のメンバーは断ったようだ。
ピザもジンジャーエールも、一度お手本として作ってしまうと
もう僕がすることは、なくなってしまった。
「セツナも、食べる方に専念するといい。
いやー。いいもんを食わせてもらったし飲ませてもらった。
あとで、この生地の作り方とソースの作り方。
この飲み物の作り方を教えてくれんか?」
「はい。いいですよ」
もともと、レシピは渡すつもりでいたから問題はないし
できれば、酒肴のお店で作ってもらえるとありがたい。
好きな時に、ピザが食べれるのは魅力的だ。
厨房から出ると、口々にお礼を言われる。
「早く、次が焼けないかなぁ」
尻尾を振って、ピザの出来上がりを待つアルトを見て
サーラさんと、セリアさんが、かわゆいと呟いている。
アギトさんとサフィールさんも
テンションの高い、アラディスさんとエレノアさんと
肩の力を抜いて、話している。
アルトだけでなく、サーラさん達
そして、セリアさんが少しでも元気になってくれたのなら
嬉しいと思う。
セリアさんは、食べることも飲むこともできないけれど
アルトが笑っていると、楽しそうに笑ってくれるから。
せめてもの……罪滅ぼしに。
「焼けたぞー」という声で、アルトがいそいそと立ち上がり
ピザを切り分けてもらいに行く。誰が、ピザを切り分けたとしても
一番最初に、アルトに渡してくれているようだ。
僕が用意した生地がすべてなくなり、3番隊と4番隊が作った
お昼ご飯まで綺麗に平らげてアルトは、やっと満足したようだった。
酒肴が後片付けをはじめ、食後ののんびりとした時間を
各々が、過ごしていている時にアルトが僕を呼び
その声音は、どこか緊張しているように思えた。
「師匠」
「うん?」
「俺の誕生月って、何時なんだろう……」
「……」
アルトのこの質問に、周りの時間が一瞬止まったように
アルトに視線が集まった。
誕生月というのは、日本でいう誕生日の事で
何月何日ではなく、生まれた月の前半にお祝いをすることが多いようだ。
「俺は……。誕生月を祝うのは
物語の中だけだと思っていたんだけど。
そうじゃなかったみたいなんだ」
クロージャ達が、お金を貯める理由を多分
ここに居る全員がわかったかもしれない。
だけど、アルトがその話題には触れない事から
各々の心で留めておいてくれるだろう。
「昨日、皆の誕生月を教えてもらったんだけど
俺は、教えることができなかったから……」
アルトは、耳を寝かせながら僕を見る。
「師匠は、俺の誕生月を知ってる?」
知ってる? と聞いておきながら
僕が知らない事を、わかっているようだった。
それでも、聞かずにはいられなかったんだろう。
クローディオさん達が、拳を握り
歯を食いしばって、怒りを堪えているのがわかる。
サーラさんは、俯いていた。
ここで、涙を見せてはいけないと
アギトさんと、サフィさんに耳打ちされている。
「僕は、アルトの誕生月を知らないかな」
「そうだよね」
分かっていても、いちるの望みは持っていたのだろう。
しょんぼりと、肩を落とすアルト。
「僕も、自分の誕生月を知らないんだけど」
「え? 師匠もしらないの!」
「うん、知らない。
物心ついた時には、両親は居なかったから
僕の誕生月を知っている人が居なかった」
目を丸めて、僕を見るアルトの頭を
思わず撫でそうになるが、ぐっとこらえる。
「でも、誕生月があると楽しいかもしれないね。
アルトに、贈り物をしたりできるから」
「おおおお、俺も、俺も師匠に贈り物したい!」
「僕に、贈り物をくれるの?」
「うん! だって……」
「だって?」
アルトが慌てて、口を閉じる。
「内緒!」
「内緒なんだ」
「うん。話さないって約束したから!」
「それなら、仕方ないなぁ。
友達との約束は大切だよね」
「うん!」
「さて、どうしようかな?
僕の誕生月をアルトが決めて
アルトの誕生月を、僕が決める?」
僕の提案に、アルトは少し考えて
首を横に振る。
「俺、サルキス1の月にしたい」
アルトが、サルキス1の月を指定した理由にすぐに気がつく。
「師匠が、俺の誕生月をしらないのはわかっていたから
だから、もし誕生月をつくってもいいのなら
何時がいいかって、考えていたんだ」
「そう。本当に、サルキス1の月でいいの?」
誕生月と一緒に、辛い想い出も
思い出してしまうんじゃないだろうかと心配になり
それでいいのかと、確認をとってしまう。
そんな僕に、アルトがぎゅっと拳を握り
そして、真剣な表情で僕を見た。
「俺はあの日を、一生忘れない。
だから、サルキスの1の月にしたい」
強い強い意志を、その瞳に宿しながら
アルトは、自分の考えを言葉にしていく。
「俺が、師匠と出会った。
俺が、自由になった。
師匠が、俺を弟子にしてくれた。
俺が、師匠の弟子になることを誓った」
「……」
「そして、師匠が初めて贈り物をくれた。
俺が化け物からアルトになった。
俺が、俺に生れた月だから」
サーラさんが、静かに涙を落とす。
アギトさんが、アルトに気がつかれないように
その背中に、サーラさんを隠し
エレノアさんは、そっと視線を下げた。
「だから、サルキス1の月にしたいんだ」
「そうか、ありがとう」
こんな僕と出会ったことを、喜んでくれて
大切にしてくれて、ありがとう。
そして、不甲斐無い師でごめん。
「どうして、師匠がお礼を言うの?
お礼を言うのは、俺の方でしょう?」
キョトンとして僕を見るアルトに答えることはせず
ゆっくりと、自分の心の内へと思いを馳せる。
その日の事は、鮮明に僕の記憶に残る。
窓の外に見える、大きな青い月の光の中で
本当の僕が消え、新しい僕に生まれ変わった日。
胸の中に咲く椿以外、すべて消し去ってしまった日。
本当の名前すら僕は捨て
手に入れたものは、健康な体と自由。
そして、彼が残してくれた鞄と鞄の中身。
そして、手に入れたと同時に
失ったものは、初めてできた親友。
今まで守り続けてきた約束と。
新しい約束を胸に、僕はこの世界で独り生きていくと……。
アルトのように、誓った日。
シルキス2の月の19日。
アルトと違って、僕は度々忘れそうになるけれど。
「師匠?」
「うん?」
「師匠は、いつにするの?」
「僕は、シルキス2の月にしようと思うんだ」
「師匠の特別な月?」
「そう。僕の特別な月。
僕が冒険者として、生きていく事を決めた月だよ」
「おおー。もう1つ理由が増えた!」
「そうだね、サルキス1の月は
アルトが冒険者登録をした月でもあるね」
「うん! 師匠のほうが誕生月が早いんだね」
「そうなるね」
「俺、その時までに
美味しいお菓子を見つけておくから!」
「え? お菓子限定なの?」
「うん!」
誕生月が決まったことを、嬉しそうに話すアルト。
そして、僕の心に寄り添うように姿を消している
セリアさんが、僕の背中に張り付いてくれていた。
抱きしめてくれているというよりは、張り付いている……。
『大丈夫ですよ』
『知ってるワ』
それでも、セリアさんは離れようとはしなかったけど。
気にしなければ、気にならないのでそのままにしておいた。
アルトの誕生月が決まったことを、皆が喜んでくれていた。
サルキスの1の月は、楽しみにしてろよ! と口々に言われ。
アルトも「楽しみにしてる!」と答えていた。
今から、待ち遠しくて仕方がないといった感じだ。
僕にまで、楽しみにしてろと言ってくれるが
丁重にお断りしておいたが、お酒なら大歓迎ですと付け足すと
アルトの眉間に、深く皺ができていたので
それ以上、深入りする人は誰も居なかった……。
優しく平和な日常が、僕達を包み。
このまま、この時間が続くかと思われたのだけど。
僕とアルトの関係が、すれ違っていく事件が起きてしまう。
だけど、この時の出来事がアルトの未来を変える一つの分岐点で
そして、僕とアルトの関係が変わる最初の出来事だったと。
アルトとの思い出を、振り返った時に懐かしく思う事になるのだった。