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いつもと違う空  作者: あねら
金平糖の降る丘で。
3/5

金平糖の降る丘で。3

「ねえ、もう学校着いちゃうよ?」

大宮は手をつないだままだ。

「俺たち付き合ってんだからいいんだよ」

さっきより少し力を入れてにぎられる。

私は、こういうことに慣れていなくて

顔が赤くなってしまう。


結局手をつながれたまま、

教室まで来てしまった。

教室に入るとみんなに見られる。

「あれあれー?2人くっついちゃった感じー?」

ノリのいいやつらが

ふざけて盛り上げる。

すると大宮に手をひっぱられ、

後ろから抱きしめられてしまう。

「いいか、お前らよーく聞けよ!栞は今日から俺の彼女だ!もしこいつに指一本触れやがったらぜってー許さねーからな!」

みんなの前でそう宣言すると、

ぎゅーっと力を入れられる。

「うわー、見せつけんな大宮!」

「お前らほんと信用ならねー!」

クラスの男子が大宮をこづく。

それでも、私を離さないでいると

大宮の親友、原田が大宮をつっついた。

「空羅くん、ちょっと妬きすぎ。なんだかんだ言ってこいつら、お前のこと好きだからさー。大丈夫だと思うよ?」

大宮はふんっと、ちょっとすねて

やっと私を解放した。

みんなの前であんなことをされて

頭がフリーズしていると、

里依紗と紗夜が近づいてきた。

「よかったねー!おめでと」

にぃーっと笑って里依紗が

私の頭をぽんっと軽く叩いた。


昼休み、いつも通り里依紗たちと

食堂に行こうとしたら

大宮に呼び止められる。

「おい、どこ行くんだよ」

「え?どこって食堂だけど…」

私がキョトンとして答えると、

大宮はため息をついた。

「あのな、少しくらい俺のこときにしろよ…。よし、決めた!今日は俺が購買でパン買ってきてやる。だから、それ一緒に食おーぜ」

「いいけど、里依紗たちは?」

私が里依紗を見る。

「あ、じゃあうちらも一緒に食べるー!原田ー、大宮と購買行ってきて!今日はみんなで一緒に食べるんだってー」

里依紗は原田を引っ張ってきて、

大宮の前に立つ。

「んじゃ、女子は中庭で待ってますから」

「おい!俺は栞と2人で…」

「ごちゃごちゃ言わない!あんまり独占欲強い男って嫌われるわよ!」

ぴしゃっと言うと、

私と紗夜の手を引っ張って教室を出た。

「里依紗、なんかありがと」

なんかよくわからないお礼を言う。

「大宮ね、嬉しくて仕方ないのよ。あんたと付き合えて」

確かにそんな気配はずっとしてるが。

「え、大宮って私のことそんな好きだったの?」

「まあね。ま、それは本人に聞いてあげなさい」

さりげなく聞いたつもりが

はぐらかされてしまった。


大宮はいつから私のこと

好きだったんだろう?

告白のときに少しそういうことは

言われた気がするけど

はっきり聞いてないし。


中庭でベンチに座って待ってると

購買の袋をさげた大宮と原田、

あともう1人仲いい佐野を

連れてきたみたいだ。

「おつかれー。ありがとね!」

そういって、

さっさと袋を開け始めたのは

里依紗だ。

大宮は少しすねてる顔だ。

2人で食べれなくてすねてるのだろう。


パンをみんなで食べながら、

どうでもいいことを話している。

こういう時間が私は一番好きだ。

どうでもいいことを

何も考えずに仲のいい友達と話せる。

これ以上楽しいことはないんじゃないだろうか。

「なに考えてんだよ」

横に座っていた大宮の声が

すぐ近くで聞こえる。

「へっ?」

大宮の方を向くと、

まだすねている顔だった。

思わず吹き出してしまう。

「なんだよ」

「いや、まだすねてるなーと思って」

「当たり前だろ?付き合って初めての昼休みだったんだから」

そのときなんで、

あんなに大胆なことが出来たのだろう?

私は大宮の耳元に顔を持っていった。

「じゃあ、明日は2人でたべよ?」

耳元でそうささやくとそのまま

また抱きしめられた。

「あんまかわいいことすんなよ」

すると、佐野がにやにやしていて

他の人をみても同じだった。

「初日からそれかよ。いいな、大宮!でも、いつまでそこでとどまってられるかな?」

私は意味がわからなかったが

大宮の顔は一瞬で赤くなった。

「えっ?どういうこと?」

私がとまどっていると、

里依紗がさっきよりも

にこにこしている。

「おこちゃま栞にはまだわかんなくていいのよ」


昼休みが終わって授業に入っても

大宮は黙ったままだった。

佐野に言われたことを気にしてるのは

わかるのだが、佐野の言葉の意味が

わからないのでなんとも言えない。


大宮は授業が終わっても

振り向かないので

背中を指でつっついた。

「ん?」

「ね、どうしたの?やけに静かだけど」

大宮はまだ前を向いたままだ。

「言っていい?」

「なに?」

さっと振り向いて人差し指を

手前にくいくいっとやった。

なんだろう。

よくわからないがとりあえず

少し大宮の方にのりだした。

すると、私が昼にやったみたいに

私の耳に顔を近づけた。

「帰り、キスしてもいい?」

「えっ!」

信じられないことを

耳元でささやかれて

私の頭は完全にフリーズした。

そんな私を見て、

大宮はおもしろそうに笑った。

「帰り、昨日の丘に行こっか」

そこそこ整ってる顔でにこっとされ、

思わずうなづいてしまう。

「じゃなくて!ちょっ、大宮!」

またおもしろそうに笑って前を向く。

「ねえ!だ、だめだよ!…なんか」

どうしてもキスとはいえず、

そこだけ口ごもってしまう。

後ろからどれだけ言っても、

大宮は前を向いたままだった。


放課後、

昨日と同じファミレスに来ていた。

黙りこくっていると大宮が

顔をのぞきこんできた。

「あんま難しい顔すんな」

「あんたのせいだし」

私よりも大きい手で頭をなでられる。

「ごめん。栞は俺とするの嫌か?」

それは…いやじゃないけど。

「恥ずかしいよ!いきなりあんなこと言われたら。…嫌じゃないけど」

さっきよりももっとなでられて

髪の毛がぐしゃぐしゃになる。

「もう!やめてよ」

にこにこしてる大宮の顔を見て

怒っていられなくなった。

顔が自然と笑ってしまう。

「怒れないじゃん!」

「怒んなくていいじゃん」

「もう!」

やっぱり大宮は笑ったまんまだった。


日がくれてから店を出る。

昨日の丘に、たどり着くと

2人ともしばらく無言だった。

「栞。俺のこと空羅って呼んでみて」

「…空羅」

呼ぶというよりつぶやいたと

いうほうがいい感じだった。

今まで彼氏じゃないからと頑なに

名前で呼ばなかった。

でも今、それでよかったと思う。

彼氏を名前で呼べるって

嬉しいことかも。

「空羅!うーん、でもやっぱ変な感じ」

1人でつぶやいていると、

大宮に呼ばれた。

「栞」

「なに?大宮…じゃなくて、空羅」

「今俺すっげー幸せ」

肩に手を置かれる。

「…空羅?」

月の光と星の光しかない暗い中、

空羅の顔が近づいて唇が重なる。

肩に置かれていた手が下がり、

そのまま抱きしめられる。

昨日のときよりもずっと長くて、

息の仕方がわからない。

苦しくなって、空羅を押して遠ざけた。

しかしふらっとして空羅に

つかまってしまう。

空羅はそのまま抱きしめてくれた。

「ごめん、こらえきれなかった。栞が俺の彼女になったんだと思うと嬉しくてさ」

「…嫌じゃないけど恥ずかしいから…ときどきならいいよ」

「…ほんとかわいい」


手をつないで家まで帰る。

どうでもいいたあいのないことを

話しながら、2人で歩くのは

普通のことだけど

小さな幸せだなと思った。


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