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 愛夢=アム=   作者: ミヤーン
9/10

エピローグ


『翌日、わたしの心の中にアムが顔を観せた。その時の驚きと喜びを、わたしは言葉にすることはできなかった。』

 と、最終行を一旦そう打ったけれどすぐにそれを削除した。


 言葉にするのができないのだから、文章にしなかったのだ。


 そんな理由わけで、そこのところは読者の想像に任せるとして、わたしは難なく後編を描き終えた…。


 苦手な後編が、意外とスムーズに運んだのだった。


 でも、それは真実を語っただけなので当然といえば当然のことだ。


 わたしが未来の観覧をし、未来の自分自身に話しかけるシーンの、ひよこくちばしのところも、迷わず真実だけを語った。


 未来のわたしは、ひよこくちばしなんてしていなかった。


 でも、あのシーンの未来のわたしがひよこくちばしをしていないと、前編につながらない。


 それは百も承知だ。

 当然、前編も描きかえない。


 ビギナーの読者にとっては、前編にリンクするすべは小説の評価を高くする。


 そのシーンをエンディングにすれば、それで満足してくれる。


 でも、書き手にとっては前編にリンクする術は容易い。


 ごりおしのリンクが不自然なら、前編を描きかえればいいだけだ。


 ただ、それをすれば、その程度の作品になる。


 読者はビギナーだけではない。


 前編にリンクする術、その程度の作品はエキスパートの読者にはお見通しだ。


 わたしが未来を観覧したあたりでバレてしまうだろう。


 遅くても、わたしが未来のわたしに、

「おはよう。あむ」

 と、声をかけるまでにはバレてしまうだろう。


 一行先の活字もバレたくない。


 読者にネタがバレる作品にはしたくない。


 だからわたしはあえて矛盾させた。


 エキスパートの読者はどう思う。


 前編を見直し、頭をひねるだろう。


 それが狙いなのだ。


 そして、エキスパートの読者は真実を知る。


 この作品の前編は、、、


 自分の未来を観覧して、自分の前世の記憶を知って、夢の中で自分の前世と出会った小説家志望の女子高生が、想像を膨らませ未来の自分の視点から描いた作品だったのだ…。


 物語は主人公に記憶がないところから始まる。


 実際は、主人公である未来の自分が記憶を失っているのかどうかなんて、わからない。


 でも、未来の自分の『昨日』を知らない書き手にとっては、記憶を失っていたのも、同然だったのだ…。


 正解だ。正解はバレていい。


 それはネタバレではなく、書き手からのメッセージが届いただけなのだ。


 物語の中に組み込まれていないミステリー。

 隠れミステリーなのだ。


 それを解読できた読者なら、

『前編は、小説家志望の女子高生が、未来の自分の視点で描いたもの。それはアムの視点でもある。後編はその書き手の視点から描いたもの。作者はそれを強調させたかったのだろう』

 と、それを理解するだろう。


 また、解読者は、

『実話なのか?』

 と、そんな新たな疑問にぶちあたるだろう。


 それが小説を超えた小説。


 超小説なのだ。


 実際、この作品はそうなんだけど、そうでない作品の場合でも、わたしはそう思われるようにそれを心がけている。


 もうひとつ付け加えれば、、、


 わたしは常々一人称の小説の限界を感じていた。


〈一人称の小説の主人公はどうして作家のように語りが上手いのだろうか?〉


 この小説の場合(アムは作家ではない、という語りがあるのに関わらす)アムはどうして作家のように語りが上手いのだろうか?


 超小説『愛夢』はその限界も超えている。


 それは、小説家志望の女子高生が、アムの視点で描いた作品だからなのだ。


 エキスパートの読者は、後編が前編にリンクしない矛盾から、その全てを知ることになるだろう。


 名づけて、、、

 那々子マジック!


 いつもは後編でなかなかそれがハマらない。


 だからいつも後編で悩まされる。


 でも、『愛夢』ではそれが完全にハマった。


 そして、エンディングのシーンをそこに想わせぶりにして、そうしない。


 夢の中でアムと出会うシーンがある。


 それゆえ、ビギナーの読者も後編と前編の矛盾など、どこかに飛んでしまうだろう。


 那々子マジックは、エキスパートには奥深くビギナーにはやさしいのだ……。



 ー∞ー∞ー∞ー



「バッチリだね。ナナ」

 と、きみは絶賛した。


 ビギナーであるアムのいうバッチリとは、ごまかさず真実だけをよく纏めたね。

 と、いう意味だろう。


 後編を真実だけで組み立てたのがわかるようだ。


 でも、

 …那々子マジック。


 アムはそんなことは知るよしはない。

 それはそれで別にいい。

 書き手の自己満足の世界だ。


「ありがとう」

 と、わたしは素直に答えた。


 そんな経緯いきさつで『愛夢』を『携帯小説』に投稿することになる。


 ホラー。

 SF。

 ノンフィクション。

 ミステリー。

 歴史。

 恋愛。

 コメディ。

 冒険。

 学園。


 いろんなジャンルがあった。


 わたしは、ファンタジーのカテゴリーに投稿することに決めた。


「SFって何?」と、きみはQ。「それに、ノンフィクションやミステリーやファンタジーって何なの?」


 きみは勉強熱心だよね。


 わからないことは必ず聞いてくるよね。


 そんなアムは、現世に生きるわたし達のことを、今ではほとんど理解している。


「SFはサイエンスフィクションの略。日本語に直訳すれぱ空想科学。ノンフィクションは事実に基づいた作品。ミステリーは謎。小説の場合、推理ものかな。…たぶん。そんで、ファンタジーは幻想的とか空想的とか、わたしは不思議な作品って解釈してるけど」と、わたしはA。「全て、厳密に定義するのは難しいんだけどね」


 わたしの説明が悪いのか、アムは口を膨らました。


 実際はそうしているかどうかはわからない。


 わたしにはアムの姿は見えていない。


 でも、アムはわたしの顔マネをしている。


 わたしの心の中に、そんなアムのイメージがフグの口のように膨らんだ。


「ねぇ。ナナ。どうしてノンフィクションの作品をファンタジーのところに投稿するの?」

 と、心の中のきみは首を傾げた。


 アムが現世に生きるわたし達のことを理解している。

 そう思ったのは少々はやとちりだった。


 きみにとってはは現世のファンタジー(不思議)が理解できないようだね。


 それがきみにとってのファンタジー(不思議)なのかもしれないね。


 そんなアムに、わたしはため息をついた。



   愛夢=アム=

    

     = 完 =



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