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 愛夢=アム=   作者: ミヤーン
8/10

後編/未来の観覧


 残すは、後編だ。


 わたしは、アムからのアドバイスを素直に受け入れ、軽い気持ちで肩の力を抜いた。 


 そして、、、


 ほっぺをプ~っとフグのように膨らまし、後編を描き始めた。


 ー∞ー∞ー∞ー


 後編/未来の観覧


 わたしの名前は、飛鳥 那々子。(あすか ななこ)

 小説家志望の高校二年生の女の子。

 そんなわたしがアムと出会ったのは一年前。

 それは高校一年生の夏休みだった。


 わたしは高校で新しいお友達ができた。

 彼女は中学三年生まで〇縄に住んでいた。

 そんな彼女と、わたしはすごく仲良しになった。


 その日、わたしは彼女のおおうちに泊まりに行った。

 夜遅くまで、ジュースやお菓子でパーティーのような雰囲気でワイワイガヤガヤとヤっていた。


 そして、何か怖いお話をしよう、みたいなそんなノリになった。


 彼女の姉から(年齢順って訳ではなかったけれど)話し始めた。


 彼女達が住んでいた村の伝説、〇縄霊域の色情魔の伝説を…。


 わたしは体中が震えてきて、耳をふさいだ。

 どうしてこんなにも怖いのか、自分自身わからなかった。

 でも、わたしがあまりにも怯えたので、時間も時間だったし、眠ることになった。


 お布団の中にうずくまった。

 なかなか眠れそうにない。

 頭ん中に、〇縄霊域や色情魔がグルグルと舞う。

 瞼の奥にわたしのそんなイメージが動画のように蠢いた。


 そんな中、わたしの意識が、一瞬、と、ん、だ。


 体から魂が抜け出し、どこかに飛ばされたような、そんな気分を味わった。


 いや、そうじゃない。


 魂だけがそこに残され、わたしの体、それに、お布団、お部屋、周りの空間全てが、わたしの魂だけを残してどこかに飛んでいった。

 わたしはそんな気分を味わった。


 そして、異空間がわたしの魂に同調する。


 それは一瞬のことだった。


 辺り360度がわたしの視界にはいった。


 気づいた時には、わたしは〇縄霊域を浮遊していた。


 幼い頃から何度か味わったことのあるこの感覚…。


 同じ体験をした人ならわかるだろう…。


 わたしは、未来を観覧していた…。



 ⊂未来⊃



 場所は〇縄霊域。


 それは直感的にわかった。

 いや、直感的というのは大げさかもしれない。


 片側が絶壁。もう片側が谷底。

 そんな山道だった。

 その先には洞窟がみえている。


 それは、お友達のお姉ちゃんから聞いた、そのまんまだった。


 わたしは浮遊しながら辺りを観わたした。


 黒い帽子に黒いマフラー。それに黒いコートで身を隠すような格好の女性が、谷底に落ちそうになっていた。


 その傍らで、9793と数字が刺繍されたニット帽をおでこがほとんど隠れるぐらいに深くかぶり、大きなレンズのサングラスに豹柄のマスクをした女性が心配そうに見ていた。


 その格好では容姿がハッキリしない。


 でも、その豹柄マスクが数年先の自分自身なんだ、とこれまた大げさだけど直感した。


 何を隠そう、ニット帽に刺繍された9793の数字は、わたしの数字版ペンネーム。

 いわゆる『丘 七草ナンバー』なのだ。


 数年先だと感じたのは、傍らにいた兄が、今より少しだけ凛々しくなっていたからだ。


 時期は服装から予想して冬。

 この予想も間違いはないだろう。


 何度か『未来の観覧』を経験しているので、そのへんのところには自信がある。


 崖から落ちそうになっている黒い女性を(未来の)わたしと兄とで助けにかかる。

 ドジな(未来の)わたしは、代わり(?)に谷底に落ちてしまった。

 一瞬ヒヤーっとしたけれど、幸い大木達にひっかかる。


 どうやら助かっようだ。


 わたしは浮遊しながらそんな滑稽な光景を観た。


 そして、未来を観覧しているわたしは鳥肌が立つ想いを味わった。


 今まで眠っていた記憶が走馬灯のように走った。


 わたしは以前もここ〇縄霊域の谷底に落ちて大木達に救われた。


 いや、そうじゃない。


 それは『わたしの前世』の体験だ。

 

 わたしは未来を観覧しながら、それを悟った。


 未来のわたしはレスキュー隊に救助され、病院に運ばれた。


 命に別状がないとわかり、兄は病院をはなれた。

 わたしは浮遊しながら、自分自身を見守る格好なる。


 未来のわたしは病室でスヤスヤと眠っている。

 未来のわたしは寝言に知らない人の名前を呟いた。


 知らない人の名前ではない。


 それは『わたしの前世』彼女が愛した彼のなまえだった。

 未来のわたしの中には『わたしの前世』アムがいる。

 わたしは浮遊しながらそれを感じた。


 わたしは未来のわたしに、

「おはよう。あむ」

 と、ワザと陽気にそのニックネームを強調し、からかった。


 未来のわたしの反応はない。

 だいたい、わたしの声が届いているのかどうかもわからない。


 それでも、

「アム、気分はどう?」

 と、わたしの遊び心は終わらない。


 未来のわたしは何かを考えているのだろうか?


 いや、ボーっとしているだけだろう。


 わたしは考え事をする時には、ほっぺをプ~っとフグのように膨らませる癖がある。

 わたしのその癖は未来になれば治るのだろうか?

 さすがに、ほっぺをチュ~っと吸い込んだ、そんなひよこくちばしなんてしていなかったけれど、フグ顔ではなかった。

 無表情って訳ではなかったけれど、全くをもって普通の顔だった。


 だから、

「どうしたの、あむ。ボーっとして」

 と、わたしはいわずにいられなかった。


 ややあって、

「もうすこし、ねる」

 と、未来のわたしは突然声をだした。


 わたしはその声にドキっとした。


 一瞬、辺りが暗くなった。


 わたしの魂を残し、異空間がどこかに飛んでった。


 どうやら『未来の観覧』が終了したようだ。

 

 そして、わたしは知らず知らずに眠りについた。


 夢の中でアムと出会った。


 ふたりはお話をした。

 けっこうジョークなんかも炸裂して、ふたりは笑った。

 でも、アムの辛い過去を聞かされた時には、ふたりは泣いた。


 前世の記憶が蘇ったことにより、わたしはこんな夢を観たのだろう…。


 わたしはその時(夢の中で)アムと約束をした。「わたし、絶対に幸せになるから、ネ。…それに、きみの彼の生まれ変わりを探してみるから」。


 後編/未来の観覧


   The End



 ー∞ー∞ー∞ー



『翌日、わたしの心の中にアムが顔を観せた。その時の驚きと喜びを、わたしは言葉にすることはできなかった。』

 と、最終行を一旦そう打ったけれど、すぐにそれを削除した。


 言葉にできないのだから、文章にもしなかった。


 そんな理由わけで、そこのところは読者の想像に任せることにして、わたしは後編を難なく描き終えた……。



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