伝説
〈第2話 伝説〉
昨日の事は思い出せていないけど、遠い昔を思い出した。
名前は、安室 覇那子。
(あむろ はなこ)
ニックネームは『アム』。
顔は、
あなたの想像にまかせる。
主人公が、
『かわいほうだ』
と、ストレートに謳っている小説もあまりにも芸がない。
だけど、この小説のように、主人公が女性の場合、、、
もし読者が女性なら、主人公を自分におきかえる人達が多いよね。
だから主人公の顔はかわいほうがいい。
もし読者が男性の場合。
ぶさいくな女の話は聞きたくないよね。
だから主人公の顔はやっぱり素敵に表現するほうがいい。
ファッションやヘアースタイルも素敵に表現する。
スタイルも素敵なほうがいいにきまってる。
人それぞれ好みは違うけれど、それはそれで別にいい。
全体の80%ぐらいを素敵に表現しておく。
残りの20%ぐらいを読者の想像にまかせる。
そうすると、読者のイメージが素敵な主人公を誕生させる。
気分よく小説の中に入り込める。
それはわかっているんだけどね…。
それでもアムは自分の事を素敵だと表現できる性格ではない。
もし、季節に例えるなら、晩秋。
天気に例えるなら、曇り時々晴れ。
太陽か月なら、月。それも、三日月。
当然それは顔の例えじゃなく、全体的なアムのイメージって事、それは云うまでもないよね。
ー∞ー∞ー∞ー
アムの村には伝説がある。
アムの村だけではない。
沖〇霊域とよばれる所を中心に、その周辺の村には同じ伝説がある。
色情魔なるものがいる。
色情魔に憑かれた男性は霊域に住みつく。
そして霊域に寄りつく女性を、かたっぱしに、襲う。
色情魔とはその男性のご先祖様。
色情魔はその男性の体がボロボロになるまで、それを続ける。
ボロボロになれば、(以前)襲った女性から生まれた手ごろな男性をみつけ、その男性に乗り変える。
それを千年以上も続けている…。
霊域には近寄らないよう、幼い頃から教育されていた。
当然のようにアム自身もそのつもりだった。
アムはほっぺをチュ~っと吸って、ひよこのくちばしをする。
こうする事によってアムの脳みそは回転する。
ひよこのくちばしを、
「かわいいよ」
と、いってくれた彼を想い、アムは涙がうかんだ。
アムはその顔で思案した。
霊域に行ってみよう。行かずにはいられない。
アムの愛した彼が、アムを愛した彼が、行方不明の彼が、色情魔に憑かれた、、、
と、噂になっているのだから……。