プロローグ
人間と魔族の戦争は、勇者が死んだことで魔族が優勢になったのだが、元々は人間側が優勢だった。人間側が優勢だった理由は、人間のみが得ることができ、扱うことのできる「聖装」と呼ばれる武具があったからに他ならないだろう。
魔族も、人間から聖装を奪うことで「魔装」を得ることができるが、持っている者は数えられるほどしかいない。それでも劣勢とはいえ戦い続けられたのは、魔族の力が人間の倍はあったからだろう。勿論多くの種族が存在するが、それでも一芸に秀でていて、人間を上回ることのできる力を持つのは間違い無い。
魔族である私が、人間の住む場所で生きながらえることができたのは、幸運としか言いようがない。
「私たちは、魔族だからと子供を殺すのか?」
魔族と人間の戦争地帯よりも離れた辺境で、魔族の抵抗が少ないこともあったのかもしれない。だが一番はこの言葉だろう。
彼女は、私を保護し育てたいと声高らかに宣言した。私にとっては末恐ろしいことである。だがそれと同時に、人の温かさを感じたのもまた事実だ。
私は彼女、、いや、師匠と多くの人達のおかげでここに居ると言える。私の心を癒し、私の希望となった彼らを守らなければならない。
世間一般で言う所の転生者である私は、日本で生まれて、魔族として生まれ変わった。魔族であるからには人を殺さなければならないだろう。私としても、人を殺すのに抵抗はなかった。それが普通の人であれば、、、そう、普通の人ならば殺せた。
殺せなかった、吐き気がするほどの目眩が起きた。
私は優秀だった、ほかの魔族と比べても、遥かに優秀だった。だからこそ、早めに魔装を持たせたかったのだろう。
聖装を持った、傷だらけで、鎖で手足を繋がれ、口を縫い、目を縫い、舌を抜かれた、戦士を見るまでは冷静でいれたのだ。敗北した戦士がどのような扱いをされるのか、知らないわけではないが、、それは前世の話で、今とは全く違う。
前世では軍人として戦場に出たことのある私にとって、その戦士の姿は正気を失うのには十分すぎる理由であった。
私は逃げ出した。
魔族の養成機関から。
目の前の戦士から。
魔族である、、自分から。




