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虚空の断罪、音霊の嘲笑

「……あの子は、美味しかったよ……」

土蜘蛛が放ったその一言が、零の理性を完全に焼き切った。

「――殺す。一秒も生かさない」

零の足元から、どろりとした漆黒の影ではなく、光を吸い込む「無色の闇」が溢れ出す。

新スキル:『影踏かげふみ』。

瞬きする間に、零は土蜘蛛の懐へと転生ジャンプしていた。

「ガァッ……!?」

土蜘蛛が防衛本能で放った数千の毒糸。だが、零の周囲に展開された新防御スキル『虚圏きょけん』が、触れるものすべてを存在ごと消滅させ、糸を塵に変えていく。

「お前たちの記憶、その細胞の一つまで、この世から消し去ってやる!」

零の右拳が、土蜘蛛の胴体へ吸い込まれる。

近接破壊術:『空穿・連斬くうせん・れんざん』。

一撃ではない。零は目にも止まらぬ速さで、土蜘蛛の肉体を「円形」に削り取り続けた。断面から血が噴き出す暇さえ与えない、空間の連続消失。

「おい、零! 落ち着け、妖力を使いすぎるな!」

クロウが叫び、援護の術を放つ。

闇咲流:『影縛・黒蛇くろへび』。

地面から這い出した巨大な影の蛇が土蜘蛛を拘束する。その隙に零がトドメの『影弾くうだん』を数発叩き込み、巨大な土蜘蛛の頭部を「空白」へと変えた。

静寂が訪れるはずだった。

しかし、上空から降り注いだのは、鼓膜を突き破るような「キィィィィィン」という高周波の音だった。

「……五大深淵、か。随分と弱く小さくなったものだ」

空が割れた。雲を切り裂き、一人の男が降り立つ。古代日本の王の側近――音霊おとだま

彼は地面に足をつけず、数センチ浮いたまま、ゴミを見るような目で二人を見下ろした。

「貴様、何者だ……!」

クロウが全妖力を込め、術を放つ。

闇咲奥義:『影棺かげひつぎ』。

音霊の周囲に巨大な影の壁が競り上がり、彼を押し潰そうと閉じる。だが、音霊は指一つ動かさず、ただ一言呟いた。

「――『不協和音ディソナンス』」

直後、クロウの影の壁が、ガラスが砕けるような音と共に粉々に粉砕された。

「ガハッ……!?」

術を跳ね返されたクロウは、全身から血を吹き出し、一瞬で戦闘不能に追い込まれる。

「次は、泥を混ぜた『器』の出来損ない……お前だ」

音霊の視線が零に刺さる。零は歯を食いしばり、残された全エネルギーを右手に集束させた。

「ふざけるな……彩を返せ……!!」

『空穿・きわみ』。

零が放った、空間そのものを大きく削り取る最大の一撃。

だが、音霊はそれを左手の手のひらで、まるで飛んできた虫を払うように受け止めた。

「……何……!?」

「空を削るか。面白い。だが、音がなければ『空』も存在せぬ」

音霊が軽く指を弾く。

物理的な打撃ではない。圧倒的な「音の圧力」が零の全身を叩いた。骨が砕ける音がし、零の意識は強制的に闇へと引きずり込まれた。

「殺すには惜しいな。……泥に塗れた復讐者が、どこまで王を愉しませるか」

音霊は気絶した零を一瞥し、興味を失ったように再び空へと消えていった。

後に残されたのは、半壊した廃寺と、守るべき民間人の少女の震える泣き声。そして、かつてない敗北感を刻み込まれた、ボロボロの零とクロウの姿だった。


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