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五大深淵

焼け落ちた門の向こうに、朝が差し込む。


闇咲は半壊のまま、静まり返っていた。

誰も軽口を叩かない。

誰も「すぐ戻る」などと言わない。


戻らないと、分かっているからだ。


零は中庭に立っていた。


包帯だらけの身体。

だが視線だけは、昨日とは違う。


「……届かない」


小さく落とす。


クロウが壁にもたれている。


「分かっただけマシだ」


零は首を振る。


「違う」


「“分かった”じゃ足りない」


沈黙。


そこに、足音。


幽玄が現れる。


その一歩だけで、場の空気が締まる。


「では、教えてやる」


幽玄の声は低い。


「お前が立っている場所をな」


炎真も現れる。


腕を組み、壁に寄りかかる。


「来たな、講義タイム」


幽玄は無視して続ける。


「この世界は、“五つの深淵”で構成されている」


零の視線が上がる。


クロウも、わずかに姿勢を正す。


幽玄は指を一本立てる。


「赤――焔堂えんどう


炎真が口を歪める。


「力による制圧」


「火力、圧、破壊」


「正面から全部ねじ伏せる」


幽玄が補足する。


「“最も単純で、最も強い理”だ」


二本目。


「青――蒼海そうかい


クロウが口を開く。


「知略と情報」


「戦う前に勝つ連中だ」


幽玄は頷く。


「状況を支配し、勝敗を操作する」


「戦場を作る側だ」


三本目。


「緑――翠峰すいほう


風がわずかに揺れる。


「生命の循環」


「再生、適応、持久」


炎真が舌打ちする。


「一番ダルい」


クロウが同意する。


「削っても戻る」


四本目。


幽玄の声が少し低くなる。


「白――白銀しろがね


空気が張り詰める。


「秩序と浄化」


「歪みを許さず、存在を“正す”」


炎真が苦笑する。


「俺ら全否定されるな」


クロウが肩をすくめる。


「闇咲もだな」


そして最後。


幽玄の視線が零に向く。


「黒――闇咲やみざき


「暗殺と隠密」


「影から確実に殺す」


一拍。


「だが――」


その言葉が、重い。


「単体では“最も不安定な深淵”だ」


零は黙って聞く。


幽玄は続ける。


「正面を持たない」


「ゆえに、“正面で押し潰す者”に弱い」


脳裏に、あの男がよぎる。


五星将。


何もできなかった。


幽玄が言う。


「そしてあれは――」


「この五大深淵の“外側”だ」


クロウが小さく息を吐く。


「やっぱりか」


炎真が笑う。


「納得だな」


零は拳を握る。


(だから通じなかった)


一つの理では、届かない。


幽玄は一歩近づく。


「お前はもう闇咲だ」


「だが、それだけで戦うな」


「他の深淵を知れ」


「取り込め」


零の瞳が揺れる。


幽玄がさらに言う。


「極める必要はない」


「だが知らないままでは、必ず死ぬ」


炎真が軽く言う。


「要はパクれってことだ」


クロウが補足する。


「で、最終的に“自分の型”を作る」


幽玄は頷く。


「そうだ」


静寂。


零は考える。


今のままでは無理。

だが闇咲を捨てるわけでもない。


なら――


(重ねる)


違う理を、自分に。


幽玄が言う。


「行け」


「闇咲の外へ」


炎真が前に出る。


「まずはどこだ?」


クロウが腕を組む。


「順番は大事だぞ」


零は少しだけ目を閉じる。


そして、開く。


「赤」


炎真が笑う。


「いい選択だ」


零は続ける。


「今の俺に足りないのは、通す力だ」


「隠れても、当てても、意味がない」


「あの領域には」


クロウが頷く。


「まずは“ぶち抜く力”か」


幽玄は静かに言う。


「焔堂は甘くない」


「力がすべてだ」


炎真が振り返る。


「案内してやるよ」


その目は、少しだけ本気だ。


「ただし――」


「死ぬなよ」


零は歩き出す。


止まらない。


壊れた闇咲を背に。


クロウもついてくる。


「どうせ全部回るんだろ」


零は短く答える。


「当然だ」


炎真が笑う。


「欲張りだな」


だがそれでいい。


一つじゃ足りない。


全部、喰う。


五大深淵。


そのすべてを、自分の中に。


零は進む。


新たな戦場へ。


最初の深淵――


赤の焔堂へ。

説明

五大深淵は各それぞれの力の在り方 

中央管轄はこの世界の統治を目的とした組織(実際は弱者救済などの大義は崩壊している)

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