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17/21

始まりを進んで

洞窟の出口に差し込む外光が、ゆっくりと二人の影を引き延ばした。


焼けた空気とは違う、外の風。

だがその中に、まだわずかに“神格の残滓”が混じっている。


クロウが振り返る。


「……妙だな」


零も足を止めた。


崩れ落ちた邪仏の残骸。

その中心――胸部にあたる場所だけが、まだ微かに脈打っている。


ドクン……ドクン……


心臓のように。


クロウが目を細める。


「終わってねぇぞ」


零はゆっくり近づいた。


砕けた石の奥。

そこにあったのは、黒く濁った核。


しかし完全な闇ではない。

中心には、白く輝く“何か”が封じられている。


「……これが」


触れる直前。


ピリッ


空気が震える。


零の中の“力”が、反応した。


クロウが低く言う。


「やめとけ。下手に触れば――」


だが零は迷わない。


手を伸ばした。


掴む。


瞬間。


ドクンッ!!


強烈な衝撃が走る。


「――ッ!!」


零の視界が白に染まる。


頭の奥に、直接“何か”が流れ込んでくる。


声。


音。


祈りと、呪い。


(……これが……神格……?)


クロウが叫ぶ。


「零!! 離せ!!」


だが、もう遅い。


核が砕けた。


パキン――


その中心にあった白い輝きが、零の胸へ吸い込まれる。


ドォン!!


衝撃波が周囲を吹き飛ばす。


洞窟が揺れる。


クロウは腕で顔を庇う。


「チッ……!」


光が収まる。


そこに立っていたのは――


零だった。


だが、違う。


身体の周囲に、薄く“白い膜”のようなものが揺らいでいる。


まるで空気そのものが輝いているような。


クロウが目を見開く。


「……纏ったのか」


零はゆっくりと手を開いた。


感覚が違う。


(……軽い)


力が、異様に“通る”。


妖力とは違う。


もっと澄んだ、しかし重い力。


零が呟く。


「……神気」


その言葉が自然と口から出た。


クロウが舌打ちする。


「厄介なもん取り込みやがったな」


洞窟を出る。


外では幽玄と炎真が待っていた。


炎真がニヤリと笑う。


「遅ぇぞ」


だがすぐに表情が変わる。


「……おい」


零の周囲の“気配”に気付いた。


幽玄が一歩前に出る。


その目は鋭い。


「……取り込んだか」


零は短く答える。


「勝手に入ってきた」


炎真が笑う。


「ハハッ! 面白ぇ!」


だが幽玄は笑わない。


静かに言う。


「それは“神核”だ」


零が視線を向ける。


幽玄は続けた。


「神格を持つ存在には、必ず“原動力”がある」


「人で言う心臓の位置に存在する核」


一拍。


「それを我々は――『神源核しんげんかく』と呼ぶ」


クロウが腕を組む。


「やっぱりな」


幽玄の説明は続く。


「神源核を取り込んだ者は、一時的に神格を纏うことができる」


「そして、その際に使う力が神気だ」


炎真が口を挟む。


「妖力とは別モンだ」


幽玄が頷く。


「妖力は“生物としての力”」


「神気は“存在そのものの格”に由来する力」


零は拳を握る。


確かに感じる。


内側にある、限られた“何か”。


幽玄が続ける。


「だが神気には限界がある」


「無尽蔵ではない」


「使いすぎれば、核は崩壊し、お前の身体も持たん」


炎真がニヤリと笑う。


「要は“切り札”だな」


クロウが言う。


「連発はできねぇってことか」


幽玄はさらに踏み込む。


「そして何より重要なのは――」


零を真っ直ぐ見る。


「神格を纏えるのは、誰でもではない」


空気が静まる。


「器」


「神に類する域に達していなければ、核に飲み込まれて終わる」


炎真が肩をすくめる。


「普通はな」


クロウが笑う。


「こいつは普通じゃねぇ」


幽玄がわずかに目を細めた。


「……その通りだ」


そして、静かに言う。


「零」


「お前はすでに、“同等の領域”に足を踏み入れている」


零は何も言わない。


ただ、自分の内側を見る。


妖力。


神気。


別々の流れ。


だが確かに、どちらも存在している。


幽玄の声が続く。


「これで条件は揃った」


「神を殺すためのな」


炎真が笑う。


「ようやくスタートラインか」


クロウが呟く。


「長かったな」


零は空を見上げる。


その瞳には、もう迷いはない。


中央管轄の王。


彩を奪った存在。


その喉元へ。


確実に届く力を、手に入れた。


戦いは、進んでいく。

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