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紅蓮の爆ぜる刻、赤の三男

「……チッ、チョロチョロと。湧きすぎなんだよ、出来損ないの虫ケラどもが」

中央管轄の北端、かつて宿場町として栄えた街道は、今や数千匹の土蜘蛛によって埋め尽くされていた。家々は毒糸に巻かれ、逃げ遅れた民間人たちが絶望の悲鳴を上げている。

そこに、上空から一本の「赤い光」が突き刺さった。

ドォォォォォォォォォン!!

猛烈な爆鳴と共に、街道の中心がクレーター状に陥没する。噴き上がる土煙の中から現れたのは、真っ赤な革ジャンを羽織り、逆立った髪を乱暴に掻き揚げた少年――焔堂 炎真だった。

「おい、闇咲のネズミ共が手こずってるって聞いたから来てみりゃ……。なんだ、この程度かよ。拍子抜けだぜ」

烈火は、周囲を囲む数千の赤い眼を、退屈そうに見渡した。

『……ア、アァ……。焔……堂……。熱い、熱い神の火……』

人面を持つ土蜘蛛のリーダー格が、ギチギチと牙を鳴らして這い寄る。

「熱い? ああ、そうだろうな。俺の妖力は、お前らの薄汚い怨念を一番効率よく焼き殺すためにあるんだからよ」

炎真が右拳を握りしめると、彼の周囲数メートルの空気が陽炎のように歪み、地面のアスファルトがドロドロと溶け始めた。

『喰らえ……! 殺せ……!』

一斉に飛びかかる土蜘蛛の群れ。空を覆い尽くすほどの黒い影。

炎真は不敵に笑い、地面を強く踏み抜いた。

「散れ。――『焔堂流・爆炎の陣』!!」

炎真の足元から、全方位に向けて超高熱の衝撃波が放たれた。接触した土蜘蛛たちは、悲鳴を上げる暇さえなく瞬時に炭化し、灰となって夜風に消えていく。

「一匹ずつ相手にするのは面倒だ。まとめて消し炭にしてやるよ」

烈火は空中に跳躍すると、両手を大きく広げ、大気中の酸素を強引に一箇所へ集束させた。

「食らえ、俺の特等席だ。――『火龍の咆哮・大焦熱』!!」

炎真の口から放たれたのは、ただの炎ではない。青白い極低温の芯を持つ、超高圧のプラズマ火炎。それは街道を一直線に舐め尽くし、射線上の土蜘蛛数千匹を「蒸発」させた。コンクリートの壁がガラス状に溶け、夜の闇が昼間のような赤に染まる。

土蜘蛛のリーダーが、千切れた脚を蠢かせながら絶叫する。

『バカな……! この怨量の密度を……ただの『熱』で上書きするというのか!?』

「ハッ、上書きじゃねぇ。俺の火は『浄化』じゃなく『殲滅』だ。お前らの怨念ごと、存在の根っこを焼き切るんだよ」

炎真は笑いながら、今度は両手に巨大な炎の塊を形成した。それは次第に凝縮され、一振りの巨大な「炎の大太刀」へと姿を変える。

「五大深淵、赤の三男。焔堂炎真……。お前らの王とやらに伝えな。次は、その喉元にこの火を突っ込んでやるってな!」

焔堂流・奥義:『紅蓮三途渡』!!

炎真が一閃させると、巨大な炎の刃が弧を描き、残された土蜘蛛の群れを文字通り「一刀両断」した。切断された断面から爆発が連鎖し、廃村全体が巨大な火柱に包まれる。

その圧倒的な武の暴力。闇咲(黒)が隠密と暗殺を旨とするなら、焔堂(赤)は全てを公然と破壊し尽くす「絶対的な力」の象徴だった。

数分後。炎の海となった街道の真ん中で、炎真は肩を回しながら煙草に火をつけた。

周囲には、動く怪異は一匹も残っていない。

「……ふぅ。……で、闇咲の幽玄。いつまでそこで見てるんだよ」

影の中から、音もなく幽玄が現れた。その背後には、意識を失ったクロウと、死に物狂いで修行を終えたばかりの零の気配があった。

「相変わらず派手な戦い方だ。焔堂の三男坊」

「へっ、隠密なんて性に合わねぇんだよ。……それより、そこの奥にいる『無色』の奴。面白い妖気じゃねぇか。封印を力ずくで引きちぎったってのは、あいつか?」

炎真の鋭い視線が、塵の中から這い出してきた零を捉える。

零は、ボロボロの肉体で烈火を睨み返した。炎真の放つ圧倒的な熱量に圧されることなく、その「無色の瞳」は静かに燃えている。

「……ほぉ。俺の覇気にあてられて、一歩も引かねぇか。民間人の分際で、いい面構えだ」

炎真はニヤリと笑い、零に向かって拳を突き出した。

「おい、零。さっさと体を治せ。……音霊の野郎をぶっ飛ばす時、俺も混ぜろ。あいつの『音』は、俺の火の邪魔でしかねぇからな」

五大深淵の「赤」が、正式にこの戦列に加わった瞬間だった。

だが、零は炎真の拳を見つめ、声の戻った喉で低く呟いた。

「……助けはいらない。……俺が、一人で殺す」

「ハハッ! 言うじゃねぇか! 楽しみだぜ、闇の王がどっちに食われるか!」

激突する赤と黒。

物語は、五大深淵の全勢力を巻き込んだ、神殺しの決戦へと加速していく。


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