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誰にも推されなかった私が、天界で君の最推しになりました  作者: 白月 鎖
【第5章】君の“本音”が知りたい
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第52話「天使学園祭準備中!恋と青春のアトリエ」

「ええ〜!? ユナちゃん、衣装係に任命〜!? やば、絶対似合う〜♡」


アリエルのはしゃいだ声が、学院の中庭に響いた。


アウリオン・セレスティア高位天使育成学院——通称「天使学園」では、年に一度の《光の祭典》、いわゆる「学園祭」が近づいていた。


それは天界中の貴族や使徒候補が注目する一大イベント。四煌(セラ、カイ、レイ、シュリ)ももちろん主役級として参加予定だ。


その準備に、ユナはなぜか「衣装班リーダー」に推薦されてしまったのだ。


「ま、まあ……得意ってほどでもないけど、昔、地上でコスプレイベントの縫製係やってて……」


「コスプレ? なにそれ可愛い。わたしのドレスも作って~!」とアリエルが抱きつく。


「やっぱ、あんた、どこかの姫の転生じゃない?」とリリィが肩をすくめる。


***


〈天使学園・特設アトリエ棟〉


ミシンの音と、羽根飾りが舞う光の繭。手伝いに来たのは——四煌全員。


「お前たち……! なんで全員いるんだよ……!」


「だって、ユナの衣装姿見たいし」と、レイ=エリクシオンが当然のようにウインクする。


「……忙しくても来るさ。推しだもの」カイ=ゼファーは静かに布を手に取る。


「う、推し……って、推すって、そういう……」


「……違うのか?」カイは真顔で問い返し、ユナが顔を赤くする。


セラ=ルクシオンは不器用ながら布を裁ちバサミで整えながら、ツンと横を向いて一言。


「お前、着るのが仕事だろ。作るのは俺らがやる」


「セラさん……手、ちょっと震えてますけど……?」


「震えてねぇ!」


一方、シュリ=レミファントは完璧な設計図をユナの隣にそっと差し出す。


「布地は浄化属性に耐性のある天糸を使いました。裁縫技術よりも構造が重要です。……着崩れたら俺の責任だ」


「す、すごい……なんでここまで……」


「あなたが笑ってくれる可能性を、統計的に最大化しただけです」


「口説き方が天界クオリティすぎる……!」


笑い声が絶えない部屋の中、ナオだけは静かに壁にもたれて全体を見守っていた。


ユナと誰かが目を合わせて笑うたび、その目の奥がふっと揺れる。


(……“推される”って、こういうことなのか)


ナオの中で、嫉妬にも似た、でもどこか温かな感情が芽生え始めていた。


***


夕暮れ、ユナがひとり作業を続けていると、セラが不器用に手縫いの飾りを持って近づく。


「……これ、つけとけ。下手だが、俺の色だから」


「え?」


「衣装のことだ。……別に、変な意味じゃねえ。……念のためだ」


「うん、ありがとう……すごく、うれしいよ」


照れ隠しに後ろを向いたセラの背中が、ほんの少し震えていた。


その瞬間、アリエルが駆け込んできた。


「ユナちゃーん! 学園祭の出し物、投票の結果出たよ!」


「えっ?」


「“プリンセス・オブ・セレスティア”役——ユナちゃんに決定〜っ!!」


「…………え!?」


どよめく四煌。


「そりゃそうだろ」とレイ。


「当然だな」とシュリ。


「いや、問題は……誰が“相手役”かだ」とカイがぼそり。


その場に、異様な沈黙が走る。


「……誰だ? 俺か?」セラが無自覚に言ってしまい、


「勝手に決めんなよ!」と全員が一斉にツッコんだ。


青春の風と恋の波乱が、天界の学園祭を包み込もうとしていた

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