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誰にも推されなかった私が、天界で君の最推しになりました  作者: 白月 鎖
【第5章】君の“本音”が知りたい
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第51話「好きって、どう言うの……?」

魔界からの帰還後、天界の空気はどこか少しだけ変わっていた。


変わったのは風景ではなく、人々の視線。そして、ユナとナオの距離だった。


***


昼下がりの庭園。人気のない木陰のベンチで、ユナはカモミールと柑橘の香りがやさしく香るハーブティーを片手に、ナオの隣に座っていた。


彼の横顔はいつもと変わらず静かで、けれど今はほんの少し、遠くを見つめるような憂いがあった。


「……ありがとう。わたしを、あの場所から呼び戻してくれて」


ぽつりと呟いたユナの声に、ナオはゆっくりと瞬きをした。


「助けてくれたのは、君のほうだ」


「……ううん。あのとき、私はただ……必死だっただけで……」


「必死になるって、君にとっては“他人のために動く”ってことなんだな」


ナオはそう言って、少し笑った。


「君らしいよ」


その一言に、ユナの胸が微かに熱を帯びる。


「ねえ、ナオ」


「ん?」


「“好き”って、どういうことだと思う?」


ナオは意外そうに眉を動かしたあと、少しだけ考えてから答えた。


「うーん……難しいな。俺も、わからない。……けど、君のことを考えてるときの自分が、少しだけ好きになれる気がする」


その言葉は、ユナの胸にじんわりと沁みた。


「私も……あなたが笑ってくれると、自分がここにいていいって思える。たぶん、それが“好き”のはじまりなのかなって」


ナオはその言葉に、小さく息を呑んだ。


そして、ふっと目を細めてユナを見た。


「……君って、ほんと不思議だな。俺、昔から何にも興味を持てなかった。世界に飽きてて、感情も薄くて……でも今、君と話してると、初めて“知りたい”って思う」


「……わたしも、ずっと“諦めてた”の。誰かを好きになるなんて、きっと私には一生関係ないって。でも今……あなたが気になる。とても」


一瞬の沈黙のあと、ふたりの視線がそっと重なる。


けれど、どちらもそれ以上の言葉を口にすることはなかった。


それはたぶん——この瞬間が、壊したくないほど優しかったから。


***


夕暮れ、寮に戻る途中。


ナオはふと立ち止まり、空を見上げた。


「……好きって、どう言えばいいんだろうな」


独り言のように呟いたその声に、背後からそっと手が伸びる。


ユナが、彼の袖を掴んでいた。


「……いつか、わたしたち、わかる日が来るかな」


「きっと来るよ」


その言葉に、ふたりは微笑んだ。


空はゆっくりと茜色に染まり、やがて静かな夜が始まる。


“好き”という感情はまだ名前を持たないまま、でもたしかにふたりの心を結びはじめていた。

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