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誰にも推されなかった私が、天界で君の最推しになりました  作者: 白月 鎖
【第5章】君の“本音”が知りたい
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第47話「ふざけてばっかの僕だけど、本気は君にだけ」

天界の朝はまぶしい。いや、まぶしすぎる。


「うあぁぁ〜〜! 寝坊したぁぁぁあ!」


その声を響かせたのは、もちろん――


「レイ=エリクシオン、君また廊下を爆走してるのか。風紀違反だぞ」


「ちがうもんシュリ〜〜! これは文化的疾走っていうの〜〜!」


風の魔法を無駄に活用して空中スライディングするレイを、今日もシュリ=レミファントが眼鏡を光らせて止めに入る。


「ユナ〜〜〜ッ! お弁当作ってぇぇ〜〜ん! 昨日の味噌焼きおいしかった〜〜!」


「えっ、まだ二限目始まったばかりだけど!? というか今日お弁当作ってないよ!?」


「ぬぉぉぉぉ〜〜!? このままじゃ俺、空腹で消えてまう〜〜〜!」


「誰も消えろとは言ってないし!」


そんな、いつもどおり騒がしい朝だった。


でも、レイは気づいていた。


ユナが、最近ほんの少しだけ、自分と目を合わせるのをためらうようになったことに。


 


***


 


その日の午後――


「よし、屋上いこ! 特訓だよ、特訓!」


「レイくん、また唐突に……なにを特訓するの?」


「ふふっ……“笑顔のキュン指数”を鍛えるのだ!」


「はあぁ!?」


「えっとね、俺が全力で笑わせるから、ユナちゃんはそれに“キュン度”で採点して?」


「ちょ、私いつのまに審査員ポジションになってるの!?」


「いいから付き合ってよ〜。ほらっ、シュリも審査員してくれていいよ?」


「真面目に鍛錬している他の天使たちに迷惑だろう」


「カイは採点ゼロしかくれなさそう〜〜。ねーねー、ルインは?」


「採点せずに笑わせる側に回っていい? 俺、ユナちゃんの“くすぐりツボ”探し名人なんだけど〜〜」


「なにその迷惑な称号!?」


天界の屋上は、夕日が差し込むたびに、金色に染まっていく。


冗談ばかり飛び交う中、レイがふと静かになった。


「ねぇ、ユナちゃん。俺、いつもふざけてるけどさ」


「……うん?」


「本当は、ふざけてないと怖いんだ」


その言葉に、周囲の空気がすっと変わる。


「怖い?」


「うん。だってさ、昔“光の力”が暴走しかけたとき、みんなから距離取られたことがあって」


ユナは、息をのんだ。


「でも君は、俺がどれだけふざけても、ちゃんと向き合ってくれた」


「レイくん……」


「だから、俺ね――」


声が震えていた。


「本気で人を好きになるのが、怖いと思ってたんだ」


「……」


「でも、君といると、なんか変われそうって思っちゃうんだよ……バカみたいだけど」


夕日が差し込む中、レイの瞳だけが、ふざけてなかった。


 


「……ユナちゃん。俺、本気で、君のことが――」


 


「……レイくん」


ユナは、静かに笑った。


「ありがとう。でも、ごめんね」


その言葉に、レイは目を見開いた。


でも――


「俺……知ってた。そう言われるかもって。でも、伝えたかったから」


彼の笑顔は、いつものおちゃらけたものじゃなかった。


「これからも俺は、君の隣で笑ってるから」


「レイくん……」


「その笑顔、俺が守るって、決めてるからさ」


夕日の中で、レイ=エリクシオンの髪が揺れた。


笑っていた。


でも、ほんの少し、目の端に光があったのを、ユナは見逃さなかった。


──「風」は、軽やかに吹き抜けるもの。

でもその本質は、「どんな嵐にも、寄り添って吹ける」強さだった。

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