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誰にも推されなかった私が、天界で君の最推しになりました  作者: 白月 鎖
【第5章】君の“本音”が知りたい
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第45話「セラ・ルクシオンと、背中で伝える“青春”」

夕暮れの訓練場。

オレンジ色の光が差し込む中、ユナはぐらりとよろけた。


「う、うぅ……目が……クラクラする……」


「は!? お、おい! ユナ!!」


ガシッと支える手。

胸に飛び込んだのは、熱をもった腕と、びっくりするくらい整った顔。


「……セラくん……?」


「お前っ、バカか!? 何で限界までやってんだよ! 水、ちゃんと飲んだか!? 飯、食ったか!?」


「う、うん……たぶん……お昼、クッキーだった……かも……?」


「クッキーは食事じゃねぇっ!!」


セラは額に青筋を立てたあと、なぜかぷいと顔をそらして、ぶつぶつと文句を言いながらしゃがみこんだ。


「ほら、乗れ。おんぶする。……文句はあとで聞く」


「え……いいの? でも……」


「黙って掴まってろっ!!!」


ぎゃーっと叫ぶように返され、思わずユナは笑ってしまった。


「……ありがと、セラくん」


「笑うなバカ!! まじで、俺の心臓がもたねぇ……!!」


 



ユナをおんぶして、学院の寮までの道。

背中越しの会話は、やけに近くて、くすぐったい。


「セラくんの背中って、思ったより……がっしりしてるんだね」


「ん゛ん゛ん゛っ!?!? だ、だまれーっ!!」


「ふふっ。……あったかい」


「……お前、さっきまで倒れてたくせに……なんで急にそういうの言うんだよ……バカ……」


(うわぁぁ言っちゃった言っちゃった~~!!!)

内心、セラの頭の中は火事だった。


でもユナの身体は、ふわっと軽くて、小さくて。

ちょっと熱があるのか、背中越しに体温が伝わってくる。


「……バカみてぇに、無理すんなよ」


「え?」


「……お前のそういうとこ……なんか……見てらんねぇんだよ」


「セラくん……」


「べ、別に特別ってわけじゃねぇからな!? 友達として、同級生として、同じチームの仲間として……!!」


「……ぜんぶ同じ意味に聞こえるよ?」


「い゛っ……」


(ああもうなんで俺は口が滑るんだーーーっ!!!)


 



そして寮の玄関前。

ユナを下ろしたあとも、セラは真っ赤な顔のまま、ぐるぐると目を回していた。


「と、とにかく! もう無茶すんな! 飯はちゃんと三食食え! 水も飲め! あと、夜は早く寝ろ!!」


「ふふっ……お母さんみたい」


「お母さんじゃねぇっっ!! 王子だわ!! ……つーか、なんだよその顔」


「嬉しかったの。セラくんが心配してくれて」


「……ッ」


その一言に、またセラの顔が赤くなって爆発した。


「わ、わ、忘れろ! 今の全部!!」


「うん、無理だよ。ちゃんと覚えておく」


「ギャーーー!!!」


セラは叫びながら走り去っていった。

その背中を、ユナはそっと見つめる。


「……かわいいな」


ふわっと笑ったその頬は、少し赤かった。


——そしてその日、ユナの夢に、やけに照れくさい笑顔のセラが出てきて。

夢の中でも「バカ!」って怒られて、なぜか嬉しかった。

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