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誰にも推されなかった私が、天界で君の最推しになりました  作者: 白月 鎖
【第1章】転生したら“推され人生”が始まりました
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第3話:アリエルという“味方”との出会い

天界の朝は、どこか“透明”だった。


鐘の音も、空気の流れも、何もかもが静かで、澄んでいて。

それなのに、私の心だけがざわざわと揺れていた。


 


《アウリオン・セレスティア高位天使育成学院》。

神に選ばれし魂たちが通う、天界最高峰の学園。


──そこに、「ミス」で送り込まれた私。


 


(……居場所なんて、どこにもない気がする)


 


初登校の教室。扉を開けた瞬間、空気が変わった気がした。


見た目からして浮いているのは自覚してる。

地味で、羽も小さくて、制服も“節約リメイク”。


だから、最初から期待なんてしてなかった。

でも、やっぱり“視線”は痛い。


 


「……あれが神託の魂?」「うそでしょ」


聞こえてないふり、慣れてる。

私のことなんか、どうせみんな“異物”だって思ってる。


 


──だけど、そのときだった。


 


「ここ、いい? 隣、空いてる?」


 


ふと視線を向けると、銀色のショートボブに水色の瞳の女の子が、

にこっと笑って私の隣の席を指さしていた。


 


「えっ、あ、うん……いい、です」


 


「ありがとー。わたし、アリエル=スノーヴァ。よろしくね」


 


その笑顔は、すごく自然で、すごくやさしくて。


 


「……私、ユナ。ユリエルって、呼ばれてるけど……本当の名前は、ユナって言います」


 


小さな声でそう言った私に、彼女はこう返してくれた。


 


「うん。ユナちゃん、ね。素敵な名前」


 


(……なに、この人……やさしすぎる……)


 


授業中、私が羽をうまくたためずに机からはみ出してしまったとき。

アリエルは何も言わず、自分の羽根をきゅっとたたんでスペースを空けてくれた。


私が魔力測定で、数字が全然出なくて下を向いていたときも。

「うん、すごくきれいな波動だったよ」って、誰よりも早く拍手してくれた。


 


……なんでこんなに、自然に優しくできるんだろう。


 


授業の合間、私は思い切って聞いてみた。


 


「あの……どうして、私なんかに……普通に接してくれるの?」


 


アリエルは、ほんの少しだけ目を伏せて、それからこう言った。


 


「だって、ユナちゃん、がんばってるじゃん」


 


「……え?」


 


「笑わなくていいんだよ。無理しなくていい。……今は、ここにいるだけで、えらいんだから」


 


その言葉に、胸の奥が、じわっと熱くなった。


我慢していた涙が、ふいにこぼれた。


 


私は、今までずっと、

「もっと頑張らなきゃ」「ちゃんとできなきゃ」って、自分を責め続けてきた。


でも彼女は、“いまここにいるだけでえらい”って言ってくれた。


 


その一言で、私は救われた。


 


「ありがとう……アリエルちゃん……」


「ううん。困ったら、頼って? わたし、こう見えて意外と根性あるから」


 


そして彼女は、こっそり付け加えた。


「それに……本当のこと、ちゃんと見てる人はいるよ。絶対に」


 


そのとき、私は気づいた。


ここには、ほんの少しだけど、“味方”がいる。


 


──その存在が、私を少しだけ強くしてくれた。


 


アリエル=スノーヴァ。

この日から、彼女は私にとって“唯一安心できる親友”になった。

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