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誰にも推されなかった私が、天界で君の最推しになりました  作者: 白月 鎖
【第3章】私、ここにいていいの?
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第21話:審問の序曲、地上出身が明るみに

──その通達は、突然だった。


 


《アウリオン・セレスティア高位天使育成学院》


朝の校内放送。光の粒を帯びた通信魔法が、全階層に響きわたった。


 


「本日、第五講堂にて臨時の《魂素記録審問会》が実施されます。対象者は……智天使・ユリエル=アマミヤ」


 


空気が凍った。


教室にいた全員が、わたしを見た。


ざわり、と羽音が揺れる。


 


(……なに……?)


 


「審問って、魂の出自を問われるやつでしょ?」


「智天使が? え、なんで?」「やっぱあの子、怪しいと思ってた……」

「つまり、“ニセモノの智天使”ってこと……?」

 


ささやきが、噂が、視線が、私の上に降り注ぐ。


背筋がすうっと冷たくなった。

足が、ふわふわしていた。


床に立ってる感覚すら曖昧になる。

 


──なにが起きてるの……?


 


「ユナ、こっち」


 


アリエルが、隣でそっと手を握ってくれた。

その手のぬくもりが、唯一の拠り所だった。


だけど、彼女の手も少し震えている。




アリエルの瞳にも、隠せない焦りがあった。


 


「……もしかして、誰かが記録を閲覧したのかも」


 


「記録……?」


 


「うん。魂の初期情報は《記録図書館》に保管されてるんだけど、最近ゼオ=ヴァルトレイス様がそこに出入りしてるって……」


 


──ゼオさん?


 


彼は、わたしにとって“優しい宰相”だった。


……でも、あのときの言葉が、耳の奥に蘇る。


 


「この世界は“記録された魂”で構成されている。……君は、それに属さない」


 


(……あれは、忠告だったの?)


 


呆然とする私を前に、四煌が次々に現れた。


 


「このタイミングか……」と、セラ・ルクシオンが静かに眉をひそめる。


「出自に何の関係がある。強いかどうかで測ればいい」と、カイ・ゼファーがぼそりと呟く。


「なんかさ〜、これ……あからさまな“動き”じゃない?」と、ルイン・クラウが目を細める。


「“記録の矛盾”か……これはミカエル様の出番かもね」と、レイ・エリクシオンがぼそりと呟いた。


 


そして、廊下の陰からナオがこちらを見ていた。

「……君は、間違ってなんかないよ」


 


その声は、ふと羽根が舞い降りるように、やさしく響いた。

 


──ああ、やっぱり。


 


「わたし……また、間違った場所に来ちゃったのかな」


 


ぽつりと、心の底から言葉がこぼれた。


胸が、軋むように痛んだ。


 


(“特別な魂”だなんて言われたけど……結局わたしは、“間違い”だったんだ)


(……この感覚、知ってる。地上でも、感じた)


“いないほうがいい”とされる空気。


“間違いだった”とされる立場。


でも、そのとき。


アリエルが、ぐっと私の手を握った。


 


「違うよ、ユナ。あなたが“間違い”だなんて、絶対に言わせない」


 


「……アリエル……」


 


「だって、あなたの言葉に救われた子たち、たくさんいるんだよ。私も……そう」






「……わたし、ちゃんと立ちます。

 怖いけど……逃げたくない」


そう言った私に、アリエルが力強くうなずいた。


背後で、セラが一歩、前に出た。


「……審問だろうと、俺は、お前の隣に立つ」


 


その言葉に、カイ、ルイン、レイ、ナオ──全員が無言で視線を寄越してきた。


それだけで、胸が熱くなった。


 


でも、わたしの胸には、もう一つの“予感”があった。


 


(この審問は……きっと、ただの始まり)


 


この世界に隠された“何か”が、動き始めている。


 


その中心に、私の魂がいる。


 


──それだけは、もう、否定できなかった。

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