第12話:護衛対象決定? 四煌、動き出す
「──当学院は、本日より“神託の智天使・ユリエル”を正式な“護衛対象”として認定します」
その発表がなされた瞬間、講堂にいた全生徒が一斉にどよめいた。
ユナ本人は、もちろん状況を飲み込めていない。
(……ご、ごえい……? 私が……?)
「えっ……ちょ、待ってください! どういうことですか!?」
壇上にいた教師陣と、神官装束の評議員たちが順番に説明を始める。
要約すると──
・ユリエルの魂は“人為的改ざん”を受けていないにもかかわらず、前例のない共鳴反応を示した
・この反応は、時に“因果干渉”や“運命誘導”を引き起こす可能性がある
・現時点では“未確認の高次魂”として、慎重に保護・監視する必要がある
「……つまり、“危険かもしれないから見張る”ってことですか?」
ユナが言うと、アリエルが隣で肩を震わせた。
「ユナちゃんは、何もしてないのに……!」
そのときだった。
「──なら、俺が見張る」
講堂の入り口。誰よりも先に声を上げたのは、赤髪の王子・セラ=ルクシオンだった。
真っ直ぐな視線のまま、壇上に向かって歩き出す。
「学院の戦闘責任者として。彼女に異常があるなら、いち早く対処できるのは俺だ」
「……俺も責任があると思う」
続いて現れたのは、無表情の氷天使・カイ=ゼファー。
「共鳴の場にいた。因果の影響を受けた以上、最後まで経過を見届ける義務がある」
「いや〜、それってつまり“推しの近くにいたい”ってことじゃ〜ん?」
金髪の巻き毛がひょいっと揺れる。
レイ=エリクシオンが、おどけた調子で手を挙げる。
「なーんて! でも、まあ。いろいろと見てみたいし、面倒ごとは引き受けちゃおうかな?」
「軽率な判断だな」
最後に、銀縁眼鏡をかけたシュリ=レミファントが淡々と一言。
「だが、今の状況を放置するのも非合理だ。記録保護の観点から、私も立ち会うべきだろう」
(……ちょ、ちょっと待って!?)
講堂の中央、壇上の少し下。囲まれる形でぽつんと立つユナは、完全にパニックだった。
(四煌って、学院の“超トップ”みたいな存在じゃなかったっけ!?)
(なんで、そんな人たちが──“私を見張る”って……!)
「い、いえっ! そんな、私なんかがご迷惑を──」
「迷惑じゃない」
セラが静かに言う。
「……守るべき相手がいるなら、それでいい」
「感情論だな」
「うわ、言い方〜」
「問題ない。合理的だ」
「俺はただ近くで見たいだけなんだけどな〜?」
四人がそれぞれ好き放題に話し始める。
……もう、ぐちゃぐちゃだった。
でも、アリエルだけが、そっとユナの手を握ってくれていた。
「大丈夫。これは“注目”じゃなくて、“信頼”だよ。ユナちゃんが、誰よりも頑張ってきたって、ちゃんと見てる人がいるってこと」
ユナは、ごくりと喉を鳴らしてうなずいた。
(……こんなの、困るに決まってるけど。でも、少しだけ──)
(“信じてもいいのかも”って、思ってしまった)
四煌たちに囲まれて、世界の中心みたいな場所で。
ふわりと、風が羽根を揺らした。
──それは、ある意味で“最初の仲間”ができた瞬間でもあった。




