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短編・その他(コメディ多め)

めいさんの電話

作者: 二角ゆう

※安心してください、コメディです


前作「トンネルの向こうに出るらしいよ」と同じメンバーでお送りします。


「ねぇ、知ってた? めいさんの電話っていうのがあるんだって」


 マサキが話を始めた。


 俺とサトルとハヤトはそれ聞いてあつまってきた。


「さすがにないだろ」

「あったら怖すぎ」

「それ、本当ならダメなやつだよ」


 俺とサトル、ハヤトは口々に言う。マサキは顔を近づけてくる。


「それが本当なんだって! 電話をかけると“はい、めいさんです”って言ってくるらしいんだって」


 マサキは少し興奮気味に伝えてくる。その言葉に俺たちは顔を少し後ろに引いた。


「本当って言ったって、電話をかけられなくちゃ確認のしようがないな」


 ハヤトは勝ち誇ったようにそう言いのけた。俺とサトルはハヤトの言葉を聞いてハヤトの援軍になった。


「ハヤトの言う通りだよ。結局、番号も分からないし都市伝説ってレベルだろ」

「そうだ、あるなら出してみろ」


 にやにやしながら俺たちはマサキを見た。だが、マサキは悔しそうな顔をしていない。


「それがあるんだって」


 マサキはスマホをいじり始めた。


「えっ番号あるの?」

「嘘だろ」

「番号あっても掛からないやつだろ?」


 上から俺、サトル、ハヤト。そしてマサキの仕草を凝視する。スマホで忙しなく動いて探していた指はゆっくりと止まった。


 俺たちは、ごくりと唾を飲む。


「ま、待って。本当に掛けるの?」


 俺は慌てて聞いた。マサキはこちらを見る。マサキは震えた声で格好をつけたように言った。


「そんなん掛けなかったら面白くないだろ?」

「俺、緊張してきた⋯⋯」

「スピーカーにして皆で聞こうぜ! 皆で聞いたら大丈夫だろ?」


 上からマサキ、サトル、ハヤト。それを聞いたマサキは一人一人の顔を確認して頷いた。


「⋯⋯じゃあ掛けるぞ」


「うわあ⋯⋯」

「緊張するなぁ」


 マサキが机の上にスマホを置くと丸い緑の電話をかけるボタンを震える指で押した。


 途端に皆は口をつぐんで耳を澄ませ始める。



 プルルル


 プルルル


 プルルル



 なかなか電話は繋がらない。



 プルルル


 プルルル


 マサキは電話が繋がらないので、口の端を上げて皆の顔を見た。





 すると声が聞こえてくる。


【はい、めいさんです】


 妙に高い声、だが少し変な声にも聞こえる。少女の声とも違うその異質な声に違和感が全身を駆け巡る。





 それを聞いた、俺は逃げ出した。


「無理! 無理!」


 それを皮切りにハヤトとサトルも駆け出した。

「ガチでヤバいやつ!」

「ぎゃあぁぁ!」


【⋯⋯今出掛けていますが、すぐに戻ってきま――】


 マサキはようやく電話を切った。そして俺たちの後ろを追いかけてきた。


「うわっ置いてくなよ!!」



 ■



 ピンポーン


「はあい、あらお巡りさん! わざわざすみませんね」


 最近迷惑電話があまりにも多いのでお巡りさんに電話したのだ。ここには老夫婦が住んでいる。


 玄関でお巡りさんを迎えたおばあさんは居間へと案内を始める。


 居間にお巡りさんが入ってくると、おじいさんが姿勢を正す。


「わざわざご足労すみません」

「いえ、仕事ですから大丈夫ですよ。それで電話が頻繁に掛かってくると?」


 おばあさんはすでに用意していたお茶を乗せたお盆を手にこたつまで運ぶ。


「ええ、昼も夜も掛かってきて、怖いし迷惑なんです。留守番電話に変えているんですが、それでもすごくたくさん掛かってきて⋯⋯」


 お巡りさんは座っている少年たちの方を見た。


「あの、僕が留守番電話の設定をしたんです。なので今日は来ました」

「ナオトの友だちのジュンです。ナオトとは家が近いので一緒に来ました」


 それを聞いたお巡りさんは頷いた。


「ちょっと電話を鳴らしてみようか」


 言い終わるとちょうど電話が掛かってきた。皆が座って待っていると留守番電話に変わる。そして声がスピーカーで聞こえてくる。


【はい、明山めいさんです⋯⋯】


 妙に高い声が聞こえ始めるとジュンは大笑いしている。


「ぶあっはっはっ! ナオトの声やばっ!」


【今、出掛けていますが、すぐに戻ります】


 その何とも言えない不自然な声にお巡りさんは肩をぷるぷるさせ始めた。そして咳払いをするタイミングでさっと手を口元へ持つてくると、口を隠す。


「あっこっちが録れちゃってたの? これ俺が腹話術の真似した時のやつじゃん!」


 そして静かになったなと思ったら電話が切れていたようだ。

 向こうが切ったらしい。


 そこで検証のためにもう一度電話を掛けて声の確認をする。


 プルルル


 プルルル


 プルルル


 プルルル


 プルルル


【はい、明山めいさんです⋯⋯】


 やっぱり不自然な声が聞こえてくる。


「ぎゃはははは、ナオトの声やばい!」


 お巡りさんは全身をぷるぷるさせながら下を向いている。腕を口に押しつけているようだ。


【今、出掛けていますが、すぐに戻ります】


「さすがにこの声は変だね。録り直さなきゃ」

「ぎゃははは、チョー面白い」


 お巡りさんは「むふぉっん、ふぉん」と不自然な咳をしながら肩のぷるぷるは止まらない。


【ご用件のある方はピィー? と言う音の後に伝言を入れて下さい】


「ぶふぉっ!!」

 お巡りさんは我慢しきれずに、盛大に吹いた。


「ぶはははは! ピィーってところ声が裏返ってるし!!」


 ジュンは文句の一つでも返そうとしたがあまりにも笑っているナオトとお巡りさんを見て笑った。


 ジュンをはじめ、ここにいる全員が【めいさんの電話】と言う都市伝説級のレベルのホラーになっていることは知る由もない。

ベタな展開シリーズでまとめました。

楽しんでもらえたら嬉しいです!

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